雨曇子日記

エイティライフの数々です

湯ぶねに一ぱい

2018-04-20 17:45:11 | 大歩危トラベル

 

                           湯ぶねに一ぱい

湯ぶねに一ぱい

湯は

しずかに満ちこぼれてゐる

 

 

爪さきからそろそろと私がはいれば

ざあっとひとしきり溢れさわいで

またもとの湯ぶねに一ぱい 一

 

 

かすかに湧き出る地中の湯は

肩をこえて

なめらかに岩角から流れ落ちる

 

 

湧いてはながれ

湧いてはながれ

しずまり返った山間の午後

私は止め度もなく湧いて流れる

温泉に身をとろかして

心のこゑをきく

 

 

止め度なく湧いてくるのは地中の泉か

こころのひびきか

しづかにして力強いもの

平明にして奥深いもの

人知れず常にこんこんと湧き出るもの

ああ湧き出るもの

声なくして湧き出でるもの

 

 

止め度なく湧き出でるもの

すべての人人をひたして

すべての人人を再び新鮮ならしめるもの

しずかに、しずかに

満ちこぼれ

流れ落ちるもの

まことの力にあふれるもの

               高村光太郎

 

 

岳温泉 あだたらの宿 扇や の内湯脱衣室にあった高村光太郎の詩です。