29日(火)その2.よい子は「その1」から見てね モコタロはそちらに出演しています
昨夕,東京オペラシティコンサートホールで読売日響「三大協奏曲」コンサートを聴きました プログラムは①メンデルスゾーン「ヴァイオリン協奏曲ホ短調」,②ドヴォルザーク「チェロ協奏曲ロ短調」,③チャイコフスキー「ピアノ協奏曲第1番変ロ短調」です ①のヴァイオリン独奏=キム・ボムソリ,②のチェロ独奏=岡本侑也,③のピアノ独奏=ダニール・ハリトーノフ,管弦楽=読売日響,指揮=海老原光です
自席は1階30列10番,左ブロック右通路側席(最後列に近い席)です.会場はほぼ満席状態.よく入りました オケはいつもの読響の編成で,弦は左から第1ヴァイオリン,第2ヴァイオリン,チェロ,ヴィオラ,その後ろにコントラバスという並びです.コンマスは長原幸太です
1曲目のメンデルスゾーン「ヴァイオリン協奏曲ホ短調」は1844年に作曲され,翌5年3月13日にライプツィヒで初演されました 1989年韓国生まれ,現在28歳のキム・ボムソリが白の華やかな衣装で登場します 2010年の仙台国際音楽コンクール・ヴァイオリン部門で最年少入賞(第4位)を果たし,13年にはARDミュンヘン国際音楽コンクール・ヴァイオリン部門で最高位(1位なしの2位)に入賞しています 現在ジュリアード音楽院に在学中です
海老原光のタクトで第1楽章が開始され すぐにヴァイオリンが入ってきます.とても美しいヴァイオリンです 技巧的にも何の問題もありません しかし,この曲を聴いていつも思うのは,誰の演奏も同じように聴こえ,個性って何だろう,ということです ひと言で言えば「没個性」ということです.「記録に残るが記憶に残らない」演奏がいかに多いかということです これは「名曲」と言われる作品ほどそのように思います.いかに他の演奏家との「差別化」を図るのか,説得力を持って耳に聴こえる形で表現することは相当難しいのではないかと思います
キム・ボムソリはアンコールにソ・イサンの「庭園のソナタ」から第5番「小鳥」を演奏しましたが,こちらの方がお国柄からか個性的な演奏だと思いました
2曲目はドヴォルザーク「チェロ協奏曲ロ短調」です ドヴォルザークはアメリカのナショナル音楽院の院長として1892年から95年までニューヨークに滞在しましたが,その間にボヘミア出身のチェロ奏者ハヌシュ・ヴィハンからチェロ協奏曲の作曲を依頼され,1895年に完成しました
チェロを弾く岡本侑也が今年6月にブリュッセルで開かれたエリザベート王妃国際音楽コンクールのチェロ部門で第2位に入賞したというニュースに接したのは,このコンサートのチケットを買った数日後のことでした 1994年東京生まれということなので現在23歳.現在,ミュンヘン音楽大学に在学中です
海老原光の指揮で第1楽章が開始されます 岡本のチェロが力強く入ってきます.彼の演奏も技巧的には何の問題もありません.とても美しいチェロです しかし,彼にしかない個性って何でしょう? 演奏姿を見ていると,汗をかかずクールに演奏しているように思います 言い換えれば,必死の姿勢が見られません.たとえば,アレクサンドル・クニャーゼフの「命を懸けて渾身の演奏する」といったスタイルとは対極にある演奏です クールがスタイルだと言えばそうなのでしょうが,それでは他の演奏家と差別化が図れません.最近クールな演奏が多いと思われるからです
休憩後はチャイコフスキー「ピアノ協奏曲第1番変ロ短調」です この曲は1875年に作曲され,同年10月25日にアメリカ・ボストンで初演されました ステージに現れたダニール・ハリトーノフは相当背が高いスマートなイケメン青年です 1998年サハリン生まれと言いますから,現在19歳です モスクワ音楽院で学び,ゲルギエフやスピヴァコフに認められロシアやヨーロッパで活躍中とのことです
海老原光のタクトで第1楽章が始まります ピアノが入ってきたとき,「これはイケるかも知れない」と思いました.弱冠19歳とはとても思えない巨匠風のスケールの大きな演奏を展開します もちろん技巧は完璧と言っても良いでしょう.速いパッセージも何の苦もなく超高速で弾き切ります 一方,ゆったりしたパッセージでは一音一音に意味が込められています バックを務めるオケも,フルート,オーボエを中心にソリストを盛り立てます
前半では何となくモヤモヤしていましたが,3人目にしてやっとスッキリしました 19歳のハリトーノフ 恐るべし,です
最後に3人が再登場し,満場の聴衆の拍手を受けましたが,3人ともまだ若い 「今が頂点」と言われないよう頑張って欲しいと思います