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生活弱者の賃貸入居支援 国が新制度の構築検討

2016年10月07日 | 国と東京都の住宅政策
http://www.chunichi.co.jp/article/living/life/CK2016100602000006.html

 総務省の統計によると、全国の賃貸住宅のほぼ五戸に一戸が空き室。そこで、住む家がない人の支援に空き室の活用がしばしば検討される。しかし、「家賃を滞納されるのではないか」と渋る貸主が多く、なかなか入居に至らないのが実際だ。国土交通省は家がない人のほか、高齢者、子育て中などの世帯の入居を容易にする「新たな住宅セーフティーネット制度」の構築に来年度、乗り出す。実効性のある制度とするには、何が課題なのか考えた。


 「昔とはまるで違う生活。ありがたい」。愛知県一宮市のアパートで一人暮らしをする男性(68)は、しみじみと話す。今は生活保護を受けて落ち着いた日々を過ごしているが、膝のけがをきっかけに仕事を見つけにくくなり、九年前までは十年ほどにもわたって野宿生活をしていた。


 生活保護を受けられるようになったのは、同市のホームレス支援団体「のわみ相談所」に相談してからだ。アパートも、同相談所から紹介された。貸主の男性(58)は「自分が持っている物件の大半に、のわみ相談所で支援を受けている人が入居している」と話す。


 野宿生活の経験がある人が入居を断られることが多いのは、生活破綻の経歴があるからだ。それでも、生活の立て直しには、住居の確保が欠かせない。同相談所は、代表の三輪憲功(のりかつ)さん(69)らが、市内の個人貸主や不動産会社に協力を依頼するだけでなく、一時的に入居できるシェルターも市内八カ所に設けた。元ホームレスの人たちの学習会、生活困窮者向けの無料食堂、元ホームレスの人たちが働く「便利屋」などさまざまな形で自立を支援する。


 その支援の輪に今年八月、新たに加わったのが「良心的大家さん居住福祉一宮ネット」だ。メンバーは、相談所の活動に理解を示すようになった貸主や不動産業者ら七人。野宿生活を脱した男性のアパートの貸主もその一人だ。現在、約百人がメンバーらの賃貸住宅で生活している。


 入居者を確保して、空き室を抑えることができる一方で、家賃滞納の心配がないわけではない。男性貸主は「多少の滞納があっても『これが自分なりの支援活動』と割り切っている」と話す。


◆改修費、家賃引き下げに補助 セーフティーネット強化


 国交省は、二〇一七年度政府予算の概算要求に、住宅セーフティーネット機能の強化と、新たな仕組みの構築=図=の事業費を盛り込んだ。


 新たな仕組みは、子育て、高齢者、障害者の世帯や野宿生活の経験がある人らが入居しやすい環境を整備する目的。認定、登録のあんしん入居住宅(仮称)を募る。


 認定は、低収入などの一定要件を満たす世帯向け。貸主に、国や地方自治体が改修や家賃引き下げのための補助をする。登録の貸主は、国による改修費補助などを受けられる。自治体や不動産関係者らでつくる居住支援協議会などによる入居者支援も拡充する。


 貧困と住宅問題の関連を考える「住まいの貧困に取り組むネットワーク」などは二十六日に参議院議員会館で集会を開き、新制度導入に向けて、貸主の理解を得るための入居者支援の重要性を訴える。


 ネットワーク世話人の坂庭国晴さん(72)は「新制度の創設はよいが、自治体などがどこまで本腰を入れるかがかぎ。実効性のある仕組みにしてほしい」と話している。(中日新聞 10月6日)


 (白井康彦)
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