#METOO運動については皆さんもご承知のことと思います。 昨年の秋頃から聞かれるようになったものだと記憶していますが、女性たちがセクハラ被害の体験を隠さずに公表することによって、その現実の醜さを伝え始めた運動ですね。
最初はハリウッドの有名な女優さんたちが、監督やプロデューサーたちの、性的に傍若無人な振る舞いを告発したことによったと思います。正直言って、あまり関心を持ってフォローしていなかったので、誰がその女優さんだったのかすら、はっきりとは覚えていません。
日本ではこのような運動は広まったのでしょうか?ハリウッドからしばらくして、スウェーデンなどでも#METOOが言われるようになった、というニュースを見ました。
その後、アイスランドにも運動は伝播してきました。芝居の監督が告発されたり、女子スポーツのコーチだかが、選手らによって告発されたりしていました。それらの選手の中にはナショナルチームに入っている選手もあったようです。
今書きましたように「始めはそれほど関心がなかった」というのは、ハリウッドのショービジネスとか、私にとってはまったく現実味のないくらい離れた社会ですし、はっきり言って誰が本当のことを言っているのかさえ、そう簡単には信じられない気がしたからです。名を売るためなら何だってあり、の世界のように思えますし。偏見かもしれないことは認めますが、確かめようがありません。
それが、だんだん身近で現実ものある世界へ移ってきたわけです。で、ついに私が住む現実世界にまで#METOOが入ってきました。
約一週間前の先週の月曜日、アイスランド国民教会の女性牧師の代表が、牧師としての職務を遂行する環境において、自らが体験したセクハラの実態の描写と共に、教会としての対セクハラの取り組みを強めるよう監督に要望書を手渡したのです。65人の女性牧師の連名です。ちなみに教会の監督も女性ですし、監督はとても肯定的にこの要望書を受け取りました。
要請書の内容は、まあ「こういう状況だから、改善に取り組んで欲しい」というごく一般的なものですが、問題はそれに付随して手渡されたセクハラ体験談です。64の体験談が語られているのです。
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アグネス監督に要望書を渡す女性牧師の代表
Myndin er ur Ruv.is/GunarJonSigurdsson
ニュースはもちろん、この教会女性牧師による#METOOを取り上げましたし、その64の体験談もすべて掲載されました。
幸いなことに、実際にレイプ被害にあった、というような体験はありませんでした。だからなかったんだ、という風にはなりませんけど。ですが、個々の体験の描写は生々しいですし、「まさか?」というようなものもかなりありました。
一番私が怖く感じた話しを紹介しておきます。
それはその女性牧師が、悩み事の相談のために壮年男性と面談室に入った時のことです。その男性はどうやらクスリをやっていたようで、「女性牧師はセクシーになってきている」とか「あなたはとても良い香りがする」とかいやらしい調子で話し始めました。
「どうしようか?」と考えていると、悪いことに夕方。ドアが閉まり、教会のハウスキーパーが帰って行ってしまった音が聞こえます。これで教会の中にいるのはそのハイな男と女性牧師だけ。怖くなったそうです。幸いに、その男はしばらくするとそのまま帰ったそうですが。
ひどい話しはかなりありましたが、私はこの話しが一番怖く感じました。映画の中のヤバイシーンみたいだからです。でも「なぜ怖く感じるのか?」という点を振り返ってみると、自分でも同じようなことを体験することが何回かあったからです。
もちろん、私が体験した時はセクハラ関係ではなくて「アブナイかもしれない奴」と一緒にいるという状況でしたが。見知らぬ人とふたりだけになる、という状況では常に用心が必要になります。
その他、抱きつかれる、触られる、不適切なキスをされる、などというのは相当数の女性牧師が体験しているようです。役員会の長が、女性牧師が自宅に用事があって出向いたのを機会に無理やり引き入れようとした、とか、女性牧師の自宅に夜半に訪ねてきて入り込もうとした、とか、まあ、こういう野郎が本当にいるんだ、と呆れる部分は相当ありました。
そして、数的にはそれらより多いのは「女性蔑視」の発言と振る舞い。ここには相当数の男性牧師によるものが含まれています。「お前らは所詮はアシスタントだ」的な発言、要求が相当蔓延しているようです。
そして、もうひとつのタイプは、組織としてのシステムに付随している女性蔑視、というか女性への偏見。これは例えば、首都地区での主任牧師は圧倒的に男性が占めてきたことに見られます。「女性はアシスタント」の蔑視が、実際に女性の主任牧師進出を妨げてきたのです。
