人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

ヴェルディ「レクイエム」を聴く ~ ロレンツォ・ヴィオッティ ✕ 東響 ✕ 森谷真理 ✕ 清水華澄 ✕ 福井敬 ✕ ジョン・ハオ ✕ 東響コーラス:第667回東響定期演奏会

2019年01月13日 07時24分26秒 | 日記

13日(日)その2。よい子は「その1」から読んでね。モコタロはそちらに出演しています 

昨日18時からサントリーホールで東京交響楽団の第667回定期演奏会を聴きました プログラムはヴェルディ「レクイエム」です 出演はソプラノ=森谷真理、メゾ・ソプラノ=清水華澄、テノール=福井敬、バス=ジョン・ハオ(リアン・リの代演)、管弦楽=東京交響楽団、合唱=東響コーラス、指揮=ロレンツォ・ヴィオッティです

この曲はジュゼッペ・ヴェルディ(1813‐1901)が1874年に作曲した鎮魂ミサ曲です 1868年、ロッシーニの死に際して13人のイタリアの作曲家による「レクイエム」合作の企画があり、ヴェルディは最後の部分「われを解き放ちたまえ」を作曲しましたが、この時は演奏の機会が与えられませんでした 1873年に詩人・小説家のマンゾーニの死を追悼して他の部分を全曲完成し、1874年5月22日の一周忌にミラノのサン・マルコ教会でヴェルディ指揮ミラノ・スカラ座管弦楽団を中心とするオーケストラと合唱団によって初演されました

全体の構成は次の通りです

Ⅰ.「永遠の安息をお与えください」と「主よ、お憐みください」(レクイエム&キリエ)

Ⅱ.怒りの日(ディエス・イレ):「怒りの日」から「涙の日」までの10曲から成る。

Ⅲ.オフェルトリオ

Ⅳ.聖なるかな(サンクトゥス)

Ⅴ.神の子羊(アニュス・デイ)

Ⅵ.久遠の光が(ルクス・エテルナ)

Ⅶ.私をお救いください(リベラ・メ)

 

     

 

東響コーラスの混声合唱約150名がステージ後方にスタンバイします。女声陣は普段は上が白、下が黒の衣装ですが、曲目が「レクイエム」なので上下黒の衣装で統一しています オケはいつもの東響と同じで、左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスという並びです。コンマスは水谷晃。ソリストの4人が指揮者の左右にスタンバイします

全体の演奏を聴く限り、ヴィオッティの音楽作りは、最弱音から最強音までの振幅が大きいのですが、指揮は冷静沈着そのものです 第1曲「レクイエム」の冒頭は最弱音で始まり、第2曲「怒りの日」で大地を揺るがす最強音に達します

この曲は初演時から「オペラのようだ」とか「宗教曲らしくない」とか言われてきましたが、ヴェルディ自身は「オペラのように歌って欲しくない」という趣旨のことを語っています

プログラム冊子の「プログラム・ノート」に加藤浩子さんが次のように書いています

「ヴェルディの『レクイエム』は、おそらくイタリア人だからこそ書けた作品である 『これは祈りの音楽ではなく、神に要求する音楽』『ヴェルディは”レクイエム”を通じて神に問いかけている。解放して欲しい、けれど本当に解放されるのか、と』・・・筆者がこれまでインタビューしたイタリア人アーティストたちが本作について語った言葉だ

これを読んで、やっとこの作品の主張している本質的なものが分かったような気がしました 前述の通り、ヴェルディはこの曲を作曲するに当たって、一番最初に作曲したのは最終曲「リベラ・メ」(解き放ちたまえ)でした その歌詞を読むと「私を解き放ってください、主よ、永遠の死から。その恐ろしい日、私を解き放ってください」となっています この部分を森谷真理さんのソプラノで聴いていて、『祈りの音楽でなく、神に要求する音楽』という言葉が腑に落ちました


     

 

森谷さんをはじめソリストの4人は絶好調でした この日の4人はオペラ的な歌唱を排し、純粋に宗教曲としてのアプローチで歌っていたと思います そして、特筆すべきは 楽譜なしで終始迫力のある合唱を聴かせてくれた東響コーラスの皆さんです 「怒りの日」の合唱は、腹の底にズッシリと響きました   東京交響楽団の面々はヴィオッティの指揮のもと水谷晃コンマスのリードにより渾身の演奏を展開しました

