東京多摩借地借家人組合

アパート・賃貸マンション、店舗、事務所等の賃貸のトラブルのご相談を受付けます。

地代供託中なのに地主が底地を底地買い業者に売却

2022年07月06日 | 底地買い・地上げ
 国立市谷保で宅地67坪を借地しているMさんは今から17年前の平成17年に突然高額の相続税を支払ったとの理由で地代を毎年30%づつ値上げすると請求され、話し合いを地主と何度か行いましたが協議不成立で依頼17年間にわたり法務局に地代を供託しています。

 父親が亡くなり長男が借地を相続し、組合を通じて年2回東京法務局府中支局に地代を供託していました。

ところが、今年4月に突然クマシュー工務店と名乗る社員が何の予告もなくMさん宅を訪問し、「今度うちの会社が土地を購入し、地主になった。今後のことについて話し合いたい」と言ってきました。Mさんは気が動転しましたが、父親の代から組合員であることから、落ち着きを取り戻し、「話し合いは組合事務所で役員同席で行いたい」と述べ、5月18日に組合事務所で細谷事務局長立ち合いの下話し合いを行いました。
 クマシュー工務店東京支店営業部との名刺を出しだしましたが、いかにも地上げ屋風で社員というより地上げ屋の仕事を請け負ってやっているようでした。
 地代は毎月現行地代(供託していた金額)のままでMさん宅を訪問し受け取ると述べ、振込による送金には応じませんでした。Mさんは地代のみ支払い、今後の話し合いは全て組合事務所で行うつもりです。Mさんは、底地の買取りも借地権の売却も拒否して頑張る決意です。

 同工務店は大阪が本社の地上げ屋で、ホームページでは「底地」について、「借地借家人と今現在トラブル中だけど」との質問に対し、「売買に何ら問題はございません。お気軽にお問い合わせください。地代家賃供託中でも売買いたします」と答え、「小さな土地でも大歓迎で、売買させていただきます」と宣伝しています。今、借地権の付いた土地の所有を持て余す地主が増えています。何時、土地が底地屋に売却されるか分からない時代になってきました。底地屋の情報を組合にお知らせください。(多摩借組組合ニュースより)
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更新料の支払合意について(裁判例比較)

2022年07月06日 | 最高裁と判例集
 更新料の支払合意についての2つの裁判例を比較します。

 東京地裁平成27年2月12日判決は、賃貸借契約書に更新料の規定がない事案において、前貸主、前借主の間で、「賃貸期間の満了に伴って契約を更新する際には、更新時の相場により算出される金額の更新料を支払う旨の黙示の合意がされ」たと認定し、前回更新時にはその更新料支払合意に基づき更新料として780万円が支払われたことを指摘して、「その後の相続により、賃貸人や賃借人の地位が原告と被告にそれぞれ承継されたことに伴い、原告と被告にこの合意が承継され、存続されていることになるから、被告は、更新料支払合意に基づき、賃貸人である原告に対し、更新時の相場により算出される相当額の更新料を支払う義務がある」と認定しました。この判決は、「黙示の」更新料支払合意を認めた点、明確な金額もしくは基準の定めがない更新料支払合意の具体的権利性を認めた点、従前当事者間の更新料支払合意の相続を認めた点で、やや特異な判決といえるのではないかと考えます(なお、本件は東京高裁で和解により終結)。

 これに対し、ほぼ同時期に出された東京高裁平成28年5月25日判決は、賃貸借契約書に「契約が更新されたときは、乙は、甲らに対して、甲乙協議により定めた金額を更新料として払わなければならない」と記載のある事案です(また、前回更新時に500万円の更新料が支払われていました)。この事案の原審は、上記文言は「合意更新の際に当事者間の合意によって定められる更新料についてのみ規定したものと解すべきである」として、更新料支払義務を否定しました。この控訴審である上記東京高裁判決は、この原審判決の結論及び理由を維持しつつ、さらに以下のような踏み込んだ論証をしました。「いわゆる更新料条項は、一般的には賃貸借契約の要素を構成しない債務を特約により賃借人に負わせるという意味において、賃借人の義務を加重するものであるから、控訴人主張のように当事者の意思を当然に推定することは合理性がない」、「付言すれば、控訴人の主張によっても、更新料の額は当事者双方の協議によって定めるべきものであるから、その協議が調っていないという本件事実関係の下においては、控訴人の行使する237万2386円の更新料支払請求権が、具体的な権利として発生しているものとは解されない」。この東京高裁判決は、安易に当事者の意思を推定することなく、更新料の支払合意が「一義的かつ具体的」に契約書に記載されているかどうかを重視したと解されます。また、更新料の金額について明確な合意(金額・基準)がない場合、具体的権利性を認めることに消極的な立場をとったともいえます。

 最近は、借地契約でも金額・基準まで定めた更新料条項を散見しますが、多くは更新料条項がないか、あっても解釈が多義にとれるケースが多いです。参考にして下さい。(弁護士 西田穣)
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