12日(金)。昨夕、浜離宮朝日ホールでイリヤ・ラシュコフスキーのピアノ・リサイタルを聴きました プログラムは①プロコフィエフ「バレエ組曲”ロメオとジュリエット”からの10の小品より”別れの前のロメオとジュリエット”」、②同「ピアノ・ソナタ第8番」、③ショパン「エチュード作品25番・全12曲」④ストラヴィンスキー「バレエ組曲”ぺトルーシュカ”からの3楽章」です
ラシュコフスキーを聴こうと思ったきっかけは、今年2月27日に新日本フィルと演奏したチャイコフスキーの「ピアノ協奏曲第1番」を聴いて、「なかなかやるじゃないか」と思ったからです その時、彼が1984年シベリア生まれで、2012年の第8回浜松国際ピアノコンク―ルの優勝者であることを知りました
自席は1階13列14番、センターブロック右通路側です。会場は8割方埋まっている感じでしょうか
1曲目のプロコフィエフ「別れの前のロメオとジュリエット」はバレエ組曲の第2幕の幕切れでティボルトを刺殺してしまったためにヴェローナからの追放処分を受けたロメオが、ジュリエットとの別れを惜しむ場面の音楽です 劇的な別れの場面で盛り上がり、最後は寂しげに曲を閉じます。ラシュコフスキーにとって、まずは名刺代わりの演奏といったところでしょう
2曲目のプロコフィエフ「ピアノ・ソナタ第8番」は、第6番から第8番までのソナタが第二次世界大戦のさなかに続いて作曲されたことから”戦争ソナタ”と呼ばれています 技巧的にも相当難しそうな曲ですが、ラシュコフスキーはパワー全開でアグレッシヴに弾き切ります
休憩後の最初の曲はショパンのエチュード作品25の全12曲です。第1番「エオリアン・ハープ」から第12番「大洋」まで、それぞれ異なる演奏技巧上のポイントが(練習曲ですから)付されています。ラシュコフスキーはスタインウェイを良く鳴らします とくに最後の第10番ロ短調、第11番「木枯らし」、第12番「大洋」での白熱の演奏は圧巻でした 本人は激情している訳ではまったくないのに、出てくる音は会場を揺るがすほどの迫力なのです
最後のストラヴィンスキー「バレエ音楽:ベトルーシュカ」から3楽章~「ロシアの踊り」、「ペトルーシュカ」、「謝肉祭の日」は、バレエのための管弦楽曲として作曲されたものを、アルトゥール・ルービンシュタインの委嘱によりピアノ独奏用に3つの場面を抜粋した作品です 曲の冒頭からかなり高度な技巧が要求される超難曲ですが、ラシュコフスキーは確かな技術の裏付けのもと、正確無比の超高速演奏を展開します 「1台のピアノはオーケストラに匹敵する」ということを実践で示した演奏とでも表現すべき、カラフルで見事な演奏でした
会場一杯の拍手 とブラボーに応え、チャイコフスキーの「四季」から「10月 秋の歌」を静かに演奏、聴衆のクールダウンを図りました 鳴り止まない拍手に、スクリャービンの「エチュード作品8-12」を圧倒的な迫力で弾き切り、再び聴衆をホットにしました それでも鳴り止まない拍手にモンポウの「プレリュード」を穏やかに演奏、再びクールダウンを図りました この辺の選曲と演奏順は彼ならではの計算に基づくものでしょう これからの活躍が大いに期待される若き大器です