「ごめんなさい。あたしもおしゃべりしたいんですけど、ほんとに時間が……」
「ちょっと! アナスターシアよ、世界の憧れの的の、アナスターシアよ」
信じられない思いだった。断るなどということは、ありえないことだ。
銀幕のスターたちでさえ、会いたがるのだ。
実際、雑誌社からの取材申し込みが殺到している、と聞いている。
対談の申し込みも、だ。それを、この娘が断る、と。
「あなた、どうかしてる。絶対、おかしい」と、翻意するよう詰め寄った。
「アナスターシアはね、北の国の生まれなの。
王家の血筋を引いているという噂もあるのよ。
どういう経路で今に至ってるのかは、詳しくは知られてないの。
本人が話したがらないのでね。今は、マッケンジーと一緒に世界中を旅してるの」
「あのお、ひょっとして、ロマノフ王朝のことですか?
確か同名の皇女さまがいらっしゃったと思うんですけど」
「へえ! あなた、博学ね? 良く知ってるじゃない。
そうなの、そうなのよ。真偽は分からないけど、ロマノフ王朝の末裔か? って、ことなの」
「サヨコ、サヨコ、」と、前田を押しのけて、アナスターシアが隣に座った。
「プリーズ,ウィズミー!」
小夜子の手を握り締め、涙を浮かべて懇願し始めた。
そして前田に対し、早口で思いの丈を訴えた。
驚く前田は、何度も頷いた。
「小夜子さん。本気みたい、アナスターシア。本気で貴女と家族になりたいみたいよ。
一緒にね、世界を旅したいって言ってるわ。
それが叶わぬなら、アナスターシアがこの日本に留まってもいいって。
そこまで、言ってるわ。果報者ね、あなた。世界一の幸せ者」
興奮気味に話す前田。すがるような目で、小夜子を見つめるアナスターシア。
大粒の涙をこぼすアナスターシア、つられて小夜子も涙した。
離れた場所で、呆れた表情を見せるマッケンジー。小夜子は困惑の極に陥った。
「嬉しいんですけど……」
“お願いだから、OKしてよ。あたしの為にさあ”
声に出したい衝動をグッとこらえて、前田の説得が続く。
「そうだ。あなたさ、仕事だと思いなさい。ね、お金、もらってあげるからさ。ね、そうしなさい」
「いえ、そんなもの」
「じゃあ、なに!」
苛立つ前田は、語気鋭く迫った。
事の成り行きを見守っていたアナスターシアが、前田がいきり立っての強い言葉に烈しく怒った。
「ノー、ノー。プローハ!」と、前田に噛みついた。
「ちょっと! アナスターシアよ、世界の憧れの的の、アナスターシアよ」
信じられない思いだった。断るなどということは、ありえないことだ。
銀幕のスターたちでさえ、会いたがるのだ。
実際、雑誌社からの取材申し込みが殺到している、と聞いている。
対談の申し込みも、だ。それを、この娘が断る、と。
「あなた、どうかしてる。絶対、おかしい」と、翻意するよう詰め寄った。
「アナスターシアはね、北の国の生まれなの。
王家の血筋を引いているという噂もあるのよ。
どういう経路で今に至ってるのかは、詳しくは知られてないの。
本人が話したがらないのでね。今は、マッケンジーと一緒に世界中を旅してるの」
「あのお、ひょっとして、ロマノフ王朝のことですか?
確か同名の皇女さまがいらっしゃったと思うんですけど」
「へえ! あなた、博学ね? 良く知ってるじゃない。
そうなの、そうなのよ。真偽は分からないけど、ロマノフ王朝の末裔か? って、ことなの」
「サヨコ、サヨコ、」と、前田を押しのけて、アナスターシアが隣に座った。
「プリーズ,ウィズミー!」
小夜子の手を握り締め、涙を浮かべて懇願し始めた。
そして前田に対し、早口で思いの丈を訴えた。
驚く前田は、何度も頷いた。
「小夜子さん。本気みたい、アナスターシア。本気で貴女と家族になりたいみたいよ。
一緒にね、世界を旅したいって言ってるわ。
それが叶わぬなら、アナスターシアがこの日本に留まってもいいって。
そこまで、言ってるわ。果報者ね、あなた。世界一の幸せ者」
興奮気味に話す前田。すがるような目で、小夜子を見つめるアナスターシア。
大粒の涙をこぼすアナスターシア、つられて小夜子も涙した。
離れた場所で、呆れた表情を見せるマッケンジー。小夜子は困惑の極に陥った。
「嬉しいんですけど……」
“お願いだから、OKしてよ。あたしの為にさあ”
声に出したい衝動をグッとこらえて、前田の説得が続く。
「そうだ。あなたさ、仕事だと思いなさい。ね、お金、もらってあげるからさ。ね、そうしなさい」
「いえ、そんなもの」
「じゃあ、なに!」
苛立つ前田は、語気鋭く迫った。
事の成り行きを見守っていたアナスターシアが、前田がいきり立っての強い言葉に烈しく怒った。
「ノー、ノー。プローハ!」と、前田に噛みついた。
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