人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

上原彩子ピアノ・リサイタルを聴く~浜離宮ランチタイムコンサート/渡辺玲子レクチャーコンサートを聴く~白寿ホール

2016年10月21日 08時24分49秒 | 日記

21日(金).わが家に来てから今日で753日目を迎え,米大統領選挙で最終回となる候補者テレビ討論会で,共和党のトランプが劣勢を挽回できなかったというニュースを見て 感想を述べるモコタロです

 

          

             トランプは切り札が無くて ぼくのように1歩前に出ることが 出来なかったんだね

 

  閑話休題  

 

昨日午前11半から浜離宮朝日ホールでランチタイムコンサート「上原彩子ピアノ・リサイタル」を聴きました プログラムは①モーツアルト「ピアノ・ソナタ第10番ハ長調K.330」,②シューマン「謝肉祭」,③ムソルグスキー「展覧会の絵」です

 

          

 

自席は2階左側バルコニー席で,10~12月は同じ席です 浜離宮朝日ホールの2階バルコニー席は1列しかなく ステージが見やすく作られているので,試しに選んでみました 座ってみると隣人とのトラブルが起こらないように椅子が配置されているので正解でした

上原彩子が淡いピンクのステージ衣装で颯爽と登場し,ピアノに向かいます 1曲目はモーツアルト「ピアノ・ソナタ第10番ハ長調K.330」です.この曲は1783年(モーツアルト29歳)に作曲されました 第1楽章「アレグロ・モデラート」,第2楽章「アンダンテ・カンタービレ」,第3楽章「アレグレット」から成ります

第1楽章「アレグロ・モデラート」が軽快なテンポで始まります モーツアルトで重要なのはテンポです.この日の青空のような明るく弾むような音楽が展開します 第2楽章ではメロディーを美しく歌わせます 第3楽章では再び軽快なテンポで進めフィナーレを迎えます

ここで,上原はマイクを持って挨拶します

「今日はお天気が良い中,ようこそお出でくださいました.ランチタイムコンサートといういことで,今日のプログラムを料理に例えますと,今演奏したモーツアルトが前菜とすれば,次のシューマンと後半のムソルグスキーは重めのメインディッシュになります 2曲目と3曲目の共通点は,組曲となっているところ,相違点はシューマンが比較的明るいのに対してムソルグスキーは暗い感じの曲であることです

と,挨拶している真っ最中の11時50分ごろ会場が少し揺れました.地震です 客席がざわつきますが,上原は気が付いているのかいないのか分かりませんが,何事もないかのように淡々と話を続けました 三児の母親である肝っ玉母さんの上原のことです.大した地震ではないと思って続けたのだと思います

1曲目のシューマン「謝肉祭」は,シューマンがクララの父親ヴィークのもとでピアノを学んでいたとき,エルネスティーネという男爵令嬢が入門してきたら,ヴィークの娘クララそっちのけで夢中になり,彼女の出身地ボヘミアのアッシュの綴り文字を音符に織り込んでピアノ曲を書くことを思い着き,この作品を書いたのでした 第1曲「前口上」から第20曲「ペリシテ人と闘うダヴィット同盟員」まで20の小品から構成されています 上原は少し速めのテンポで,曲に応じてメリハリを付けて演奏を展開しました とくに最後の第20曲は鮮やかな演奏でした 2002年の第12回チャイコフスキー国際コンクール ピアノ部門で女性で初,日本人として初の第1位に輝いた上原彩子の本領発揮の演奏でした

 

          

 

ここで15分間の休憩に入ります.女子トイレが長蛇の列です そこでハタと思ったのですが,このランチタイムコンサートは圧倒的に女性客が多いのではないか,ということです 大雑把に数えて7対3位の割合で女性が多いように思います

プログラム後半はムソルグスキー「展覧会の絵」です.上原彩子が真っ赤なドレスに”お色直し”して登場します この曲は,友人の画家の遺作展で観た10点の絵画の印象をもとに,曲をつなぐプロムナードとともに組曲として作曲したものです 作曲者が生前の時には演奏されることはありませんでしたが,ラヴェルが管弦楽用に編曲して世界的に通用する曲に”昇格”しました

上原は曲に応じてテンポや強弱を自在に変えて,メリハリのある演奏を展開します 例えば,第5曲「卵の殻を付けた雛鳥の踊り」では,まるで卵から孵ったばかりのヒヨコが忙しなくピヨピヨと歩き回る様子が目に浮かぶようです また次の第6曲「サミュエル・ゴールデンベルクとシュミュイレ」では,金持ちのサミュエルが『 おい,年貢を納める日はとっくに過ぎているんだぜ.今すぐ納めてもらおうか 』と脅すと,シュミュイレが『 お代官様,今はご勘弁くだせえ.3日後にはきっとお納めいたしますで 』と甲高い声の早口で卑屈に訴えているような様子がありありと浮かんできます 最後の第10曲「キエフの大門」はパワフルな上原の実力発揮といったところで 圧巻でした こういう演奏を聴くと,ラヴェルの管弦楽版も良いけれど,また,先日フォーレ四重奏団による演奏で聴いたピアノと弦楽による演奏も味があるけれど,ピアノ独奏のオリジナル版の演奏も捨てたものではないと思います

