レイキャビク西街ひとり日誌 (Blog from Iceland)

北の小さな島国アイスランドはレイキャビクの西街からの、男独りブログです。

人生は塩漬けのタラ?

2013-03-18 05:00:00 | 日記
私がオフィスを置いているレイキャビクの教会では、...っていう前に一度きちんと記した方がいいかもしれませんね。私はアイスランド福音ルーテル教会というキリスト教会の牧師で、その中のネス教会というところに現在は巣食っています。

で、そのネス教会では復活祭(パウスカー)前のこの時期の毎週金曜日に、サルトフィスクルという塩漬けの魚の料理を提供してくれます。教会にカフェテリアが付いていて,普段の昼食はスープにパンなのですが、この時期には金曜日に限って塩漬け魚料理が出るのです。

先週の金曜日も15人くらいの外部の人が、それを食べる目的でいらしていました。この塩漬けの魚を主体としたレシピを全部まとめて「サルト(塩)フィスクル(魚)」と呼んでいます。ですから、いろいろな料理の仕方があります。
基本的には煮て食すか、オーブンで焼いて食すかの二通りのようですが。

なぜこの時期にサルトフィスクルを食べるのかというと、この復活祭前のファスタという約一月半は肉を断つ、という風習があり、これはカトリック圏では特に強い伝統のようです。(アイスランドの教会も16世紀後半まではカトリックでしたが、それ以降はルター派という新教の教会になりました)

そういう中で、何世紀も前に誰かが塩漬けの魚料理は肉料理の替わりに食べるには十分においしい、ということを発見したようです。ものの本によりますとイタリアではある時期、塩漬け魚の値は牛肉に匹敵したそうです。

ここアイスランドでは絶肉の習慣も強くは残っていないのですが、この機会を利用してサルトフィスクルとそのアイスランドでの地位?を見直そう、というのがネス教会の主旨のようです。

さて、サルトフィスクルの主流はなんといってもタラです。昔はオヒョウもかなりあったらしいのですが、それでもタラが主役。そしてタラは北の海の産物で、南の海では取れないらしいのです。

と、いうわけでアイスランドでは17世紀の頃より、せっせ、せっせとタラの塩漬けを作り、ヨーロッパへ輸出してきたのです。これは1930~40年頃にピークに達しましたが、戦後は冷蔵、冷凍技術の発達、あるいは運輸時間の短縮などのために保存食としての必要性が薄れ、衰退してしまいました。

ここで面白いのは、アイスランド人自身はごく最近になるまで、そんなにサルトフィククルを食べることはなかったらしい点です。作り過ぎてウンザリだったのでしょうか?



最近、逆輸入レシピで人気上昇中のサルトフィスクル
Myndin er úr Gunnar.is

以前「秘密のケンミンSHOW」で長野の人が大好きな「イカ刺し」という名称を持つ塩漬けイカを紹介していました。海のない長野では貴重な海の幸ということなのですが、これを製造しているのは確か富山県。で、富山産の「実は塩漬けイカのイカ刺し」は100%長野へ出荷されているということでした。

私は長いこと、サルトフィスクルはアイスランドの伝統保存料理なのだろうと思っていたのですが、それはもっぱら売るためのものであり、食べるためではなかったという訳です。

それを最近では食べるようになってきているらしく、これも流行?の逆輸入のようです。ただ、これまでも全く食べなかったわけではないらしいのですが、伝統的レシピは「煮て、これも煮たジャガイモと一緒にバターで食べる」という超シンプル。それはそれで美味しそうでもあります。(刺身類だってレシピとしては限りなく単純ですものね)

ノーベル文学賞を受けた作家ラクスネスの小説「サルカ・ヴァスカ」で主人公のサルカ(女性)に「たとえ全てが落ち着くところに落ち着いても、生活の中では塩漬けタラが一番(大切)なのであって、夢見事ではない」とう台詞があります。

サルカは漁の町の女性で、この言葉の裏には貧しい時代のアイスランドで、漁業に関わる人たちがそれこそ仕事漬けで暮らしていたという背景があるのだということです。

「人生は塩漬けのタラだ」かなりしょっぱいですね。



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番宣です 「地球アゴラ」NHK BS1 見てください

2013-03-15 05:00:00 | 日記
NHK BS1に「地球アゴラ」という番組があります。正直言って、最近までこの番組のことは全く知らなかったのですが、世界各地に住む日本の方々とスタジオをスカイプで結ぶという趣向の番組だそうです。

