|・) 玄学界のアレクサンドリア木星王、どうもありがとうばい。
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大変延引をいたしましたが。
本日茲に類別異境備忘録(幽界記合収)をお届け申し上げ、
本書の再販に際して多大の御協力を給はりたる各位に対し深甚の謝意を表し奉り、
併せて幾重にも遅刊のお詫びを申し上げます。
一、絶版久しかりし本書の再刊に就いては
一昨秋(昭和四十四年)二、三篤信の道士の方との間に其計画が進められ、
編輯に着手したのは翌四十五年の早春でありました。
異境備忘録に就いては改めて原本より一字々々を入念に拝写して誤謬なからんことに努め、
また之を機会に先師の秘せられた手記「幽界記」の大部分を収載して合巻とし、
備忘録に洩れた神仙界及び諸幽界の消息や神法道術に関する師仙等の秘説を挙げ
彼比参照に資する念願のもとに編輯をすゝめ、
既に昨夏八月初旬には大方の組版を了へてゐたのでありますが、
果たせる哉一日異様のいたつきに突発するに至ったのであります。
乃ち上腕は炬火に焼かるゝ如き熾烈の激痛に襲われ、其間断なき苦痛のため睡眠に入ることも得ず、
痛みに耐ゆる限界を越えて失神か眠りか夢幻の如き意識の混濁と忘我の境に陥ること、
一、ニ時といふ毎日が数ヶ月に亘りました。
或る時期は筆を執れば忽ち悶絶に近い激痛が手指に移行し来り、
静かに息を潜めて筆を置くといふ状態が続きましたが、
此種類似のミソギには年来諦観し切った私の人生でありますから敢えて異とせず、
幽界記の写稿は斯うした試練の裡に進行し逐次印刷所に廻付して殆どの組版を了へたのでありますが、
時恰も昨夏八月廿一日 高知は史上未曾有といふ風速五十五米台風の直撃を受け、
剰へ市の半域は軒下に及ぶ異常の高潮に見舞われ、
是らの組版は一朝にして烏有に帰し去ったのであります。
茲に私は幽意の恐るべき御指摘を否応なく直視せざるを得なかったのであります。
本書の「はしがき」に於いて、幽界記の三分ノニを割愛せる旨を述べ
「痛烈な訓戒として悟らされた」と抽象的に表現してあるのは右の諸事実を指すのでありますが、
茲に再び改めて稿を起こし、概ね既発の部分をてき若として備忘録の類別の項に編収し、
十月に入って本文の初校を見るに至りましたので、
茲に初めて類別異境備忘録の再刊を全道士間に発表したのであります。
清の銭謙益の大著明史百巻の稿本は祝融の災により遂に世に出づることなく
「幻の書」として消え去りました。
後学の史家は之を悼み「豈に天の斯の文を喪(ほろぼ)すか、或は論ずる所の人、
造物の為に忌まれて、これを惜めるか、
抑もこれを伝ふるを欲せざるか」と評して天意の介入を嗟嘆しましたが、
史書にして既に然り、宇内深秘の霊典の然るべき所以は豈史書の比に非ざることの一証であります。
一、本書は改版後、遅くとも四月中には完了の予定で、
その故に「はしがき」にも「奥付」にも発行日付を五月一日として印刷させたのでありますが、
さて其後の附録部分の工程残留工員は工員の大量引き抜きに遭ひ、
残留工員は文選・機械工各一名といふ麻痺状態に陥り、復旧を得る迄に二ヶ月餘を空費しました。
次いで活字鋳造機の故障で、大阪迄発注の部品が合ふの
合はぬのと亦た一ヶ月近くのストップ、まことに辺陲高知は文化果つるところで、
一列せば表紙の厚手黄紙の取寄せに二十日、
また表題の「異境備忘録」の一号正楷活字の取寄せに二十日、
また表題の「異境備忘録」の一号正楷活字の取寄せに半月といふ始末、
更に切角校了の索引之部二十一頁を誤って改版し、またまた文選からやり直すといふ有様で、
加之、大規模の工場の如く一度に六十四頁分を刷上げるのとは異なり
八頁づゝこまめに刷ってゆく能率ぶりでありますから、
よほどの忍耐力を必要とするのであります。
然乍ら二十餘年間に亘りご苦労をかけた印刷所を変更するといふ様なことはわたしの為し得ないところで、
茲では義務的に遅刊の経過を説明する必要上止むを得ず事実を述べるに過ぎないのであります。
一、しかし此の小休止の連続も結果的にはまた別の
収穫を生みました。当初の本文だけ(109頁)の収載予定から次々と附録を追加し、
索引も改版前の6頁から私の個人用索引の若干を加へて21頁に増補し、
全編を通じて凡そ60頁近くを増頁する結果となり、
本文理会の上に資するを得たことは発行遅延を嵌めて餘りあるものであったと考えます。
一、最後に一言申添へたく存じますのは、
本書の研鑽と概念の整理に出来るだけ「索引」を活用して頂きたいことであります。
本文並に附録・夢記迄の123頁に対し
21頁にも及ぶ索引を付した用意は深長で、本書を読みて索引の必要性を感じないといふ者あらば、
恐らくは神仙の類か、然らずんば席を同うして倶に神仙を語るに足らざる無縁の徒でありませう。
今一つは巻末の水位先生御著述目録中の道書に関しての御照会には一切御返信申し上げ難いことで、
是らの霊著は故あって門外不出・門外不語の禁掟を墨守いたして居ります。
羽雪大霊寿真仙(平田篤胤先生)は
「道家の書は、師の口訣を受けずては、絶えて悟るべからぬ書なれば、
読みて疑なきこと能はず。読む人をして、其の解すべきを解せしめ、
疑ふべきを疑はしめて其の訣を授けむとなり。師説の草稿の如き、其師の思ふ旨ありて、
片成るを示す事あるを盗み取りて他に伝へ、師に甚だしく恥見する事もあり。
余が門にも往々あり。然るに盗する者必ず道の蘊奥にたどり入るべき人物に非ず。
其は文道の神仙のにくみ給へばこそ」と申されました。
非情のやうでありますが達人の至言であります。未だ斎主と一面識だになき人が、
一片の書状を以て先師血肉の霊著の貸出を当然の如くに要請し来る例さえ往々にあり、
入室の大義を弁へぬ論外の沙汰といふべきであります。
一、 本書を入手せられましたら御手数ながら
同封のハガキの裏面に貴名を記入の上
御投函下さい。
昭和 四十六年 九 月 二十日
神 仙 道 本部