ローザンヌ出身のロレンツォ・ヴィオッティはまだ28歳の若さですが、これからの活躍が大いに期待される指揮者として注目しています

 

     

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響きの森クラシックシリーズ「ニューイヤーコンサート2019」を聴く ~ 小林研一郎 ✕ 前橋汀子 ✕ 幸田浩子 ✕ ジョン・健・ヌッツォ ✕ 東京フィル

2019年01月13日 00時13分24秒 | 日記

13日(日)その1。わが家に来てから今日で1563日目を迎え、日産自動車の前会長カルロス・ゴーン容疑者が私的な損失を日産に付け替えたなどとされる事件で、東京地検特捜部は11日、ゴーン前会長を会社法違反の罪で追起訴したというニュースの一方で、2020年東京五輪・パラリンピックの招致を巡り、日本オリンピック委員会の竹田恒和会長が汚職に関わった疑いがあるとして、フランス当局が竹田会長の訴追に向けた手続きに入っていたことが分かった というニュースが出たことについて感想を述べるモコタロです

 

     

     このタイミングで フランスの検察が動くのは 日本のゴーン捜査への報復措置か?

 

         

 

昨日、15時から文京シビックホールで「響きの森クラシックシリーズ『ニューイヤーコンサート2019』」を、18時からサントリーホールで東京交響楽団の第667回定期演奏会を聴きました。ここでは前者の『ニューイヤーコンサート』について書きます

この公演は私にとって6日の「北とぴあ」、8日の「日経ミューズサロン」に次いで3度目のニューイヤーコンサートです

プログラムは①ヨハン・シュトラウス2世:ワルツ「春の声」、②メンデルスゾーン「ヴァイオリン協奏曲ホ短調」、③ヨハン・シュトラウス2世:喜歌劇「こうもり」より「公爵様、あなたのようなお方は」、④プッチーニ:歌劇「トスカ」より「星は光りぬ」、⑤マスカーニ:歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」より間奏曲、⑥レハール:喜歌劇「メリー・ウィドウ」より「ヴィリアの歌」、⑦プッチーニ:歌劇「トゥーランドット」より「誰も寝てはならぬ」、⑧ラヴェル「ボレロ」です

演奏②のヴァイオリン独奏=前橋汀子、③⑥のソプラノ独唱=幸田浩子、④⑦のテノール独唱=ジョン・健・ヌッツォ、管弦楽=東京フィル、指揮=小林研一郎です

 

     

 

会場はいつもの通り満席状況です 事前のアナウンスで、当初プログラムの前半がオペラやオペレッタの歌、後半がヴァイオリン協奏曲とボレロの予定だったが、ヴァイオリン協奏曲を前半の2曲目に演奏すると伝えられました

オケの配置はいつもの東京フィルと同じで、左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスという編成です コンマスは三浦章宏氏。拍手が起きたのでコバケンの登場かと勘違いした三浦氏が立ち上がり、オケのメンバーも全員立ちましたが、舞台袖から現れたのはMCの朝岡聡氏でした 彼を見た三浦氏は、勘違いに気が付き 全員を座らせました。歯科医者を識者と勘違い、もとい、司会者を指揮者と勘違いした一幕でした

今度はホンモノの”炎のコバケン”が登場し、早速1曲目のヨハン・シュトラウス2世(1825‐1899)のワルツ「春の声」の演奏に入ります やっぱり東京フィルはゴージャスなサウンドですね 一瞬にしてウィンナ・ワルツの世界に引き込まれました。まさに新春に相応しい名曲の華やかな演奏です

ここでソリストのスペースが空けられ、前橋汀子さんが真紅のドレスで登場します 早速2曲目のフェリックス・メンデルスゾーン(1809‐1847)の「ヴァイオリン協奏曲ホ短調」の演奏に入ります この曲は第1楽章「アレグロ・モルト・アパッショナート」、第2楽章「アンダンテ」、第3楽章「アレグレット・ノン・トロッポ~アレグロ・モルト・ヴィヴァーチェ」の3楽章から成ります。3つの楽章は切れ目なく続けて演奏されます

