先週の月曜日10月24日はKvennafridagurと呼ばれる日でした。「女性は休暇の日」というのが直接の意味ですが、これでは真意が伝わりません。「女性のストライキ記念日」とでも意訳した方が、そのニュアンスを正しく伝えてくれるだろうと思います。
今でこそアイスランドは「男女平等の度合いが一番高い国」の第一位に何年も連続で挙げられていますが、昔からそうだったわけではもちろんありません。1975年10月24日の「女性の一斉職場放棄」つまり女性版ゼネストのような権利闘争は、男女同権志向のための大きな一里塚となりました。

1975年10月24日の「女性ゼネスト」を報じる新聞
Myndin er ur Stundin.is
この日の前後に、どのような要求やアピールがなされたか、とうような資料はもちろんたくさん現存します。その中に「なぜ女性は休みなのか」というアピールがあります。「なぜストライキをするのか」という意味です。主だったものを挙げてみたいと思います。
「なぜなら、ペイの悪い仕事、評価されない仕事について、特に女性が求人されているから」
「なぜなら、給与の交渉をする委員会のナショナルセンターの代表に、女性がひとりも入っていないから」
「なぜなら、商店や事務所で働く女性の平均給与が、同職の男性の給与平均の73%しかないから」
「なぜなら、農婦(「農夫」ではありません)は、農業組合の正規組員として認められていないから」
「なぜなら、『専業主婦の仕事は何か?』という問いに対する一般的な答えが『ただ家にいるだけ』であるから」
まだ他にもたくさんあるのですが、これだけを見てもゼネストにはそれなりの理由と背景があったことがわかります。
私が個人的に興味深いのは、労働組合が女性の権利を軽視する側に立っていたのがはっきり見て取れることと、専業主婦の労働に対する、社会的経済的評価が求められていることです。
さて、この女性ゼネストは、結果としてレイキャビクのダウンタウンに二万五千人の参加者を得て、「最も参加者が多かった野外集会」のひとつに数えられています。もちろん、レイキャビクだけではなく、他の町や村でも同様のストライキと集会が多々持たれました。
女性ゼネストは外国メディアの関心も引き、世界規模で報道され、外国の女性権利団体などからも支持を得たようです。
そしてこの女性ゼネストの評価ですが、内外の社会の評価では「女性側の完全勝利」だったとのこと。国連などは「1975年という年を、特に女性の権利に貢献した年として覚える」という決議までしたそうな。実際に何がこのゼネストで直接に変わったか? までは調べ切れていません。スミマセン(相変わらず詰めが甘い(^-^;)。
そのためアイスランドでは、毎年10月24日はこの出来事を記念する日とされてきました。ただ、これまで1975年以降三回、職場放棄を含む統一行動を取る日として呼びかけられました。1985年、2005年、2010年です。先の二回は1975年の十周年、二十周年だったのかもしれませんが、2010年は経済恐慌直後という状況があったことでしょう。
そして今年がそのような職場放棄を含む統一行動が呼びかけられた四回目の10月24日となったわけです。(1975年を含めれば五回目)
先週の月曜日には、市内の多くの女性が午後2時38分に一斉に職場を離れ、ダウンタウン中心のオイストル広場での集会に向かいました。幼稚園などでは「子供を2時半までに迎えに来て欲しい。3時からストに参加するから」というリクエストが園児の親に出されたそうです。
私も2時10分過ぎに、郵便局へ小包みを受け取りに行ったのですが、すでに閉まってしまっていました。ガクッ...
今回も大きな集会になり、このオイストル広場に限っても7-8000人が参加したとのことです。

四十一年後の集会 やはり大勢が押しかける
Myndin er ur Visir.is/STEFAN
さて、今回の集会の訴えの主眼点は「ジェンダー差別に基いた給与差別を是正せよ!」ということだったと思います。他にも多種多様なアピールがあったようですが、性の違いによる給与格差がなかなかなくならないことへの不満は相当あるように思われます。
今回、女性労働者が一斉に午後2時38分に職場放棄をしたのは、女性の平均収入が、男性のそれの70,3%しかないことへの抗議で、少ない29,7%分を定時の労働時間に換算すると、女性は2時38分までの給与しかもらっていない、ということでした。
女性の給与は男性の約七割、というのは全体の平均から言っているようですが、VRという商工会議所と労働組合を合わせたような団体があります。影響力のあるメジャーな団体です。そこのリサーチによると、傘下にある労働者(商店および事務所関連労働者)の年間総収入のジェンダー間での格差は、2014年が13,3%、 2015年が14,2%、そして2016年が14%。ここ二年は僅かですが後退。しかし、30%というような差はないようです。
この「差」を、給与格差に影響を与えるような要因、例えば年齢、経験年数、職種、教育度、シフトの有無等なのですが、これらの要因の影響を考慮して、「差」を再評価します。
「例えば勤務にシフトの割合が多い男性の方が、平均して女性よりも手当てが多い、という職種も実際にありますから、その点を考慮して比較を公正化するわけです。
そのように、いろいろな要因を考慮した上で、なお説明できないで存在する給与格差。それが「ジェンダーに拘束された格差」と呼ばれるものです。「性の違いによる以外には理由付けされ得ない」格差として認識されるわけです。
この「ジェンダーに拘束された給与格差」が2014年には6,0%だったのですが、2015年には10,6%、2016年も10%ということで、これもここ二年は僅かに後退しています。
まあ、確かに同じ仕事をしていて「女性だから」というだけで給与が男性より低かったら頭にきますよね。私だって「外国人だから」と給与が低かったら納得できないでしょうから。
というわけで、アイスランドでは男女の権利は同等に近着いていますが、まだまだ完全ではありません。給与以外にも差別の場はいくらでもありますからね。ピンクのプラカードを高く掲げた戦いはまだまだ続くものと思います。
大切な戦いです。
応援します、若い力。Meet Iceland
藤間/Tomaへのコンタクトは:nishimachihitori @gmail.com
Home Page: www.toma.is
今でこそアイスランドは「男女平等の度合いが一番高い国」の第一位に何年も連続で挙げられていますが、昔からそうだったわけではもちろんありません。1975年10月24日の「女性の一斉職場放棄」つまり女性版ゼネストのような権利闘争は、男女同権志向のための大きな一里塚となりました。

1975年10月24日の「女性ゼネスト」を報じる新聞
Myndin er ur Stundin.is
この日の前後に、どのような要求やアピールがなされたか、とうような資料はもちろんたくさん現存します。その中に「なぜ女性は休みなのか」というアピールがあります。「なぜストライキをするのか」という意味です。主だったものを挙げてみたいと思います。
「なぜなら、ペイの悪い仕事、評価されない仕事について、特に女性が求人されているから」
「なぜなら、給与の交渉をする委員会のナショナルセンターの代表に、女性がひとりも入っていないから」
「なぜなら、商店や事務所で働く女性の平均給与が、同職の男性の給与平均の73%しかないから」
「なぜなら、農婦(「農夫」ではありません)は、農業組合の正規組員として認められていないから」
「なぜなら、『専業主婦の仕事は何か?』という問いに対する一般的な答えが『ただ家にいるだけ』であるから」
まだ他にもたくさんあるのですが、これだけを見てもゼネストにはそれなりの理由と背景があったことがわかります。
私が個人的に興味深いのは、労働組合が女性の権利を軽視する側に立っていたのがはっきり見て取れることと、専業主婦の労働に対する、社会的経済的評価が求められていることです。
