愛猫・西子と飼い主・たっちーの日常

亡き西子とキジロウ、ひとりっ子を満喫していたわおんのもとに登場した白猫ちくわ、その飼い主・たっちーの日常…です。

モンとポポ1

2006年06月02日 | ネコの寓話
 小さな川の大きな河原にモンとポポという兄弟ネコが住んでいました。
 モンはお兄さんネコで、淡いグレーと黒のトラ柄。
 弟のポポは、グレーでしっぽと耳の先が黒。
 2匹は、とても仲の良い兄弟です。
 でも、モンには、ひとつ心配なことがありました。弟のポポが病弱なことです。モンは一所懸命にポポを気遣います。モンの1日は、ポポの世話で終わってしまうこともしばしば。ポポの具合が悪くなると、モンは自分のせいのような気がして、いてもたってもいられなくなってしまいます。でも、ポポはたしかにほかのネコより身体も小さく、病弱ではありますが、すぐに死んでしまうというほどのことはありません。
 その日も、モンはポポの看病で1日が終わってしまいました。ポポが毛玉を吐いたのです。毛玉を吐くくらいは、いくら病弱なポポとはいえ心配はないはずなのですが、モンはとっても不安になって、くたくたになるまで面倒をみていました。モンは、ポポが寝付いたのを見届けると、ひとりで川原に行き、ごろんと横になりました。
「あー、疲れた」 
 思わず、口に出すと、一匹のネコが草むらからひょっこと顔を出しました。真っ白い毛に4本の足下としっぽの先だけが、まるで足袋を履いているようにグレーの毛が生えているネコ。タビです。
「いつも弟の世話で、大変だね」
「そうなんだよ。ポポは病弱だから心配で…」
 そういう、モンをじっと見つめてタビがいいました。
「ねえ、ポポを健康にしあげようか?」
「えーっ、そんなことできるの?」
「うん、僕に不思議な力があることは知っているだろう? ちょっとの間、そうだな1週間。1週間したら、もとに戻っちゃうけど、それでもいい?」
「うん、助かるよ」
そういうとタビをポポのところに案内しました。
タビは「1週間だけだからね」と念を押すようにいうと、「じゃあ、横になって目をつぶって」と優しい声でいいました。
タビは、横たわったポポの身体に右の前足をそっと乗せ、「あおーん」と一声鳴きました。
「もう大丈夫。これから1週間は健康。でも1週間後のこの時間までだからね」
 タビは、そういうとぴょんと跳ねるようにその場を立ち去りました。
「ポポ、1週間だけど良かったな」
「うん、モン兄さんも、これで1週間は僕の看病をしなくてすむね」
2匹は、ほっとしたように顔を見合わせました。
 でも、モンはどこか寂しそうでした。
(つづく)
コメント (2)
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