人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

20歳の感性を聴く~パク・へユンのヴァイオリン・リサイタルから

2012年04月28日 06時44分26秒 | 日記

28日(土)。昨夕、紀尾井ホールで韓国のヴァイオリニスト、パク・へユンのヴァイオリン・リサイタルを聴きました 彼女は1992年ソウル生まれの20歳。4歳の時にヴァイオリンを弾き始め、9歳でソウル・フィルと共演しオーケストラ・デビューしました 2007年にルイ・シュポア国際コンクールで優勝、2009年には第58回ミュンヘン国際音楽コンクールで史上最年少の優勝のほか2つの特別賞を受賞しました

今回のリサイタルは「プロジェクト3×3」という企画の一環で、同じ奏者が東京、大阪、名古屋で3年続けて公演するというものです。昨年7月27日に紀尾井ホールで開かれた第1回目のリサイタル(ベートーヴェン「ヴァイオリン・ソナタ第7番」ほか)を聴いて,とても良かったので、第2回目も聴いてみようと思ったのです

パク・へユンの演奏は、その後今年2月25日に東京交響楽団とモーツアルトの「ヴァイオリン協奏曲第5番」を演奏したのを聴きました

今回ピアノを弾くのは1982年ラトヴィア生まれ,ということはパクより10歳上のラウマ・スクリデです

演奏曲目は①シューベルト「ヴァイオリン・ソナタ イ長調」、②ラヴェル「ヴァイオリン・ソナタ ト長調」、③シマノフスキ「神話op.30より”アレトゥーサの泉”」、④プロコフィエフ「ヴァイオリン・ソナタ第2番ニ長調」の4曲です

コンサートでは会場に着いてもすぐに席に座ることはなく,ロビーでプログラムを読んだりチラシに目を通したりしています.今回も5分前に会場に入って,初めて客の入り具合を確かめたのですが,あまりの少なさに愕然としました 1階席の前半分しか埋まっていません.これじゃあソリストが可哀そうだな,と思いました 自席は1階11列16番で,ほぼ中央の通路側です.

プログラムを見るとパク・へユン自身が演奏曲目について書いているのですが,どうしてその曲を演奏しようと思ったのか,どういう風に演奏しようとしているのかが書かれていて,演奏家からのメッセージを受け取ってから聴くことができ,すごく良いことだと思いました 日本の演奏家の場合は評論家が曲目解説を書いているケースが圧倒的に多いと思います.これって,見習った方が良いと思います.演奏家はもっと自身の主張を発信すべきだと思います

パクはピンクのノースリーブで,スクリデは黒のドレスで登場します 1曲目のシューベルト「ヴァイオリン・ソナタ イ長調」は作曲者20歳のときの作品で,パクは同じ20歳として演奏したいと思いプログラムの冒頭に取り上げたということです シューベルトらしい歌に満ちた,明るくも,時に悲しい曲です.パクは詩情豊かに正面から対峙します.ピアノ伴奏のスクリデがナイス・フォロ-して光っています

2曲目のラヴェル「ヴァイオリン・ソナタ ト長調」は印象派を代表するヴァイオリン・ソナタといってもいいでしょう 色彩感溢れる,ときにメランコリックな曲です.第2楽章は「ブルース」と名付けられているように,ジャズのイディオムを取り入れたスィングする音楽です 同じ曲を南紫音の演奏で聴いたときには,ちょっぴり”遊びの精神”を感じましたが,パクは,あくまでも美しく弾くことを優先して真正面から取り組んでいる印象を受けました 20歳らしい瑞々しい感性の演奏と言えばいいでしょうか

休憩後のシマノフスキ「神話より”アレトゥーサの泉”」はギリシア神話に登場する水の精アレトゥーサの物語をテーマに作曲されたもので,神秘的な音楽が展開します.次々と変わる音色が鮮やかです

最後のプロコフィエフ「ヴァイオリン・ソナタ第2番」は,もともとフルート・ソナタとして作曲されました 第1楽章のモデラートはアンニュイなメロディーで始まります.そしてリズム感溢れる第2楽章スケルツォを通過して,有名な第3楽章アンダンテを経て,第4楽章アレグロ・コン・ブリオに突入します.弾き切った後の2人の演奏家の笑顔が印象的でした 会場に半分しかいない聴衆は,1人が2人分の拍手で2人の演奏家を迎えました

鳴り止まない拍手に,アンコールとして①ドヴォルジャーク「ロマンチックな小品から第1番・作品75-1」,②クライスラー「中国の太鼓」を演奏しました.これも鮮やかな演奏でした

こんなに素晴らしい演奏会が紀尾井ホールの半分しか埋まらないのはとても信じられませんこの企画は3年がかりで同じアーティストを取り上げるわけですから,来年もパク・へユンのリサイタルはあります.まだ1度も聴いたことのない方は,来年は是非聴いてみてください.期待を裏切られることはありません

 

 

        

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