賃貸マンションの借主に返還される敷金から、家主が無条件に一定額を差引くと定めた賃貸借契約の特約(敷引特約)が消費者契約法に基づき無効かどうかが争われた訴訟の判決で最高裁第1小法廷(金築誠志裁判長)は3月24日「特約は原則として有効」とする初の判断を示し、差引かれた敷金の返還を求めた借主側の上告を棄却した。請求を棄却した1,2審判決が確定した。
敷引特約は関西地方や福岡県などで慣習化している。同種訴訟では地裁や高裁で特約を無効とする判断が相次いでいたが、判決は「特約にはあらかじめ敷金から差引く額を決めてトラブルを防止する意味があり、貸主の取得額が賃料などに比べて不当に高くなければ有効」と述べた。
訴訟の原告となった借主は、06年に入居時に敷金40万円を納めた。退去に特約に基づき21万円を差引かれたため「部屋の傷や汚れと無関係に一定額を差引く特約は無効」と訴えていた。(毎日新聞3月25日報道)
本件は京都市の賃貸マンションで、家賃は1ヶ月9万6千円の約定で、保証金を40万円預け、返還は入居期間が1年未満が控除額18万円、2年未満は21万円、5年以上34万が控除される。5年以上入居すると敷金は6万円しか返ってこない。借主は平成18年に契約し、平成20年4月30日に明渡している。最高裁は、平成17年の判決で通常損耗等の補修費用は賃料に含まれているので、その補修費用を賃借人に負担させることは「賃借人に予期しない特別の負担を課すことになるので賃借人が補修費用を負担することになる通常損耗の範囲が契約書に具体的に明記されているか、契約書で明らかでない場合には口頭により説明し、賃借人がその旨を明確に認識し、それを合意の内容としたものと認められる」とした。
契約書優先、消費者保護に反する
しかし、今回の判決では「通常損耗等の補修費用を敷引金の額について賃借人は明確に認識した上で契約を締結しているので、賃借人の負担について合意しているので、補修費用は賃料には含まれない」、「18万円ないし34万円を保証金から控除する敷引額は、本件建物に生ずる通常損耗の補修費用として通常想定される額を大きく超えるものとまではいえない」、「本件敷引金の額が高過ぎると評価することはできず、本件特約は消費者契約法10条により無効であるとはいえない」と先の最高裁判決と全く異なる判断を下した。要するに補修費用に当てる敷引の金額が契約書に「明確」に書いてあるから、敷引金は家賃ではない。家賃の2倍~3・5倍強の敷引金は消費者に不利益な特約ではないという。18万~34万円の敷引金は高くはないという最高裁の裁判官の感覚にはあきれるばかりだ。消費者保護にあきらかに逆行する判決である。
最高裁の更新料裁判にも影響か?
今後、6月に弁論が開始される注目の更新料の最高裁の裁判の行方や現在見直しが行なわれている原状回復のガイドラインにも重大な影響を与えそうだ。更新料について最高裁に過度な期待は持たない方がよさそうです。皆さんは契約書には十分に注意しましょう!
(東京多摩借地借家人組合ニュース)
借地借家人組合は借主の権利を守る団体です
組合に加入しましょう! 借主の権利を主張しましょう!
電話 042(526)1094
敷引特約は関西地方や福岡県などで慣習化している。同種訴訟では地裁や高裁で特約を無効とする判断が相次いでいたが、判決は「特約にはあらかじめ敷金から差引く額を決めてトラブルを防止する意味があり、貸主の取得額が賃料などに比べて不当に高くなければ有効」と述べた。
訴訟の原告となった借主は、06年に入居時に敷金40万円を納めた。退去に特約に基づき21万円を差引かれたため「部屋の傷や汚れと無関係に一定額を差引く特約は無効」と訴えていた。(毎日新聞3月25日報道)
本件は京都市の賃貸マンションで、家賃は1ヶ月9万6千円の約定で、保証金を40万円預け、返還は入居期間が1年未満が控除額18万円、2年未満は21万円、5年以上34万が控除される。5年以上入居すると敷金は6万円しか返ってこない。借主は平成18年に契約し、平成20年4月30日に明渡している。最高裁は、平成17年の判決で通常損耗等の補修費用は賃料に含まれているので、その補修費用を賃借人に負担させることは「賃借人に予期しない特別の負担を課すことになるので賃借人が補修費用を負担することになる通常損耗の範囲が契約書に具体的に明記されているか、契約書で明らかでない場合には口頭により説明し、賃借人がその旨を明確に認識し、それを合意の内容としたものと認められる」とした。
契約書優先、消費者保護に反する
しかし、今回の判決では「通常損耗等の補修費用を敷引金の額について賃借人は明確に認識した上で契約を締結しているので、賃借人の負担について合意しているので、補修費用は賃料には含まれない」、「18万円ないし34万円を保証金から控除する敷引額は、本件建物に生ずる通常損耗の補修費用として通常想定される額を大きく超えるものとまではいえない」、「本件敷引金の額が高過ぎると評価することはできず、本件特約は消費者契約法10条により無効であるとはいえない」と先の最高裁判決と全く異なる判断を下した。要するに補修費用に当てる敷引の金額が契約書に「明確」に書いてあるから、敷引金は家賃ではない。家賃の2倍~3・5倍強の敷引金は消費者に不利益な特約ではないという。18万~34万円の敷引金は高くはないという最高裁の裁判官の感覚にはあきれるばかりだ。消費者保護にあきらかに逆行する判決である。
最高裁の更新料裁判にも影響か?
今後、6月に弁論が開始される注目の更新料の最高裁の裁判の行方や現在見直しが行なわれている原状回復のガイドラインにも重大な影響を与えそうだ。更新料について最高裁に過度な期待は持たない方がよさそうです。皆さんは契約書には十分に注意しましょう!
(東京多摩借地借家人組合ニュース)
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