昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第二部~ (六十九) 思い詰めた幸恵

2013-11-02 13:31:34 | 時事問題
(七)

「そうなんですか、ほんとに良い旦那さまですね。
やっぱり、正三兄さんではだめです。
小夜子さまには、今の旦那さまがお似合いです。
そういう巡り合わせだったのですわ」

駅に降り立った小夜子に、思い詰めた表情で幸恵が口を開いた。
「実は、小夜子さまだけにお話するのですが。
両親にも話していないことなのです」

「あら、まあ。そんな秘密事を、あたくしに話してくださるの?」
満更でもないのだが、面倒なことに巻き込まれるのも困ると考える小夜子だ。

「実は、ご相談というか…お教えいただきたいのです。
兄から、返事が参りまして。あたしに、上京して来いと言ってくれました。
それで来春の卒業後に、村を出たいと思っております」

もじもじと体を動かす幸恵だが、次の言葉中々出てこない。
焦れ始めた小夜子が
「何かやりたいことでもおありになるの? 
タケゾーにお願いしましょうか? 仰ってみて」と、投げかけた。

「お怒りになるでしようか? ご相談と言うのは、他でもありません。
あつかましいとお思いになるかもしれませんが、小夜子さまにおすがりしたいのです」

「ですから、何をなさりたいの? 
それを言ってくれなきゃ、お返事のしようがないわ!」
焦れったさから、つい声を荒げてしまった。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