昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第二部~ (七十) ざわざわと騒ぎ立てて

2013-11-08 19:18:07 | 時事問題
(五)

熱海の女将光子とは違った雰囲気を醸し出している、女将のぬい。
武蔵の虫が、ざわざわと騒ぎ立てている。
しかし新婚三日目の武蔵だ。いかな武蔵でも、暫くは大人しくしていようと思う。
思いはするのだが、むくむくと。

“戸籍上は新婚だが、実体は長いからなあ。
小夜子が転がり込んでから、何年になるんだ?”
一、二、と指を折り始めた時
「着きましたわ、旦那さま。
あらあら? 何を数えていらっしゃるのです?」
と、女将が声をかけた。
「え?いや、なんでもない。
女将のね、年勘定をちょっとね」

「お帰りなさい、女将さん。
あぁ、お客さまですか?」
玄関先を掃除中老人が、手を止めて女将を見る。
「治平さん、ただいま。
旦那さまがね、この雨に駅舎で立ち往生なさっておいでだったの。
でも、恵みの雨でした。
こうしてお客さまになっていただけたのだから」


最新の画像もっと見る

コメントを投稿