13日(日)その2。よい子は「その1」から読んでね。モコタロはそちらに出演しています
昨日18時からサントリーホールで東京交響楽団の第667回定期演奏会を聴きました プログラムはヴェルディ「レクイエム」です 出演はソプラノ=森谷真理、メゾ・ソプラノ=清水華澄、テノール=福井敬、バス=ジョン・ハオ(リアン・リの代演)、管弦楽=東京交響楽団、合唱=東響コーラス、指揮=ロレンツォ・ヴィオッティです
この曲はジュゼッペ・ヴェルディ(1813‐1901)が1874年に作曲した鎮魂ミサ曲です 1868年、ロッシーニの死に際して13人のイタリアの作曲家による「レクイエム」合作の企画があり、ヴェルディは最後の部分「われを解き放ちたまえ」を作曲しましたが、この時は演奏の機会が与えられませんでした 1873年に詩人・小説家のマンゾーニの死を追悼して他の部分を全曲完成し、1874年5月22日の一周忌にミラノのサン・マルコ教会でヴェルディ指揮ミラノ・スカラ座管弦楽団を中心とするオーケストラと合唱団によって初演されました
全体の構成は次の通りです
Ⅰ.「永遠の安息をお与えください」と「主よ、お憐みください」(レクイエム&キリエ)
Ⅱ.怒りの日(ディエス・イレ):「怒りの日」から「涙の日」までの10曲から成る。
Ⅲ.オフェルトリオ
Ⅳ.聖なるかな(サンクトゥス)
Ⅴ.神の子羊(アニュス・デイ)
Ⅵ.久遠の光が(ルクス・エテルナ)
Ⅶ.私をお救いください(リベラ・メ)
東響コーラスの混声合唱約150名がステージ後方にスタンバイします。女声陣は普段は上が白、下が黒の衣装ですが、曲目が「レクイエム」なので上下黒の衣装で統一しています オケはいつもの東響と同じで、左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスという並びです。コンマスは水谷晃。ソリストの4人が指揮者の左右にスタンバイします
全体の演奏を聴く限り、ヴィオッティの音楽作りは、最弱音から最強音までの振幅が大きいのですが、指揮は冷静沈着そのものです 第1曲「レクイエム」の冒頭は最弱音で始まり、第2曲「怒りの日」で大地を揺るがす最強音に達します
この曲は初演時から「オペラのようだ」とか「宗教曲らしくない」とか言われてきましたが、ヴェルディ自身は「オペラのように歌って欲しくない」という趣旨のことを語っています
プログラム冊子の「プログラム・ノート」に加藤浩子さんが次のように書いています
「ヴェルディの『レクイエム』は、おそらくイタリア人だからこそ書けた作品である 『これは祈りの音楽ではなく、神に要求する音楽』『ヴェルディは”レクイエム”を通じて神に問いかけている。解放して欲しい、けれど本当に解放されるのか、と』・・・筆者がこれまでインタビューしたイタリア人アーティストたちが本作について語った言葉だ」
これを読んで、やっとこの作品の主張している本質的なものが分かったような気がしました 前述の通り、ヴェルディはこの曲を作曲するに当たって、一番最初に作曲したのは最終曲「リベラ・メ」(解き放ちたまえ)でした その歌詞を読むと「私を解き放ってください、主よ、永遠の死から。その恐ろしい日、私を解き放ってください」となっています この部分を森谷真理さんのソプラノで聴いていて、『祈りの音楽でなく、神に要求する音楽』という言葉が腑に落ちました
森谷さんをはじめソリストの4人は絶好調でした この日の4人はオペラ的な歌唱を排し、純粋に宗教曲としてのアプローチで歌っていたと思います そして、特筆すべきは 楽譜なしで終始迫力のある合唱を聴かせてくれた東響コーラスの皆さんです 「怒りの日」の合唱は、腹の底にズッシリと響きました 東京交響楽団の面々はヴィオッティの指揮のもと水谷晃コンマスのリードにより渾身の演奏を展開しました
ローザンヌ出身のロレンツォ・ヴィオッティはまだ28歳の若さですが、これからの活躍が大いに期待される指揮者として注目しています