日本では国内旅行ものの番組(温泉巡り+ご当地グルメ)も人気ありますが、海外探訪ものもとても多いですよね。日本人の旅の楽しみ方の一部分なのでしょう。アイスランドも時々番組のターゲットになっているようです。昨秋は「世界不思議発見」が来たことはブログにも書きました。竹内海南江さんも来ていたというのに、知らなかった...(*_*)

二月の末にはNHK総合の「地球イチバン」でもアイスランドが扱われたそうです。残念ながら番組はまだ見れていません。温泉がメインだったようですが、いらしたレポーターが益子直美さん。

若い皆さんにはお笑いタレント?系のおばさんと写るのでしょうが、ワタシ的には日立武蔵全盛期に立ち向かったイトーヨーカドーの「若鮎」アタッカーです。その頃まだ十代でとても可愛くて、要するにかなりファンでした。いや、大人の雰囲気の今も超素敵ですけどね。

その益子さんにも20年余のタイムラグを経ながらも遭遇失敗。残念です...(*_*) この小さな国では、事前にインフォがあれば必ず遭遇できるはずなのですが。テレビロケ班もガードが固いか?

さて、この週末の日曜日にもアイスランドがからむ番組があります。それがNHK BS1の「地球アゴラ」です。実は一ヶ月くらい前に、この番組の制作担当の方から連絡をいただき、これまで取材協力というものをしてきました。

テレビの取材協力の依頼はこれまでも何回かあったのですが、いずれも「こんなところに日本人」的な超ワンパターン発想ばかりで、結果あまりお手伝いできることがありませんでした。

「こんなところ」に関して一言付け加えると、灼熱の38度のコンクリート尽くしの往来でネクタイにスーツで歩かねばならないようなところの方が「こんなところ」ではないかと思いますけどね、ワタシは。これは余談。

今回の「地球アゴラ」は扱う視点がかなり面白く「それはきちんと紹介できたら面白いだろうな」というような企画だったので、いろいろとお手伝いすることができました。どんなテーマかを言ってしまっては面白くありませんから、それは秘密です(というほどのことでもないですが)。

取材協力の過程で、私自身いろいろ調べてみなければならないことがありました。結構いい勉強になりましたよ。加えて取材中に面白いエピソードもありましたし。それらについての事柄も放送終了後にブログで書いていってみたいと思っています。

放送予定 「「小さな国の世界一」

NHK BS1「地球アゴラ」日曜夜10時。(再放送は翌日曜24日午後5時、またはNHK ワールドプレミア日本時間18日午前4時)

ぜひ見てみてください。お願いします。肝心なことはですねえ、ワタシもチラッと出るはずなことなんです。v(^_^)



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Ferming - フェルミング

2013-03-13 05:00:00 | 日記
これまでも何回か書きましたが、キリスト教文化圏ではクリスマスと並んで復活祭(イースター)という大きな祭日があります。アイスランド語では「パウスカー」と言います。

パウスカーはクリスマスのように日が決まっておらず、陰暦(月の動き)に拠るため毎年一定期間内で日が動きます。今年のパウスカーは三月の三十一日になります。

そのパウスカーに相前後して行われるもうひとつの教会関連の行事があります。それは堅信礼と呼ばれ、英語ではコンファメイション、アイスランド語ではフェルミングと言います。

日本の皆さんの多くはキリスト教的な行事には馴染みが薄いかと思いますが、日本で教会に通っていらっしゃる方にとっても、このアイスランド(または多くのヨーロッパ諸国)のフェルミングは不可思議?なものに思えるのではないかと考えます。というのは、これが何十人という単位の集団で執り行われるからです。

堅信礼とは何か?ということを非常に簡単に説明します。ヨーロッパはキリスト教文化圏ですので、多くの人が赤ちゃんの時にキリスト教徒になる「洗礼式」というものを授かります。

ところがこれは赤ちゃんの時に親の意向でなされるものですから、個人の自発的決心というものではない。そこで物心ついて、自分で決心ができるようになってから「私はキリスト教徒です」と確認するために儀式が堅信礼なのです。

で、伝統的にここアイスランドではその分別がつく年頃が14歳とされ、毎年その年に14歳となる子供たちがこの儀式に参加するようになったのです。アイスランドはこの堅信礼(フェルミング)の参加率がいまだに高く、七割以上の14歳の子供たちがこの儀式に参加します。

ということで、この時期は街なかもフェルミング・ムードになります。パウスカーの前週あたりからフェルミングが始まります。人口の多いレイキャビクの教会では一回では終了できす、パウスカーを挟んで何週かに分けて行います。