さて、この女性ゼネストは、結果としてレイキャビクのダウンタウンに二万五千人の参加者を得て、「最も参加者が多かった野外集会」のひとつに数えられています。もちろん、レイキャビクだけではなく、他の町や村でも同様のストライキと集会が多々持たれました。
女性ゼネストは外国メディアの関心も引き、世界規模で報道され、外国の女性権利団体などからも支持を得たようです。
そしてこの女性ゼネストの評価ですが、内外の社会の評価では「女性側の完全勝利」だったとのこと。国連などは「1975年という年を、特に女性の権利に貢献した年として覚える」という決議までしたそうな。実際に何がこのゼネストで直接に変わったか? までは調べ切れていません。スミマセン(相変わらず詰めが甘い(^-^;)。
そのためアイスランドでは、毎年10月24日はこの出来事を記念する日とされてきました。ただ、これまで1975年以降三回、職場放棄を含む統一行動を取る日として呼びかけられました。1985年、2005年、2010年です。先の二回は1975年の十周年、二十周年だったのかもしれませんが、2010年は経済恐慌直後という状況があったことでしょう。
そして今年がそのような職場放棄を含む統一行動が呼びかけられた四回目の10月24日となったわけです。(1975年を含めれば五回目)
先週の月曜日には、市内の多くの女性が午後2時38分に一斉に職場を離れ、ダウンタウン中心のオイストル広場での集会に向かいました。幼稚園などでは「子供を2時半までに迎えに来て欲しい。3時からストに参加するから」というリクエストが園児の親に出されたそうです。
私も2時10分過ぎに、郵便局へ小包みを受け取りに行ったのですが、すでに閉まってしまっていました。ガクッ...
今回も大きな集会になり、このオイストル広場に限っても7-8000人が参加したとのことです。

四十一年後の集会 やはり大勢が押しかける
Myndin er ur Visir.is/STEFAN
さて、今回の集会の訴えの主眼点は「ジェンダー差別に基いた給与差別を是正せよ!」ということだったと思います。他にも多種多様なアピールがあったようですが、性の違いによる給与格差がなかなかなくならないことへの不満は相当あるように思われます。
今回、女性労働者が一斉に午後2時38分に職場放棄をしたのは、女性の平均収入が、男性のそれの70,3%しかないことへの抗議で、少ない29,7%分を定時の労働時間に換算すると、女性は2時38分までの給与しかもらっていない、ということでした。
女性の給与は男性の約七割、というのは全体の平均から言っているようですが、VRという商工会議所と労働組合を合わせたような団体があります。影響力のあるメジャーな団体です。そこのリサーチによると、傘下にある労働者(商店および事務所関連労働者)の年間総収入のジェンダー間での格差は、2014年が13,3%、 2015年が14,2%、そして2016年が14%。ここ二年は僅かですが後退。しかし、30%というような差はないようです。
この「差」を、給与格差に影響を与えるような要因、例えば年齢、経験年数、職種、教育度、シフトの有無等なのですが、これらの要因の影響を考慮して、「差」を再評価します。
「例えば勤務にシフトの割合が多い男性の方が、平均して女性よりも手当てが多い、という職種も実際にありますから、その点を考慮して比較を公正化するわけです。
そのように、いろいろな要因を考慮した上で、なお説明できないで存在する給与格差。それが「ジェンダーに拘束された格差」と呼ばれるものです。「性の違いによる以外には理由付けされ得ない」格差として認識されるわけです。
この「ジェンダーに拘束された給与格差」が2014年には6,0%だったのですが、2015年には10,6%、2016年も10%ということで、これもここ二年は僅かに後退しています。
まあ、確かに同じ仕事をしていて「女性だから」というだけで給与が男性より低かったら頭にきますよね。私だって「外国人だから」と給与が低かったら納得できないでしょうから。
というわけで、アイスランドでは男女の権利は同等に近着いていますが、まだまだ完全ではありません。給与以外にも差別の場はいくらでもありますからね。ピンクのプラカードを高く掲げた戦いはまだまだ続くものと思います。
大切な戦いです。
応援します、若い力。Meet Iceland
藤間/Tomaへのコンタクトは:nishimachihitori @gmail.com
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