久しぶりに「ハックルベリー」に行ったら、店主の奥山恵さんの第二歌集「窓辺のふくろう」があった。店に関するいろいろな事柄が詠まれている。
ブルーセージが秋をそよげりふるさとに小さな店を我は建てたり
裏の林で拾いて来たる枝ならべBOOKの文字を看板となす
三年かけて父の作りし木の書棚ここだけの空気占め店となる
店の名に「ハックルベリー」をもらいうけ若きベリーの樹を探したり
絵とことばたちのぼるゆえ幼子の両腕にしかと抱かれる絵本
選びし本の濃さを確かめつつ並べひとりこっそり齧る黒糖
待ちながら暮れてゆく店お話の中ならそろそろ子狐も来る
(手前の枯葉の木がベリーらしい)
本の題名にもなった「ふくろう」は、店主がかっているふくろうのフーちゃんは、アメリカオオコノハズク「木葉木菟」(このはずく)。この挿絵はそっくりらしい。
ひざの上に眠きふくろう撫でおれば背骨はかなく我がゆび震う
マウス一匹ひたひたと喰うふくろうのひゅうと鳴くゆえ泣きたくなりぬ
目の前でまさしく命喰う命 砂嚢より発光したるふくろう
喉の羽ふるわせて鳴くほーと鳴く遠きたましい呼んでいるらし
すいすいと道ゆくだれも窓辺より見下ろすふくろういるとは知らず
犬や鳥横切れば羽角とがらせて窓辺のふくろう一心に見る
ママが本選ぶあいだを抱きとりしみどりごの匂いしばらく胸に
「曲がって曲がってこの子お店に来ちゃいます」くつくつあるきはじめの男の子
歌集を出版された「ハックルベリー」店主の奥山恵さんは、馬場あき子氏主宰「歌林」同人歴20年を超す歌人。
ますますのご発展をお祈りします。