ドイツの軍人ハンス・フォン・ゼークトが定義した「ゼークトの組織論」のなかで、
人間を以下の4タイプに分類し、「無能な働き者」は最も不要な人材と定義しています。
軍人には四つのタイプがある
有能な怠け者は指揮官にせよ
有能な働き者は参謀に向いている
無能な怠け者は下級兵士が務まる
無能な働き者は銃殺するしかない
―ハンス・フォン・ゼークト―
会社組織に置いて、様々な人材がおり、与えられた人材を使い、
課題を達成しなければなりません。
その中に、「無能な働き者」がいるからといって、その人間を排除し、
残った人材だけで組織課題を達成できるかというと、達成することは難しく、
どんな人材でも、育成し、指導し、援助し、戦力にしていかなければなりません。
ところで、有能・無能の物差しはどう整理しておけばいいのでしょうか。
一般的に、情報の収集と処理能力、判断力、決断力、発想力、空気を読む能力の有無でしょう。
一方で、働き者と怠け者の物差しは、以下のように整理できると思います。
最低限の義務や成果をこなす時以外は、怠け続けている合理主義者が怠け者で、
働き者はそれ以外と定義でき、特に役職者は、すべき最低限の事をしないくせに
何もすべきでないタイミングで無駄に勤勉になり、組織に迷惑をかけるパターンが多い。
■無能な働き者の特徴
一言でまとめると、無能な働き者とされる人たちには悪意がありません。
自分の置かれた状況や、やるべき目標が不明確であるがゆえに、間違った方向に突き進んでしまう。
仕事のミスによって周囲に実害が出てしまう点が、無能な怠け者よりも厄介とされるのです。
①自分の判断だけで行動
物事を正確に判断できず、実力もないのに行動に移してしまうため、
仕事上のミスを連発してしまい、無駄な行動力の高さが問題を大きくする。
基本的に自分が正しいと思っており、上司や同僚に確認もしないため、
状況が悪化した後でしか周囲が気づけない点がとても厄介になる。
②自分が評価対象だと思っている
行動力だけは十分なため、自分が周囲から評価されていると勘違いしており、
いくら頑張っても評価されない状況に焦りを感じ、より無謀な行動を繰り返してしまう。
周囲は迷惑でしかないので、上司が真実を告げ、止めさせるしかない。
③間違いを指摘されると怒る
他人から間違いを指摘されると、自分の非を認めずに逆上してしまう。
周囲からの客観的な指摘を受け入れられないのは、自分を理解していない無能の証拠。
④待ちの姿勢が多い
何事も待ちの姿勢であり、指示を受けるまでは自発的に行動できない。
何も行動しないため周囲が巻き込まれるリスクはないが、何もしないのも問題になる。
⑤周囲を原因にする
うまくいかない理由が自分にあることに気づいてなく、問題が起きた時の責任を周囲に求める。
⑥とにかく空気が読めない
周囲から自分が求められているものが分からないので、ムキになって行動に移してしまう。
とりあえず頑張っている人には注意をし辛いため、少しずつエスカレートさせてしまう。
⑦感謝されたいと思っている
空気が読めない点と合わせて、常に「感謝されたい」、「人の役に立ちたい」という
想いが先行し、暴走ぎみになってしまう。
■有能な働きもの、有能な怠け者の人が実践している習慣
①仕事の優先順位を立てられる
仕事に対する優先順位をきちんと決めているから、有能な人は仕事が速くて正確。
優先度をつけて順番を組み替えるなど柔軟な対応ができるのが、有能な人の証。
⇔無能な人は、とりあえず見切り発車で行動を起こす。
②周囲に協力を仰ぐ
有能な人は自分の限界を知っており、自分1人で何とかしようとせず、周囲に協力を求められる
チームで行う仕事でも、個々のメンバーのパフォーマンスを理解しているので、最適な人材に仕事を振れる。
⇔無能な働き者は、すべて自分で何とかしようとしてしまう
③全体を見下ろせるようになる
有能な人は常に全体を見下ろす感覚でおり、自分の立ち位置を理解できている。
⇔無能な人は、自分の近くの事象しか目に入らない
④人からの注意を素直に受け止める
有能な人は人からの指摘を真摯に受け止め、客観的な意見を取り込むことで、自分を成長させる。
⇔無能な人は、自分が正しいと信じて疑わなく、周囲からの意見を受け入れない
⑤何事にも自信を持っている
有能な人は、これまでに積み重ねてきた確固たる実績によって裏付けされた自信を持っている。
その範囲は仕事や私生活にまで及び、常に頼りがいのある存在として一目置かれている。
⇔無能な人は、根拠のない自信を持っている。
⑥自分一人で抱え込まない
周囲から信用を集めているので、いざという時に協力してくれる仲間が大勢いる。
⇔無能な人は、人望がないので、協力者がいない。
⑦キャリアプランが明確
自分の進むべき道を決め、目標へ進もうとする意志を持ち、仕事も私生活も効率的にこなしていく。
⇔無能な人は、その日だけを見て生きており、目の前の現実を捌くのに精いっぱい
以上の「有能な人になるための7つの習慣」は、二十歳代までならば、日々の仕事や
良い上司に恵まれて、少しずつでも自己変革や革新につなげていくことも可能でしょうが、
30歳を過ぎたころになると、自己が確立してしまい、変革の柔軟性を失ってしまっていることが
一般的になっているでしょう。
職場では個人の適性に合わせた仕事が割り振られるのが一般的です。
個人の状況を客観的に評価し、与える仕事なので、その役割、個性を
精一杯果たす、発揮することが重要になっています。
そこで、自分の悪い点を改善するには、歳を食って柔軟性がないならば、
良い点をさらに伸ばすようにすることが肝要になってくるでしょう。
また、部下が無能であった場合、きちんと指摘してあげるのが上司としての務めです。
部下の行動が無能そのものだった場合、それが周囲への迷惑になっていることを伝え、
周囲とどのように接していけばいいかを指導することが大事です。
誠意をもって接すれば、部下は、自分が無能な働き者であると気づいてくれるはずです。
そこから無能な怠け者になるか、有能な働き者になるかは部下の意識と努力次第です。
■無能な働き者のアドバイス
①無理をしてまで有能にならなくてもいい
人間には生まれ持った資質、会社人、社会人としての経験から身についた資質がある。
どんなに頑張っても直せない資質や現実もあるので、無理をして有能になる必要はない。
「有能な働き者」とまではいかなくても、「無能ではない働き者」には必ずなれるはず。
※上記「有能な働きもの、有能な怠け者の人が実践している習慣」の中の、
「⇔」の無能者の行動や気質を避けるように努力する。
②人にはそれぞれ役割があり、自分の役割を精一杯果たすことが重要
有能と無能を分けるのは能力以上に、個人の意識による面も大きい。
大半の職場では個人の適性に合わせた仕事が割り振られており、
現在の仕事は適正を客観的に評価し、与えられたと理解し、役割を精一杯果たす。
③真面目さを取柄にする
真面目さを武器に、一生懸命周囲に目を凝らし、改善すべきことがないかを発見する。
ただし、張り切り過ぎて周囲に迷惑をかけていないかだけはきっちりと確認しておく。
⇒ 上司が、常に目を向け、やるべき目標や課題を明確にし、組織内での置かれている立場、状況を助言することも有効。
④誰かを無能呼ばわりする前に、まずは自分を顧みる
普段からの意識や心構えの差が、有能と無能を分けているので、すぐには有能にはなれない。
しかし、そのための努力は今後の人生にとっても非常に重要なものになるはず。
以上