愛猫・西子と飼い主・たっちーの日常

亡き西子とキジロウ、ひとりっ子を満喫していたわおんのもとに登場した白猫ちくわ、その飼い主・たっちーの日常…です。

罪悪感猫のロン3

2006年09月17日 | ネコの寓話
 翌朝、起きたロンは、立ち上がるのがやっと。普通に歩くことすらできません。4つの足すべてが思うように動かないのですから、無理はありません。結局、ごはんを食べに行くことも縄張りの点検に行くことも、満足にできなくなってしまいました。
 こうなってしまっては、1日中丸くなって寝ているしかありません。ロンは日に日に痩せていきました。でも、そうやって身動きができずに空腹を抱えて過ごすことが、チーとタロロへの罪滅ぼしだと思っていました。
 そんなある日、ロンの前にタビがゆっくりとした足取りで近づいてきました。
 「こんなことをいつまで続ける気だい?」
 タビが覗き込んで尋ねました。
 「僕があのとき寝坊さえしなければ、チーもタロロもケガをすることはなかったんだ。僕が不幸な目に合わなければ申し訳ないよ」
 すっかり弱々しくなった声で、ロンがいいました。
 タビは、そんなロンを見ていいました。
 「自分で自分を裁いても、満足するのは君だけだよ。君がそんなふうに、ひとりでどんなに苦しんでいてもなーんにも変わらない。それに、君は大切なことをやっていないよ。よーく、考えてごらん」
タビは、そういうと「あおーん」と一鳴きし、高い塀をぴょんと飛び越えて去っていきました。
 ロンは、「僕がやっていない大切なこと…?」とつぶやきながら、去っていくタビの後姿を見つめていました。見つめながら、考えてハッと思い出すことがありました。
 翌朝、痩せ細った身体に、思うように動かない足を引きずりながらチーとタロロのところに行きました。2匹のケガはすっかり治っていました。ロンは、2匹に向かって言いました。
 「この間は、寝坊してごめんなさい。ケンカにならなければ、ケガをすることもなかったのに…」
 「もうケガも治ったし、気にしてないよ。それにケンカの原因はなんであれ、ケンカをしたのは僕たちだから、君は関係ないよ」
チーとタロロは、さわやかにいいました。
 すると、それまで思うように動かなかったロンの足が自由に動くようになりました。
 「ありがとう。ずーっと気にしてたから、ホッとしたよ。ホッとしたら、お腹が空いてきた。何か、食べに行こう」
 3匹は、仲良く連れ立って歩き始めました。
 その様子を、高い木の上からタビがうれしそうに眺めていました。(おわり)

作者たっちーから:罪悪感はとっても大切な感情です。罪悪感がないと、同じような間違いや失敗を何度も繰り返し、結局は信用を失ってしまいます。でも、ロンのように罪悪感にとらわれて、自分を裁いて身動きができなくなってしまうこともあります。間違いや失敗したときは直ちに謝ること、そして出来ることと出来ないことを整理して、できることを実行していくこと、が大切なのではないかと思います。
コメント (5)
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