人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

齋藤美奈子著「日本の同時代小説」を読む ~ 1960年代以降の「同時代文学史」の決定版

2019年01月04日 07時26分55秒 | 日記

4日(金)。昨日は品川に新年のあいさつに行ってきました 金魚を飼っていて、名前を三百といいます。300円で買ったからだそうです。金魚の言い分を聞いてやってください

 

     

       三百なんてイージーな名前つけて 金魚迷惑だ こうなったら変身してやる! 

 

     

     フーテンの寅さんの実家の裏の工場の社長だぞ~ 労働者諸君  今日も頑張りたまえ

 

ということで、わが家に来てから今日で1554日目を迎え、がんの原因になりうる「遺伝子の変異」は、健康な人でも多く起き、それは加齢や飲酒、喫煙によって増えるという研究結果を京都大や東京大などのチームがまとめた というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

                 お酒やタバコだけじゃなくて 加齢によっても変異が起きるんだ!  加齢なる変異?

 

         

 

齋藤美奈子著「日本の同時代小説」(岩波新書)を読み終わりました 齋藤美奈子さんは1956年新潟県生まれ。児童書などの編集者を経て、現在は文芸評論家。「妊娠小説」、第1回小林秀雄賞を受賞した「文章読本さん江」をはじめ著書多数

 

     

 

齊藤さんがこの本を書こうと思ったきっかけは、「明治以降の小説の歴史については岩波新書の中村光夫『日本の近代小説』(1954年)と『日本の現代小説』(1968年)が最適な入門書でありガイドブックだった 前者は明治大正の、後者は昭和の文学史だ。しかし、この2冊の最大の難点は1960年代で話が終わってしまうことだ 『日本の現代小説』の出版から50年目に当たる2018年の節目に、1960年以降の小説の歴史を書いてみようと思った」からです

筆者は1960年代から2010年代までを10年ごとに区切り、次のようなキャッチ・フレーズで小説を振り返っています

①1960年代「知識人の凋落」

②1970年代「記録文学の時代」

③1980年代「遊園地化する純文学」

④1990年代「女性作家の台頭」

⑤2000年代「戦争と格差社会」

⑥2010年代「ディストピアを超えて」

齋藤さんは、①1960年代を振り返る中で、純文学と大衆文学の中間に位置する文学「中間小説」が登場したと書き、次のように続けています

「純文学と大衆文学(エンターテインメント)の差は、今日では発表媒体の差として認識されている 『群像』『新潮』『文學界』『文藝』『すばる』などの文芸誌に載るのが純文学。『小説現代』『オール讀物』『小説新潮』『小説すばる』などの中間小説誌に載るのが、かつては大衆文学とか中間小説と呼ばれたエンターテインメント 観点を変えると、芥川賞の対象となるのが純文学、直木賞の対象となるのがエンターテインメントである

そして、60年代を代表する青春小説として、柴田翔「されど われらが日々ー」(1964)と、庄司薫「赤頭巾ちゃん気をつけて」(1969)の2冊を挙げています この2冊は同時代人として読みました 齋藤さんは「赤頭巾ちゃん気をつけて」は初めて「僕/ぼく」という一人称で書いた小説だと指摘しています

②1970年代の中でよく読んだのは五木寛之の超長編「青春の門」です

③1980年代を象徴する小説として齋藤さんが挙げているのは田中康夫のデビュー作「なんとなく、クリスタル」(1981)と島田雅彦のデビュー作「優しいサヨクのための喜遊曲」(1983)です

④1990年代に続々と登場する女性作家として、高村薫、宮部みゆき、桐野夏生、川上弘美、小川洋子、角田光代などを紹介しています

⑤2000年代はアメリカの9.11同時多発テロ事件やリーマン・ショックなどが文学にも影響を与えたことや、インターネットの普及を背景とした「ケータイ小説」の流行があったことを指摘しています

⑥2010年代は東日本大震災の影響、ブラック企業が生んだ新生プロレタリア文学の登場、少子高齢化時代の老人介護小説の台頭などについて触れています

この本に登場する主な作家は241人に及び、巻末にその一覧が生年順に掲載されています 齋藤さんは少なくともこれらの作家の作品は一通り目を通し、その上で論評を加えているわけですから、プロとは言え凄いものだと思います

「この本読んだ」という本がきっとあります 1960年以降の「同時代文学史」の決定版としてお薦めします

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