この日は朝から寒い一日でしたね。誰でも思うように身体が動きませんよね・・・・そんな演奏でした 独奏ヴァイオリンが音楽の流れに乗り切れず不安定な演奏が続きました アンコールにバッハの無伴奏パルティータ第3番の「ガヴォット」を演奏しましたが、これも流れがイマイチでした


     


プログラム後半の1曲目はヨハン・シュトラウス2世の喜歌劇「こうもり」から「公爵様、あなたのようなお方は」です この曲は、第2幕の夜会でアイゼンシュタイン家の小間使いアデーレが歌うコケティッシュな歌です ソプラノの幸田浩子さんが淡いパープルの衣装で登場、さっそく歌に入ります 2000年にオペレッタの名門、ウィーン・フォルクスオーパーと専属契約を結んだ彼女の十八番と言っても過言ではないでしょう  身振り手振りを交えながらアイゼンシュタインをあしらうアデーレの姿が目に浮かぶようです

次の曲はジャコモ・プッチーニ(1858-1924)の歌劇「トスカ」から「星は光りぬ」です この曲は第3幕でカヴァラドッシが歌うドラマティックなアリアです 冒頭のクラリネットの寂しげな前奏に導かれてジョン・健・ヌッツォのテノールが入ってきます。さすが、2000年にウィーン国立歌劇場と専属契約を結んだ実力者だけあって、特に高音部で聴かせます

ここで歌手陣の喉を休めるため、オケだけによる演奏が入ります ピエトロ・マスカーニ(1863-1945)の歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」より間奏曲です タイトルは「田舎の騎士道」という意味です。日本語にしてしまうと何とも味気ないタイトルになってしまいますね オペラの間奏曲は数あれど、これほど美しく哀しい曲はないかも知れません 葬儀の時はこの曲を流して欲しいと言う人を知っています

次の曲は幸田浩子さんが再登場し、フランツ・レハール(1870-1948)の喜歌劇「メリー・ウィドウ」より「ヴィリアの歌」を歌います 「メリー・ウィドウ」とは日本語で「陽気な未亡人」という意味です。日本語にしてしまうと・・・・・以下同文 この曲は、大富豪の未亡人ハンナが第2幕で歌うアリアで、森の妖精ヴィリアに恋した青年の想いが切なく歌われます 幸田浩子さんは、アデーレのアリアのようなコケティッシュな歌も上手いし、ハンナのこのアリアのような歌も上手いし、本当に素晴らしいです

次の曲はプッチーニの歌劇「トゥーランドット」より「誰も寝てはならぬ」です この曲は第3幕冒頭でカラフが歌うアリアですが、この曲を聴いて感動しない人はいないでしょう この時ばかりは、いつも居眠りをしている隣席のオバサンも目をパッチリと開けて、ジョン・健・ヌッツォの歌うアリアに聴き入っていました

さて、この曲が終わった途端に、急いで会場を立ち去る人が居ました 明らかにコンサートの掛け持ちです。それを見て私は時計で時間を確かめました。17時5分前です。私の目論見ではこのコンサートは17時には終わるはずでしたが、まだラヴェルの「ボレロ」が残っています コバケンがどんなテンポで演奏するのか未知数だし、演奏だけならともかく話術に長けた朝岡氏のMCが入っているので、このままで行くと終演は17時半近くになってしまう可能性が高い 18時開演のサントリーホールでのヴェルディ「レクイエム」は100%途中休憩がないだろう。したがって遅刻は厳禁である 17時半に文京シビックを出てもコンサートにはぎりぎりで間に合うかも知れない しかし、それではプログラムの解説を読む時間もないまま演奏を聴くことになる。そういう聴き方はしたくない コンサートには精神的に余裕をもって臨みたい・・・と結論を出して、「ボレロ」を諦め、朝岡氏がコバケンと会話をしている間に会場を抜け出して、地下鉄でサントリーホールに向かいました 東京フィルの管楽器ソロのリレーによる「ボレロ」と、終演後にマイクで語る「コバケン節」が聞けないのは本当に 残念だったのですが、これも危機管理の一つです。コンサートをハシゴする時は、何を優先するかを短時間で判断して結論を出さなければなりません。要するに「何を捨てて、何を取るか」の選択です。今回は「ボレロ」を捨てて途中休憩のない「レクイエム」を取ったわけですが、後悔はしていません これからもこういうケースはあると思いますが、今回と同じ方針で臨みたいと思います

 

     

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