30日(日).わが家に来てから今日で762日目を迎え,米国のミュージシャン ボブ・ディランがノーベル文学賞の受賞者に選ばれながら約2週間にわたり沈黙を貫いたあと,受賞の意思を表明したというニュースを見て感想を述べるモコタロです
ボブ・デュランが2週間どこにいたか? ボク・シラン どこかで風に吹かれてたかな
閑話休題
昨日,上野の東京文化会館小ホールで「深沢亮子ピアノリサイタル~管楽器と共に」を聴きました プログラムは①モーツアルト「ピアノ,オーボエ,クラリネット,ホルン,ファゴットのための五重奏曲変ホ長調K.452」,②助川敏弥「ピアノのためのソナチネ『青の詩』」(ピアノ・ソロ),③ベートーヴェン「ピアノ,オーボエ,クラリネット,ホルン,ファゴットのための五重奏曲変ホ長調 作品16」です 演奏は,ピアノ=深沢亮子,オーボエ=金子亜未(新日本フィル首席),クラリネット=藤井洋子(読響首席),ホルン=日橋辰朗(同),ファゴット=吉田将(同)です
全自由席です.3列目C列27番,センターブロック右通路側席を押さえました 会場は満席に近い状況です 5人の奏者が登場,配置に着きます.ピアノを奧にして,左からオーボエ,ファゴット,ホルン,クラリネットの順に並びます.ピアノはスタインウェイですが,この小ホール備え付けのピアノでしょうか
深沢亮子と言えば,内幸町の旧イイノホールで使用していたベーゼンドルファー・インぺリアル(現在 飯野ビル1階ロビーでのランチタイムコンサートで使用)は,彼女のアドヴァイスで導入されたピアノで,現在の新しいイイノホールで使用しているベーゼンドルファーも彼女のアドヴァイスによるものだと,イイノホール支配人Kさんから伺いました ウィーンのアーティスト達との共演も多い深沢亮子らしい選択だと思いました
モーツアルトの「ピアノ,オーボエ,クラリネット,ホルン,ファゴットのための五重奏曲変ホ長調K.452」は第1楽章「ラルゴ~アレグロ・モデラート」,第2楽章「ラルゲット」,第3楽章「ロンド:アレグレット」から成ります 序奏部のラルゴはピアノから入りますが,かなりゆったりしたテンポです.アレグロ・モデラートに移ってからもあまりペースが上がりませんが,それはそれでモーツアルトの心地よさが伝わってきます 「世知辛い世の中,そんなに急いでどこへ行く」といった感じで,深沢ペースで進みます
第2楽章ではオーボエ,クラリネット,ホルン,ファゴットがソロでつないでいくパッセージがありますが,金子,藤井,日橋,吉田の演奏は,さすがは首席揃いという素晴らしいパフォーマンスでした こういう演奏で聴くと,モーツアルトの室内楽って本当に素晴らしいと思います
第3楽章も深沢のピアノをからめて管楽器群が素晴らしいアンサンブルを奏で,会場を愉悦感でいっぱいに満たしました
2曲目は深沢亮子のピアノ・ソロにより助川敏弥「ピアノのためのソナチネ『青の詩』」が演奏されました 助川敏弥(1930-2015)は札幌市生まれで東京藝大で作曲を学んだそうです.この曲は1974年に書かれた曲で,3つの楽章から構成されています.作曲者は「さまざまな種類の青のイメージを抱いて作曲した」と述べているそうですが,ファンタジックな音楽でした
休憩が終わり,席について後半の開演を待っていると,同じセンターブロックの2列目の左通路側席辺りがざわついています 何だろうと見たら,老夫婦らしきカップルの男性が急に具合が悪くなったらしく,周りの人が「救急車を呼んだ方がいい」と言い合っています そうこうしているうちに,何も知らない5人の奏者がステージに登場,演奏に入る態勢になりました すると,会場関係者らしき人が,その男性の所まで行って,聴衆に向けて「どなたかドクターはいらっしゃいますか?」と大きな声で問いかけました.すると,3人ほど医師らしき人が名乗り出て,慎重に男性を外に連れ出すように指示し,係員が車椅子に乗せてドクターたちと共に会場の外に連れて行きました この間,5人の演奏者は一旦舞台裏に引き上げて待機することになりました.この間 約5分の出来事でした ご本人に大したことが無ければ良いのですが
40年以上コンサート通いをしていますが,こういうアクシデントは初めてです.生のコンサートは何が起こるか分からない さらに驚いたのは,聴衆の中にドクターが少なくとも3人いて,名乗り出たことです 医師を構成員とするオーケストラが存在するほどですから,お医者さんにクラシック好きが多いというのも頷けます
再度5人がステージに登場,ベートーヴェン「ピアノ,オーボエ,クラリネット,ホルン,ファゴットのための五重奏曲変ホ長調」の演奏に入ります
この曲はベートーヴェンがボンからウィーンに出てきて間もなくの1796年(作曲者26歳)に作曲されたとみられています 同じ調性(変ホ長調)といい,同じ楽器編成といい,同じ楽章構成(急ー緩ー急)といい,第1楽章が序奏を伴ったソナタ形式で書かれていることといい,ベートーヴェンがモーツアルトのピアノ五重奏曲k.452を意識して書いたことは間違いありません
この曲は第1楽章「グラ―ヴェ~アレグロ・マ・ノン・トロッポ」,第2楽章「アンダンテ・カンタービレ」,第3楽章「ロンド:アレグロ・マ・ノン・トロッポ」から成ります
第1楽章は序奏(グラ―ヴェ)は,モーツアルトの時と同じようにゆったりとしたテンポで開始されます.この曲でも,アレグロに移ってからもそれほどテンポは上がりません 第2楽章では,モーツアルトの五重奏曲と同じように管楽器がメロディーを受け継いでいくところがありますが,これも素晴らしい演奏でした 第3楽章はピアノによるリズミカルなロンド主題から始まります.この楽章でも管楽器のアンサンブルが素晴らしく,若きベートーヴェンの生き生きした音楽がストレートに伝わってきました
それにしても,ベートーヴェンって中期・後期の作品はもちろん良いけれど,先日 ルートヴィヒ・チェンバー・プレイヤーズの演奏で聴いた「七重奏曲」や今回のピアノ五重奏曲のような若き日の作品も,明るく伸び伸びしていて素晴らしいと思います
アンコールは,最初に深沢亮子のピアノ・ソロで「風」という曲(作曲者名は聞き逃した),2曲目は5人の演奏で,先ほど演奏したモーツアルトの五重奏曲の第2楽章を演奏しました この楽章が2回聴けて幸せでした そして,最後は再び深沢亮子のソロでモーツアルトの「トルコ行進曲」が華々しく演奏されコンサートの幕を閉じました
この日のコンサートは同じ編成によるモーツアルトとベートーヴェンの室内楽が聴けてラッキーでした