借地契約の期間満了による将来の明渡請求が否定された事例 (東京地裁平成6年8月29日判決、判例時報1534号74頁)
(事実)
地主は借地人に対し、普通建物所有を目的し、期間昭和51年9月16日から平成8年9月15日までの20年間の役で土地を賃借していたところ、借地契約の期間満了前に、右満了時における借地上建物の収去・土地明渡を求めた。
地主は、その理由として借地人が期間満了の際に明渡請求に応じないおそれがあること、更新拒絶の正当事由として、住友不動産と共同して、高層ビル建築を計画していること、本件土地周辺は、高度利用が進行し高層ビル建築が港区の施策にも合致していること、立退料として金1億8000万円或は相当額を支払う用意があること、右事情が期間満了まで存続することを主張した。
借地人は、本件土地賃貸借は、期間満了までには権利関係及び事実関係の変動が予測され、現時点で、期間満了時における正当事由の有無を判断することは不可能であると主張した。
(争点)
本件訴えが将来の給付の訴えの適格を有するか否かである。
(判決要旨)
裁判所は、
「正当の事由は、期間満了時を判断基準として、右時点における地主と借地人の土地の利用を必要とする事情、借地に関する従前の経過および土地の利用状況、地主の申出た立退料その他諸般の事実関係を総合考慮して決定されるところ、その基礎となる事実関係は、地主及び借地人の個別的な事情の変化はもとより、社会の状況、経済の動向等によっても様々な変動が生じ得る極めて浮動的な性格のものであることは明らかであり、地主が申出た立退料の額の当否等をあらかじめ確定することも甚だ困難あるといわなければならない。本件においては、口頭弁論終結時(平成6年7月25日)から本件賃貸借契約の期間満了時(平成8年9月15日)まで約2年2か月近くを残しているのであり、期間満了時における本件明渡請求権の成否及びその内容についての事情の変動を現時点において明確に予測することは到底不可能である。よって、本件訴えの適格を有しないものというべきである。」と判示した。
(短評)
都心部における再開発がらみの事案では、明渡を求めるため、相当額の立退料を提供して正当事由を補強し、合わせて賃貸借期間が来ていない場合には、将来の明渡請求を求めるケースがままあるが、期間満了時まで相当期間がある場合、本来の正当事由制度を踏まえて訴えの利益がないとした本判決は当然とはいえ評価できる。 (1995.10)
(東借連常任弁護団)
東京借地借家人新聞より
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東京多摩借地借家人組合まで
一人で悩まず 042(526)1094
(事実)
地主は借地人に対し、普通建物所有を目的し、期間昭和51年9月16日から平成8年9月15日までの20年間の役で土地を賃借していたところ、借地契約の期間満了前に、右満了時における借地上建物の収去・土地明渡を求めた。
地主は、その理由として借地人が期間満了の際に明渡請求に応じないおそれがあること、更新拒絶の正当事由として、住友不動産と共同して、高層ビル建築を計画していること、本件土地周辺は、高度利用が進行し高層ビル建築が港区の施策にも合致していること、立退料として金1億8000万円或は相当額を支払う用意があること、右事情が期間満了まで存続することを主張した。
借地人は、本件土地賃貸借は、期間満了までには権利関係及び事実関係の変動が予測され、現時点で、期間満了時における正当事由の有無を判断することは不可能であると主張した。
(争点)
本件訴えが将来の給付の訴えの適格を有するか否かである。
(判決要旨)
裁判所は、
「正当の事由は、期間満了時を判断基準として、右時点における地主と借地人の土地の利用を必要とする事情、借地に関する従前の経過および土地の利用状況、地主の申出た立退料その他諸般の事実関係を総合考慮して決定されるところ、その基礎となる事実関係は、地主及び借地人の個別的な事情の変化はもとより、社会の状況、経済の動向等によっても様々な変動が生じ得る極めて浮動的な性格のものであることは明らかであり、地主が申出た立退料の額の当否等をあらかじめ確定することも甚だ困難あるといわなければならない。本件においては、口頭弁論終結時(平成6年7月25日)から本件賃貸借契約の期間満了時(平成8年9月15日)まで約2年2か月近くを残しているのであり、期間満了時における本件明渡請求権の成否及びその内容についての事情の変動を現時点において明確に予測することは到底不可能である。よって、本件訴えの適格を有しないものというべきである。」と判示した。
(短評)
都心部における再開発がらみの事案では、明渡を求めるため、相当額の立退料を提供して正当事由を補強し、合わせて賃貸借期間が来ていない場合には、将来の明渡請求を求めるケースがままあるが、期間満了時まで相当期間がある場合、本来の正当事由制度を踏まえて訴えの利益がないとした本判決は当然とはいえ評価できる。 (1995.10)
(東借連常任弁護団)
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