レイキャビク西街ひとり日誌 (Blog from Iceland)

北の小さな島国アイスランドはレイキャビクの西街からの、男独りブログです。

「生めよ、増えよ、地に満ちよ!」

2013-09-23 05:00:00 | 日記
アイスランドでは子供は天からの祝福です。もちろん世界のどこをとっても子供は祝福であるのでしょうが、現代では少子化を国是として掲げている国もありますし、いつどのタイミングで子を授かるかということは、おそらく多くの国の一般家庭でも真剣に考えられていることでしょう。

子供は祝福ではあるけれど「タイミングや生活条件を加味しての祝福」というのがとりわけ先進国では事実ではないでしょうか?

そのコンテクストで考えた場合、アイスランドでは昔風の意味で子供は祝福だ、という気風が残っていると思うのです。その理由は単純で小国意識の強いアイスランドでは、ひとりでも国民を増やしたいのです。

「生めよ、増えよ、地に満ちて地を従わせよ」これは旧約聖書の冒頭の天地創造の物語りの中の言葉です。旧約聖書などを読んでいても「子孫が増える」ということが大変重要なことと考えられていたことがわかります。子孫を増やすということが、文字通り一族郎党の運命に関わることだったのでしょう。

ちなみにこの国で昨年オギャーと生まれた赤ちゃんは総勢4.450人。アイスランドの人口は増加しています。

さてここから先がアイスランド的な話しです。

それならば子供に関することは全て良く考えられているのだろう、と思われるでしょうが、それがどうもそではないようで。

2008年の経済恐慌でもっともしわ寄せをくらったのは保健衛生及び医療機関と言われています。なぜかはわかりませんが、大幅な合理化(というか不合理化)やサービスの統廃合が行われました。

出産に関する機関を見ると、十年前にはきちんと登録された出産所が16ヶ所あったのですが、現在では半分の8ヶ所に激減しています。

登録された出産所というのはその提供できるサービスによってAからDまでの四段階に分かれています。トップのAはレイキャビクの総合病院のみ。Bは北部のアクレイリの病院。Cは帝王切開などの執刀もできる場所で三カ所。Dは助産婦さん主体でホームドクターが控えているところです。これも三カ所あります。

これらの出産所はレイキャビク近隣に四ヶ所、北のアクレイリに一ヶ所、北西部のフィヨルド地域に一ヶ所、東の果てに一ヶ所、そして夏の野外フェスティバルで有名なヴェストゥルマンナ諸島に一ヶ所です。

アイスランドで人が居住する地域は大体海辺の平野地帯で、言い換えるとアイスランドの島をぐるりと回る部分になります。実際に基幹国道もぐるりと島を囲んで通っています。

南東部の海岸線にホブンという町があるのですが、ここからの最寄りの出産所は東へ向かって何と270キロのネスコイプスターズルという町になってしまいます。西へ向かった場合はセルフォスという南部の町でそこまで450キロ。

いずれにしてもとても陣痛が始まってっから間に合う距離ではありません。実際に毎年間に合わずに国道上で生まれる赤ちゃんがいるとのこと。昨年は三人の赤ちゃんが「出生地: 国道上の車内」となりました。

普通の女性はそういうのは嫌なはずです。苦肉の策として出てきたのが、生まれてもおかしくない時期(38週目以降)にレイキャビクなりアクレイリなりに出て行ってそこに滞在して出産に備える、というものです。

もちろん病院には滞在できませんから、親戚などの家を頼っていくのでしょう。時には一ヶ月近くその状態で過ごす人もあるようです。

ひと言加えますと、ここでは助産婦さんを頼んで自宅で出産する、というのが十年ほど前から人気になってきていました。昨年も99人の赤ちゃんが自宅で生まれているとのことです。

それで思い出したのでもうひと言。以前プエルトリコから来ていて滞在許可で問題のあった女性がいました。すでに三人の子供がいて四人目がもうすぐ、という状況でした。

彼女とお腹の赤ちゃんだけが先に来ていて、ご主人と子供三人はまだ
母国。ところが滞在許可でもめてお金がなく、私やソーシャルワーカーの人は病院での出産費用をどこからひねりだそうかと苦心していました。

そしたら彼女は「自宅で自分で生むから、大丈夫」とのたまいます。そうは言っても、と説得にかかると「あたし、三人目は町の通りで生んだわ。なにビビってんの?」小柄で可愛らしい女性でしたが、やはり母は強いのだ。タジタジ...

結末は助産婦さんが無事に赤ちゃんを取り上げてくれました。ホッ...


応援します、若い力。Meet Iceland

藤間/Tomaへのコンタクトは:nishimachihitori @gmail.com

コメント
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