これらの64の体験談、全部を細かく読み終わったわけではないのですが、#METOOはここでは、性的関係を強要されるということもありますが、女性蔑視一般への告発も含んでいる感があります。
そして強く感じたことは、これらの女性牧師の「蔑視」体験は、私たち移民が受ける「蔑視」体験と異常に似ているということでした。男性女性を問わず、移民が教会内にとどまらず、アイスランドの社会全般で遭遇する「蔑視」です。
まあ、移民の場合には、(女性の場合は別として)性的な嫌がらせはないでしょうが、その代わりに「暴力」そのもの対象となることがあります。
それを別とすれば、「お前は所詮アシスタントだ」的な女性蔑視は、移民の場合にもそのまま「お前は所詮二級市民だ」とい蔑視に置き換えられます。女性牧師の体験談にもあったのですが「まるで私が何も自分でできない小さな子供であるかのように扱う」というのも、移民がよく体験するところです。
ちなみにこの点に関しては私も散々経験してきました。教会の中で。アイスランド人の男性牧師連中から。女性に媚びるわけではないですけね、女性牧師からそのような「蔑視」を受けたことはほとんどありません。
最後の「システムに組み込まれた蔑視」も同じ。「外国人の名前を持っていると職にありつけない」「賃貸のオーナーは、外国人だとわかると『もう貸してしまった』と必ず言う」というような話しは年中耳にしますし、相当数事実です。
メディアで見聞きする限り、おそらく障害者の人たちや精神的な疾患のある人たちにしても、同じように自らの#METOOバージョンがあるのではないかと想像します。
#METOO運動には、相当批判的な人たちもいるようですね。運動そのものが良いのか悪いのかを判断するには、全体を知る必要があるでしょうから、私個人としては「良い面は確かにある。けれどマイナスな部分もあるかもしれない」としか言えません。
ですが、国民教会内での女性牧師さんたちによる#METOOに関しては、私はこれを真面目に受け取りますし、これらの体験談にあるような現状について嘆かわしく感じるとともに、憤りも覚えます。
これらの女性牧師の中には、私が個人的に仲の良い人も大勢ますからね。彼女たちが、いやらしい男どものためにセクハラで嫌な思いをするようなことは、絶対にあって欲しくありません。私の周囲に限って考えれば、#METOOはマイナスよりはプラスの方がずっと多いもののようです。
藤間/Tomaへのコンタクトは:nishimachihitori @gmail.com
Home Page: www.toma.is
最初はハリウッドの有名な女優さんたちが、監督やプロデューサーたちの、性的に傍若無人な振る舞いを告発したことによったと思います。正直言って、あまり関心を持ってフォローしていなかったので、誰がその女優さんだったのかすら、はっきりとは覚えていません。
日本ではこのような運動は広まったのでしょうか?ハリウッドからしばらくして、スウェーデンなどでも#METOOが言われるようになった、というニュースを見ました。
その後、アイスランドにも運動は伝播してきました。芝居の監督が告発されたり、女子スポーツのコーチだかが、選手らによって告発されたりしていました。それらの選手の中にはナショナルチームに入っている選手もあったようです。
今書きましたように「始めはそれほど関心がなかった」というのは、ハリウッドのショービジネスとか、私にとってはまったく現実味のないくらい離れた社会ですし、はっきり言って誰が本当のことを言っているのかさえ、そう簡単には信じられない気がしたからです。名を売るためなら何だってあり、の世界のように思えますし。偏見かもしれないことは認めますが、確かめようがありません。
それが、だんだん身近で現実ものある世界へ移ってきたわけです。で、ついに私が住む現実世界にまで#METOOが入ってきました。
約一週間前の先週の月曜日、アイスランド国民教会の女性牧師の代表が、牧師としての職務を遂行する環境において、自らが体験したセクハラの実態の描写と共に、教会としての対セクハラの取り組みを強めるよう監督に要望書を手渡したのです。65人の女性牧師の連名です。ちなみに教会の監督も女性ですし、監督はとても肯定的にこの要望書を受け取りました。
要請書の内容は、まあ「こういう状況だから、改善に取り組んで欲しい」というごく一般的なものですが、問題はそれに付随して手渡されたセクハラ体験談です。64の体験談が語られているのです。
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アグネス監督に要望書を渡す女性牧師の代表
Myndin er ur Ruv.is/GunarJonSigurdsson
ニュースはもちろん、この教会女性牧師による#METOOを取り上げましたし、その64の体験談もすべて掲載されました。
幸いなことに、実際にレイプ被害にあった、というような体験はありませんでした。だからなかったんだ、という風にはなりませんけど。ですが、個々の体験の描写は生々しいですし、「まさか?」というようなものもかなりありました。
一番私が怖く感じた話しを紹介しておきます。
それはその女性牧師が、悩み事の相談のために壮年男性と面談室に入った時のことです。その男性はどうやらクスリをやっていたようで、「女性牧師はセクシーになってきている」とか「あなたはとても良い香りがする」とかいやらしい調子で話し始めました。
「どうしようか?」と考えていると、悪いことに夕方。ドアが閉まり、教会のハウスキーパーが帰って行ってしまった音が聞こえます。これで教会の中にいるのはそのハイな男と女性牧師だけ。怖くなったそうです。幸いに、その男はしばらくするとそのまま帰ったそうですが。
ひどい話しはかなりありましたが、私はこの話しが一番怖く感じました。映画の中のヤバイシーンみたいだからです。でも「なぜ怖く感じるのか?」という点を振り返ってみると、自分でも同じようなことを体験することが何回かあったからです。
もちろん、私が体験した時はセクハラ関係ではなくて「アブナイかもしれない奴」と一緒にいるという状況でしたが。見知らぬ人とふたりだけになる、という状況では常に用心が必要になります。
その他、抱きつかれる、触られる、不適切なキスをされる、などというのは相当数の女性牧師が体験しているようです。役員会の長が、女性牧師が自宅に用事があって出向いたのを機会に無理やり引き入れようとした、とか、女性牧師の自宅に夜半に訪ねてきて入り込もうとした、とか、まあ、こういう野郎が本当にいるんだ、と呆れる部分は相当ありました。
そして、数的にはそれらより多いのは「女性蔑視」の発言と振る舞い。ここには相当数の男性牧師によるものが含まれています。「お前らは所詮はアシスタントだ」的な発言、要求が相当蔓延しているようです。
そして、もうひとつのタイプは、組織としてのシステムに付随している女性蔑視、というか女性への偏見。これは例えば、首都地区での主任牧師は圧倒的に男性が占めてきたことに見られます。「女性はアシスタント」の蔑視が、実際に女性の主任牧師進出を妨げてきたのです。
これらの64の体験談、全部を細かく読み終わったわけではないのですが、#METOOはここでは、性的関係を強要されるということもありますが、女性蔑視一般への告発も含んでいる感があります。
そして強く感じたことは、これらの女性牧師の「蔑視」体験は、私たち移民が受ける「蔑視」体験と異常に似ているということでした。男性女性を問わず、移民が教会内にとどまらず、アイスランドの社会全般で遭遇する「蔑視」です。
まあ、移民の場合には、(女性の場合は別として)性的な嫌がらせはないでしょうが、その代わりに「暴力」そのもの対象となることがあります。
それを別とすれば、「お前は所詮アシスタントだ」的な女性蔑視は、移民の場合にもそのまま「お前は所詮二級市民だ」とい蔑視に置き換えられます。女性牧師の体験談にもあったのですが「まるで私が何も自分でできない小さな子供であるかのように扱う」というのも、移民がよく体験するところです。
ちなみにこの点に関しては私も散々経験してきました。教会の中で。アイスランド人の男性牧師連中から。女性に媚びるわけではないですけね、女性牧師からそのような「蔑視」を受けたことはほとんどありません。
最後の「システムに組み込まれた蔑視」も同じ。「外国人の名前を持っていると職にありつけない」「賃貸のオーナーは、外国人だとわかると『もう貸してしまった』と必ず言う」というような話しは年中耳にしますし、相当数事実です。
メディアで見聞きする限り、おそらく障害者の人たちや精神的な疾患のある人たちにしても、同じように自らの#METOOバージョンがあるのではないかと想像します。
#METOO運動には、相当批判的な人たちもいるようですね。運動そのものが良いのか悪いのかを判断するには、全体を知る必要があるでしょうから、私個人としては「良い面は確かにある。けれどマイナスな部分もあるかもしれない」としか言えません。
ですが、国民教会内での女性牧師さんたちによる#METOOに関しては、私はこれを真面目に受け取りますし、これらの体験談にあるような現状について嘆かわしく感じるとともに、憤りも覚えます。
これらの女性牧師の中には、私が個人的に仲の良い人も大勢ますからね。彼女たちが、いやらしい男どものためにセクハラで嫌な思いをするようなことは、絶対にあって欲しくありません。私の周囲に限って考えれば、#METOOはマイナスよりはプラスの方がずっと多いもののようです。
藤間/Tomaへのコンタクトは:nishimachihitori @gmail.com
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