貧富の格差と貧困が拡大する中で、公営住宅への入居を希望する人達が急増しています。04年の全国の公営住宅の応募倍率は9・7倍で、7年間で1・8倍に上昇しています。大都市では応募倍率が数十倍であり、公営住宅への入居資格があっても、公営住宅に入居することは絶望的な状況です。
国の「住生活基本計画」に基づいて立てた全都道府県の公営住宅供給の目標量は、10年間に新規建設は僅か1万2千戸で、空家募集90万4千戸を足しても、10年経過しても国土交通省が試算した「公的支援により居住の安定を図るべき世帯」の数121万1489世帯には到底及ばない状態です。ましてや、東京・大阪などでは公営住宅の新規建設がストップされており、住宅セーフティネットの根幹である公営住宅が圧倒的に足りない状態です。
昨年成立した住宅セーフティネット法では、「住生活基本法の基本理念にのっとり、住宅確保要配慮者(低額所得者、被災者、高齢者、障害者、子どもを育成する家庭等)に対する賃貸住宅の供給の促進を図り、国民生活の安定向上と社会福祉の増進に寄与することを目的とする」と定めていますが、中味は公営住宅の供給の促進を図るのではなく、既存の公営住宅のストックの活用が強調される一方で、公営住宅を「公平かつ的確な供給」の名の下に、住宅困窮者に困窮度を競わせ、公営住宅を極一部の低所得の人にしか入居できない制度にしようとしています。
昨年の12月末、政府は公営住宅の入居収入基準及び家賃制度を見直すため政令を改悪し、これまでの政令月収20万円を15万8千円に大幅に引き下げ、収入が15万8千円を超過すると明渡しの対象となり、明渡すまでの間は近傍同種の民間家賃と同じ水準の家賃に値上げされます。国土交通省の試算によると、この改悪で新たに約11万世帯の公営住宅居住者が収入超過者となることで、空家が現在9万6千戸の募集戸数が15万戸~20万戸に増え、応募者も15万人から10万人減少するとし、応募倍率が9.9倍から最小4倍程度に下落すると皮算用しています。
これは、公営住宅を「建てず、入れず、追い出す」そのものであり、公営住宅を本来の住宅施策と無縁の救貧施設にするもので、「住宅が国民の健康で文化的な生活にとって不可欠な基盤である」とした住生活基本法第6条の「居住の安定確保」の基本理念にも反するものです。公営住宅の供給の拡大等公営住宅施策の拡充こそ、国民の居住の安定確保にとって欠かせない施策であり、政府及び自治体に対して「安心して住み続けられる」住宅政策の実現を強く求めます。
2008年7月5日
全国借地借家人組合連合会第27回定期総会