鳴かず飛ばずだった「オンライン診療」 新型コロナ感染拡大でにわかに注目

2020年10月11日 03時33分09秒 | 医科・歯科・介護


2020.3.30 19:27
 

【経済インサイド】

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、オンライン診療に注目が集まっている。診療所や病院に出向くことに躊躇(ちゅうちょ)する人も多いなか、これなら感染のリスクを避けながら、診察が受けられる。政府の規制緩和で普及が期待されていたものの、医療現場からの慎重姿勢もあって期待外れに終わっていた。にわかに注目された要因は、皮肉にも普及を妨げてきた「対面診療」をしないというオンライン診療の仕組みだった。

 オンライン診療をめぐっては、平成9年に「離島・僻(へき)地」などに限って認められていたが、27年に通知で僻地など限定ではないとの見解が示され、事実上、全面解禁となった。30年度の診療報酬改定では、「オンライン診療料」(月1回700円)などが創設され、保険適用が始まった。4月の診療報酬改定でオンライン診療の対象疾患が拡大され、環境は整いつつある。

 ただ、医療関係者の理解はこれからだ。2月1、2の両日、日本医師会が開いたシンポジウムでは、今村聡副会長が「オンライン診療はあくまで対面診療を補完するツールで、対面診療と同等のものとは言えない」と述べている。安易な拡大路線には、懐疑的な意見もある。オンライン診療の保険適用を申請している医療機関は、昨年春時点で全体のわずか1%にとどまっていた。

こうした状況とは別に、患者と医師が対面しないというデメリットを逆手にとった取り組みが注目されている。

 東京大医学部附属病院(東京都文京区)は4月1日、メドレーのオンライン診療システム「CLINICS(クリニクス)」を使ったセカンドオピニオン外来を始める。

 まず、通院中の医療機関からの紹介状を東大病院に郵送。クリニクスのアプリをカメラ・マイク付きパソコン、またはスマートフォンにダウンロードし、アカウント登録する。あとは診察予約をするだけ。循環器内科など東大病院の18診療科の専門医によるセカンドオピニオンが、オンラインで受けられる。診察料などはクレジットカードで引き落としとなる。

 セカンドオピニオンは、すでに受けた診断や治療方針について、納得を得るために、別の医師から見解を聞くこと。オンラインのセカンドオピニオンは、遠隔地の人にとっても専門医の意見が聞ける。

 さらに、新型コロナの感染拡大で、医療機関への一極集中に伴う2次感染のリスクを避ける目的でも、オンライン診療が役に立つ。

 AGREE(アグリー、茨城県つくば市)は、医師と24時間相談できるアプリ「LEBER(リーバー)」を開発した。通常は有料だが、4月10日まではコロナウイルスに関する相談に限り無料で利用できる。

アプリをダウンロード後、スマホの画面を通して、チャットボット形式で問診を受ける。2月12~29日に新型コロナ関連で279件の医療相談を受け、約66%の利用者が「相談をして不安が減った」という。

 経済産業省は3月31日まで、新型コロナウイルス感染症に関する緊急対応策の一環として、無料の健康相談窓口を設置。メドピア(東京都中央区)子会社のMediplat(メディプラット、同区)と無料通話アプリのLINE(ライン)子会社のラインヘルスケア(東京都新宿区)を窓口に採用した。

 対面診療を補完するツールとして、医療関係者からの信頼を得てきたオンライン診療。現場の医師不足の問題もある。今後は、医療サービスの行き届かない地域に質の良い医療をどう届けるかという視点からも、可能性を探ってもらいたい。(経済本部 松村信仁)


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