町の図書館で見つけた一冊。
著者アビゲールフリードマンさんが、2000年から 3 年間、外交官として日本のアメリカ大使館で働きつつ俳句を学んだ記録である。
当然、俳句中心だが、交流した日本の俳人たちのこと、仕事や家庭のことなどが生き生きと描かれている。
わたしが一番印象的だったのは、次のようなシーンである。
高校 3 年になった息子との会話である。
「まじめな話、日本に 8 年も住んで、それで何も示せないなんて、ああ、ほんとうに恥ずかしいじゃない!」
私は、息子にたずねた。
「日本でずっと暮らしたことは、あなたにどんな意味があるの?日本でいちばんいいものは何?」
「ラーメン」彼は答える。
「ラーメン?ラーメンが好きって言って大学に受かることはできないわ!」
「でもぼくはここのラーメンが好きなんだよ。スープがおいしいし、麺もうまい。丼をのぞきこむと眼鏡が曇ってゆくのが好きなんだ。昼休みに友だちとラーメン屋に行くのが楽しみ。日本のラーメンはおいしいよ」
「俳句には全然興味がないの?私がこんなに俳句に時間を使っているいるのをみても、関心は湧かないの?」
「わからない。ママが俳句が好きで、ぼくはうれしいよ。でもお願いだからぼくに俳句をやらせないで」
「放っておいてやりなさい」テーブルを片づけながら夫が言った。「ああ、ああ、子育ては大変だわ」と私は心の中で呟いた。
著者はこの本を 2006 年アメリカのストーンブリッジ社から出版し俳句の師匠であった黒田杏子に送った。数日後、その赤い表紙の本は、講演会で聴衆に紹介され、聴衆の一人であった翻訳家中野利子(中野好夫長女)の目に留まって、2010年岩波書店から出版されることになる。この本の誕生もまたドラマチックである。
何十万冊も有る図書館の中で、一冊の本を手に取る。
それは偶然かもしれないが、
その人・雨曇子さんにとって必然だったのでしょう。
何かの啓示で、その本の前に立ち止まる、手に取る。
その本のとりこになる。
人生で出会うべき運命の人に会ったみたいな、なんてね。
出だしは、東京のホテル 10 階の一室で著者が非公式の講演会を日本語で行う場面です。・・・もし地震が起こったらと想像するところなども興味深く読みました。(そんなことを考えたら怖いですよ。外人は、著者だけですから)
フィクションではないので、登場人物は全てネットで検索すれば出てきます。
tsutaya聞いてみたら在庫があるとのこと
相も変わらず、熱海の先生の時代劇を
楽しんでます。エッセイ風なんでしょうか?
楽しみです。