このフェルミングは多少「元服式」的な意味合いも持っていて、「人生の大事な決断を下せる年齢になった」ということを承認する意味も含まれています。そのため、フェルミングはかなり厳粛な儀式であって真面目に受け取られます。フェルミングを受ける時には親戚縁者がこぞって参集し、式後にはパーティーが催され、沢山のプレゼントが山積みになります。(そっちの方が信仰心より問題だ、という諸君もいますよ、もちろん)



私のいるネス教会でのフェルミングより

アイスランドでは、このフェルミングに与るためには復活祭に先立つこと約七ヶ月前の前年の晩夏から始まる「堅信プログラム」に参加し、授業を受けたり、グループワークに参加したり、定期的に教会の礼拝に参加する必要があります。

私が現在イソウロウしている教会では、八月中旬にフェルミングのための一週間集中コースからこのプログラムが始まり、私も講師として参加します。

面白い、というか毎年まざまざと見せつけられる現実は、14歳という年齢の時点でどれだけ男の子と女の子に成長の違いがあるかということです。女子陣の中にはメイクをし(こちらでは禁止事項ではありません)アクセサリーをぶらさげてグラビアアイドル然としている子さえ多いです。

それに対して、男の子たちは「キミ、小学校何年?」と訊きたくなるようなのがほとんどです。平均体格は女子がはるかに勝ります。精神年齢も?劣る男の子たちはそれでも虚勢を張ってえらぶるのですが、やればやるほど「おこちゃまぶり」を振り撒いているようで。これは個人の責任ではなく、生理学上の法則なのでしょう。

それに関連して思い当たったのですが、熟女「マチュアな女性」とは魅力的な雰囲気ですが(ワタシ的には)、「成熟した男性」というのは自己矛盾的な言葉というか、「そんなのいるか~?」という気がしてしまうのですが、どんなもんでしょうね?

オトコってどこか成長しきれないでしょ?自分を基準にして周りを測っては傲慢かもしれませんが、ワタシなんざ大学生の頃以来一歩も進歩も成長もしていない気がしますよ。歳のわりに「若い」のではなくて、「未成長」なんです...


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アイスランド発 ガンバレNippon!

2013-03-11 05:00:00 | 日記
二年前の金曜日の朝、オフィスに着いてマックを開けた時は驚きました。あのような大災害が起こりえると本気で考えたことはありませんでしたし、それをいきなり目の前の映像に映し見るということはショック以外の何ものでもありませんでした。

もう二年が経つのですね。東北地方太平洋沖大震災で犠牲になられた方々に深い哀悼の気持ちを示したいと思います。また直接間接に大きな被害を被られた方々にも心よりのお見舞いを申し上げます。

私はその翌々日の日曜日に教会でお話しをすることになっていたのですが、金曜土曜は何も考えることができず、ただネットの映像を見入っていたと思います。かろうじて日曜の役割を終え、その夜になってからやっと「何かしなくては」と考え始めました。

こちらに在住している70人ほどの邦人の皆さんも、様子は大体同じだったようです。日本に住んでいたことがあったり、留学していたことのあるアイスランド人の人たちも一緒になり「何かできること」を探し始めました。

短い時間のうちに、赤十字の協力が決まり、義援金呼びかけの具体的なことも決まりました。ダウンタウンの中心にある建物を借りて「ガンバレ Nippon!」のオープンハウスを開きました。普段はあまり邦人の集いに参加されない日本人の方もいらっしゃるのですが、その時はさすがにほとんどの邦人の方が揃ったと思います。

結果、大勢のアイスランド人(とこちらに住んでいる人たち)が義援金カンパに協力してくれましたし、連帯と支援の気持ちを示してくれました。教会での祈りの夕べにも多くの方が来てくれましたし、この時は本当に「小さな社会」のありがたい一面に触れさせてもらったと思います。



「ガンバレNippon!」のオープンハウス

世界中のいろいろな国に住んでいる邦人の方々の多くに共通する感情ではないかと想像するのですが、あのようなことが起っている時に遠く離れて暮らしているということ、何もすることができないでいるということは、罪悪感を伴う焦燥感になります。

もちろん、実際に被災された方々の困難とは較べるべくもありませんが、在外組の私たちは私たちで自分の気持ちをしっかり保つ必要があります。実際に何かの取組みに参加できるということ、何かすることがある、ということはその人たち自身にとってとても大切なことだと実感しました。

その他にも多くのことを考えさせられました。この震災は私にとっても大きなショックでしたが、それはやはり私が日本人だからだと思います。私はことさらの愛国者ではありませんが、それでも日本人だと改めて感じさせられました。

