28日(金).昨日の朝刊各紙に,銀座 松坂屋跡再開発エリアに銀座地区で最大級となる複合商業施設「GINZA SIX」が来年4月20日に開業するというニュースが載っていました 記事を見て素晴らしいと思ったのは,地階に能楽の最大流派,観世流の拠点となる「観世能楽堂」が開場すると書かれていたからです 銀座と言えば高級ファッション・ブランド店がしのぎを削る最先端の街として有名ですが,今や「モノからコトへ」,つまり,「物の消費から文化の消費へ」という時代を迎えています 銀座にはクラシック音楽ホールとして「王子ホール」と「ヤマハホール」があり,東銀座には「歌舞伎座」がありますが,これに加えて「観世能楽堂」がオープンすることによって,ますます文化の発信地としても名を馳せてほしいと思います ということで,わが家に来てから今日で760日目を迎え,「三笠宮さま逝去」のニュースを見て所見を述べるモコタロです
なぜ皇族には「さま」を付けるのか? 付けないとサマにならないからだってさ
閑話休題
昨日,夕食に「メカジキのソテー」「豚もやし炒めのおろしポン酢かけ」「生野菜サラダ」を作りました 日頃から気を付けているのは,肉と魚と野菜のバランスですが,最近やや魚が不足気味です
も一度,閑話休題
チケットを1枚買いました 来年2月11日(土・祝)午後2時から東京文化会館小ホールで開催される「まちなかコンサート ムジカ アモーレ」です プログラムは①マスネ「タイスの瞑想曲」,②ボロディン「弦楽四重奏曲第2番」より第1楽章,③シューマン「3つのロマンス」より,④ピアソラ「アディオス・ノニーノ」です 出演は東京音楽コンクール入賞者で,ヴァイオリン=瀧村依里(読響首席),小川響子(東響藝大院),ヴィオラ=渡邉千春,チェロ=加藤文枝,ピアノ=居福健太郎,フルート=梶川真歩,オーボエ=吉村結実,クラリネット=コハーン・イシュトヴァ―ン,ファゴット=鈴木一成,ホルン=氏家亮で,ナビゲーターは元 東京シティ・フィル音楽監督・宮本文昭です
全席自由で1,000円です.祝日の午後,リラックスして聴くにはうってつけのコンサートです
最後の,閑話休題
昨夕,上野の東京文化会館小ホールで「ルートヴィヒ・チェンバー・プレイヤーズ2016」コンサートを聴きました プログラムは①リヒャルト・シュトラウス(ハーゼネール編)「もう一人のティル・オイレン・シュピーゲル」,②ギデオン・クライン「パルティータ」(七重奏版),③アドルフ・ブラン「七重奏」,④ベートーヴェン「七重奏曲変ホ長調」となっています
ルートヴィヒ・チェンバー・プレイヤーズは,ドイツ(シュトゥットガルト放送交響楽団のメンバー)と日本の若手演奏家による室内合奏団です メンバーは,ヴァイオリン=白井圭,ヴィオラ=ヤ二ス・リールバルディス,チェロ=横坂源,コントラバス=弊隆太朗,クラリネット=ディルク・アルトマン,ファゴット=ハンノ・ドネヴェーグ,ホルン=ヴォルフガング・ヴィプフラーの7人です
自席はD列19番,左ブロック右通路側席です.会場は6~7割程度の入りでしょうか 1曲目のリヒャルト・シュトラウス(ハーゼンエール編)「もう一人のティル・オイレンシュピーゲル」は,1895年にシュトラウスが作曲した作品をオーストリアの作曲家・ハーゼンエールが原曲の半分の長さに編曲したものです
左からヴァイオリンの白井,コントラバスの弊,ホルンのヴィプフラー,ファゴットのドネヴェーグ,クラリネットのアルトマンの順に並びます.コントラバス以外の奏者は立って演奏します 聴いている限り,楽器が少ない分,若干物足りなさを感じますが,いかにも いたずら好きのティルの動きを彷彿とさせる原曲の魅力は失っていません