会場一杯の拍手に上原はクライスラー(ラフマニノフ編)「愛の悲しみ」を超絶技巧で演奏,再び大きな拍手を浴びました  充実したコンサートでした

 

          

 

  も一度,閑話休題  

 

いったん家に帰って一休みしてから,代々木公園の白寿ホールに向かいました.午後7時から「渡辺玲子プロデュース レクチャーコンサート」を聴きました 演奏曲目は①ベートーヴェン「ヴァイオリン・ソナタ第5番「春」,②シューマン「F.A.Eソナタ」より「間奏曲」,③ブラームス「F.A.Eソナタ」より「スケルツォ」,④フランク「ヴァイオリン・ソナタ」です

 

          

 

自席はI列3番,9列目の左から3つ入った席です.会場は9割方埋まっている感じです

このレクチャーコンサートは今回で2回目を迎えるとのことです.最初にヴァイオリニスト・渡辺玲子とピアニスト・江口玲がステージに登場し,渡辺がマイクを持って今回のレクチャーコンサートの進め方を説明しました それによると,最初にベートーヴェンの「ヴァイオリン・ソナタ第5番”春”」についてレクチャーし,次いで本番の演奏を行う,その後シューマンとブラームスの曲をレクチャーして本番を演奏,休憩後にフランクの「ヴァイオリン・ソナタ」について解説し,本番を演奏する,ということでした

最初に渡辺がベートーヴェン「ヴァイオリン・ソナタ”春”」について,演奏を交えながら解説しました かなり専門的な知識を要するレベルの高い解説なのでついて行くのが大変です 初めて渡辺玲子の声で解説を聴きましたが,現在ニューヨーク在住ということもあってか,アメリカ人が日本語を話しているようなしゃべり方です しかも早口なので注意深く耳を傾けていないと言っていることが把握できません しかし,演奏を交えながらの解説なので何となく言わんとするところは分かります

「スプリング・ソナタというと皆さん,優しくて美しい曲というイメージがあるかも知れませんが,この曲はスケールの大きな曲なんです 今まではソナタと言えば3楽章形式が普通でしたが,この曲は4楽章から成ります ベートーヴェンは同じメロディーを循環させるように何度か使っています 循環形式は何もフランクに始まったことではなく,ベートーヴェンの曲にすでに表れているのです.名曲の特徴は一貫性,多様性,コントラストといった条件を備えているかどうかですが,ベートーヴェンのスプリング・ソナタはその条件を備えています

彼女は時々自分が手に負えない時は江口氏に振るので,江口氏は油断できません 江口氏の解説によると,

「ベートーヴェンはメロディーを作るのが下手だったのではないか.随分苦労して曲を作り上げている

ということです

二人はいったん引っ込んで,再度ステージに登場し,本番の演奏に入ります 江口は電子ブックを楽譜代わりに使用します.しかし,彼の傍らには譜めくりの男性が控えています 彼は江口が演奏中まったく動きません.指一本を除いては つまり,リモコン操作で江口の電子ブックの画面上の譜面をめくっているのです

レクチャーを聴いてから演奏を聴くと,新たに知った知識が生かされて,曲に対する理解が深まります

次いでシューマンの「F.A.Eソナタ」より「間奏曲」とブラームス「F.A.Eソナタ」より「スケルツォ」のレクチャーを行い,ベートーヴェンとシューマンとブラームスの3曲は,主題が循環する例として取り上げたと解説し,演奏に入りました ブラームスの「スケルツォ」はベートーヴェンの第5交響曲の”運命のテーマ”の変形であるという解説を受けて演奏を聴くので,その通りだと理解できます

休憩後はフランク「ヴァイオリン・ソナタ」です この曲については,主題が曲全体を通して現れる”循環形式”について演奏を交えて解説しました 面白いと思ったのは,4つの楽章の連関性です 解説によると,第1楽章の終わりと第2楽章の始まり,第2楽章の終わりと第3楽章の始まり,第3楽章の終わりと第4楽章の始まりは,調性の違いがあっても,実際に聴く立場からは,前の楽章と結びついているという印象を受けるように曲が書かれている したがって,楽章間を大きく空けて演奏するのは間違いだ,という説明です

その後,本番の演奏に入りました.循環形式の解説を聞いた上で生の演奏を聴いたので,具体的にどこの部分が循環形式になっているのかが理解できます さらに楽章間を空けない演奏を聴くことにより,実際に耳で聴いて解説の意味が理解できます 渡辺玲子は最良の相棒・江口玲(二人はジュリアード音楽院時代からの付き合い)のしっかりしたサポートのもと,名器グァルネリ・デル・ジェス『ムンツ』を駆使し,説得力のある演奏を展開しました

私にとっては極めてハードルの高いレクチャーコンサートでしたが,本番の演奏を含めて 演奏する側が曲をどう捉え何を考えて演奏しているのかが良く分かり 本当に参考になりました 来年も開催するとのことなので 是非また聴きたいと思います

 

          

 

本日toraブログの登録読者数が1,000人を突破しました いつもご覧いただいている読者の皆さまのお陰です.ありがとうございました この記録は2011年2月15日に開設して以来5年8か月6日目での達成で,この間に書いた日記は2159本となりました これからも1日も休まずアップしていきますので,今後ともよろしくご愛読をお願いいたします

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