スマトラ沖の大災害の時は心は重くなりましたが、二年前ほどの長く続く悲嘆にはなりませんでした。アフリカでは五歳未満の子供だけをとっても毎日二万人以上が亡くなっています。私はそのことを知ってはいますが、東北大震災時のような強い動揺は持っていません。

もちろんスマトラ沖の大災害やアフリカの子供たちの状況を軽く見ているということではありません。真剣に考え、なされている活動を支援する気持ちは強く持っています。それでも正直に自分の心を覗き込んでみると、やはり「同じ」ではないのです。私たちはやはり近いところの悲しみから感じていかざるを得ないのでしょう。

自己中心的で悲しいことかもしれません。ただ、それが必ずしも否定的なことだとも思いません。もし私たちが世界の全ての人の悲しみを同じように感じることができたとしたら、それは人間として生きるにはあまりに重すぎることだと考えます。必要なことは全ての重荷をしょいこむことではなく、限りのある、そのような自分であることを知っておくことであろうと思います。



逆に気仙沼の皆さんからの元気寄せ書き

震災に関しての応援活動は秋口まで続きました。こちらの郵便局の協力もあり、アイスランド中から寄せられた0,5トンもの手編みのニット(セーター、靴下等)が気仙沼市に送られましたし、教会の青年協議会の若者たちも廃品回収等で被災地の小学校への援助をしてくれました。

「震災後」はまだ続いているのでしょう。失われてしまったものはもう戻らないのでしょうが、それでも残った方々がしっかりとした復興の礎となられることを信じます。

またアイスランドに在住する邦人のひとりとして、アイスランドの皆さんの暖かい支援と思いやりに改めて深く感謝いたします。



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アイスランド的ラプソディー 冬のある日

2013-03-08 05:00:00 | 日記
前回はレイキャビクの「マイルドな冬」について書きました。この冬は雪らしい雪もそうは降らず、ラク~な日々が続いていたので「このまま春になーれ」と念じていたのですが、そうは問屋が卸してくれないようです。

この水曜日には雪と風のストームが市を見舞って、大混乱の一日となりました。寒気と降雪の予報はもちろん出ていたのですが、ストームというのは非常に短時間のうちにやってきます。ストームも予報が出るのですが、山の天気と同じでどうしても人間の方には油断が生じてしまいます。

今週は気温が下がり、それまでの7~9度という心地良い日々からマイナス2~5度くらいの冬日に戻りました。そんなにビックリするほどの寒さではないのですが、風がコンスタントに秒速12~15mと吹きまくってくれているおかげで体感温度はマイナスに倍増です。

降雪量も大したことはなかったはずなのです。(例えば私のアパートの裏庭を見ても、そんなに積もってはいません) それで普通に車で仕事に出かけた人が多かったのだと思います。ところが強風のせいで、いわゆる「吹きだまり」があちらにもこちらにも生じ、局地的に1メートルもの積雪部分ができてしまったようです。

ネットニュースより1

そのために全市で交通は大混乱になりました。ひどい時間帯には10分間に五件の自動車事故が通報され、20台を巻き込む事故も起きてしまいました。あちこちで車の流れは完全にストップしてしまい、ドライバーたちは車を放棄するかまたは中に缶詰となりました。5時間そうしていた人もいた、とニュースは言っています。

市内バスまで午前中に全路線を停止してしまい、乗り合わせていた乗客達はバス内に足止めとなりました。これらの人たちや車に缶詰になった人たちを非難させるために、レスキュー隊はフル回転で働いてくれたようです。救急車から消防車までが車を牽引したり人々を動かすために出動しました。

ネットニュースより2

首都警察はこれ以上の混乱を回避するためには車の量を制限することが必要と判断し、小学校の児童の親の人たちに対して「学校へ子供を迎えに行かないように。子供は学校にいた方が安全」という呼びかけをしました。こういうのは私もこれまで聞いたことがなかったですね。

ついでに国内線のフライトも全部運休。国際線は全面ストップではないようです。

午前中だけで怪我や牽引のSOSの電話は800件以上だったとか。午後遅くなってバスは運行を再開し、学校の子供たちのお迎えもOKされました。

これもレイキャビクの素顔です。邦人女性の方がご自分のFacebookでこんなことを言ってます。
“I don't want to have Iceland as my boyfriend. He changes his mind so often and sometimes very cold”.
これはウマイ、ウマイ! 勝手に引用。でも、ワタシの経験では女性にも当てはまるかと...

アイスランド的なのはですねえ、こんなケイオス狂想曲でも大してシリアスな事故もなく、結局はうまく納まってしまうことです。不思議と言えば不思議な国です。



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