2曲目に入ります.プログラムによるとチェコ出身の作曲家クラインの「パルティータ」(七重奏版)という曲です この曲は1944年に作曲された弦楽三重奏曲を,後の1990年にチェコの作曲家ソーデックが弦楽オーケストラ用に編曲したものとのことです 3つの楽章から成り,今回は第2楽章だけが演奏されるとプログラムに書かれています
先ほどの5人に,新たにヴィオラのリールバルディスとチェロの横坂源が加わります 演奏が始まりますが,解説にある「モラヴィア民謡を主題とする変奏曲だが,幾分憂いを帯びた旋律がクラインの悲劇の人生と重なり,なんとも悲しい」という曲想とはかけ離れています 何か変だな と思っているうちに曲が終わりましたが,少し間を置いて次の曲に入りました.プログラムには「パルティータ」は第2楽章だけを演奏することになっているので,3曲目のブラン「七重奏曲」(全4楽章)の第1楽章に入ったことになります ところが,「第1楽章は軽快に上行する第1主題と伸びやかな第2主題からなるソナタ形式」という解説とはまったく曲想が異なるのです 最後まで中途半端な気持ちのまま聴いているうちに曲が終わってしまいました.やっぱり何か変です
すると,クラリネットのアルトマンが白井氏の通訳を介して「今演奏したのは3曲目のブラン作曲『七重奏曲』でした 次に演奏するのが2曲目のクライン作曲『パルティータ』です.順番が入れ替わってしまい申し訳ありませんでした」と説明しました
はっきり言って,これは聴衆軽視です 例えば2曲目と3曲目が誰でも知っているような曲であれば,「順番が入れ替わったな」と気が付くかも知れませんが,片やクライン,片やブランです.会場の聴衆の中に この二人の作曲家を知っている人が何人いるでしょうか 誰も知らないんじゃないかと思います その意味では,2曲目の演奏に入る前に「順番を入れ替えて演奏します」と一言アナウンスすれば何の問題もなかったのだと思います
聴衆の多くは,あらかじめプログラムの解説を読んで「ああ,そういう曲なんだな」とある程度内容を把握してから演奏に耳を傾けるものです それが,何の予告もなく曲の順番を入れ替えられたら頭と耳が混乱します 「最初からもう一度演奏してくれ」ってなもんです.こういう聴衆軽視の姿勢は絶対に改めて欲しいと思います
入れ替わって演奏された「パルティータ」は,作曲者のクラインがユダヤ系ということで,1944年にはアウシュヴィッツへ,翌年フュルステングルーベに送られ殺害されたという背景を持った曲なので,もの悲しく,作曲者の名前のようにクライんです
休憩後はベートーヴェン「七重奏曲」です この曲は1799年(作曲者29歳)に作曲され,オーストリア皇帝フランツ1世の皇后マリア・テレジアに献呈されました 6つの楽章から成りますが,どの楽章も生き生きとしています
第1楽章はゆったりした序奏に続き軽快な音楽が展開します この序奏を聴くと「いよいよ始まるな」とワクワクします 第2楽章を経て第3楽章に入ると,ピアノ・ソナタ作品48-2で使われたお馴染みの主題が奏でられます この楽章と次の第4楽章では,弦楽器群と管楽器群との掛け合いが楽しく聴けます 第5楽章はホルンが大活躍します.そして中間部ではチェロとコントラバスが主役に名乗りを上げます この時の横坂源のチェロと弊隆太朗のコントラバスの演奏は聴きごたえがありました そして最後の第6楽章は緩やかな序奏に続いて軽快な音楽が展開します この点は第1楽章と似た作りになっています
会場いっぱいの拍手に7人は,ヨハン・シュトラウス2世の「ポルカ”野火”」を演奏し 大きな拍手を受け コンサートを締めくくりました
最終的にはベートーヴェンが良かったので「終わり良ければ全て良し」なのですが,主催者側には「曲の順番の入れ替えだけは事前にアナウンスすべし」と念を押しておきたいと思います