日々の記憶
建築家 筒井紀博のブログ
KIHAKU's blog



少し前になりますが、日本建築家協会の方へ寄稿させていただいた原稿があります。
新人会員の抱負について語ったもので、会報内での紹介でした。
より多くの方に読んでいただき、建築に対する姿勢をご紹介できればと思い、ブログにも載せてみます。


高次元領域へ

丹下健三氏の作品の1つである「東京カテドラル聖マリア大聖堂」、この納骨堂に祖父が眠っています。
祖父が他界したのは私がまだ幼稚園に通っていた頃。大聖堂の厳粛な空間に、優しく包み込むような光がトップライトからふりそそぐのが印象的でした。おそらくこの時が建築との出会いだったのではないかと。
あれから33年。
墓参りの度にこの建築を訪れます。物心ついた頃から存在し続けているこの建築は、どんなに時が経とうとも当時の感動が色あせる事無くいつも優しく包み込んでくれます。

人の心をゆさぶる建築。
これは三次元の構築だけでは非常に難しいように感じます。
竣工したばかりの建築に訪れ、誰と交わることもなく、外界からも遮蔽された場所で感動することがあるのでしょうか?
ライトが冬の家として過ごし様々なドラマが展開されたタリアセン・ウエスト、広大な太平洋に夕陽が辺りをオレンジ色に包み込みながら溶け込んでいったカーンのソーク生物化学研究所の中庭・・・私が経験した建築による感動、そこには時間軸が加わった四次元時空によってもたらされたものが多いです。
その建築の中での経験によって人は心をゆさぶられるのではないかと。

建築家という職能を考える時、人の心をゆさぶる空間、つまり三次元だけではなく、四次元時空をも創造するような空間作りを心がけ、やがてそれらの空間が文化を構築していくような、高次元領域を自ら創りだせるような建築を創出していきたいと思います。

(写真:ソーク生物化学研究所)

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )