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敷金返還の可能性が殆ど無い場合は家賃の不払いで実質的な敷金回収を

2008年04月23日 | 敷金と原状回復
(問)引越を考えているが、噂によると家主は全く敷金を返さないことで有名らしい。敷金は家賃の3箇月分差入れている。自衛策として引越前の3箇月家賃未払いで退去して、敷金で精算してもらうという方法で何か問題があるのか。

(答)敷金の回収見込みが無い場合に、家賃の不払を実行して実質上敷金を回収する方策を是認する賃借人にとっては画期的な最高裁判決(平成14年3月28日)がある。最高裁の判決を少し検討してみる。

 〈事実の概要〉
 A所有の建物をBが賃借し、それをYに転貸していた。Yは家賃100万円、敷金1000万円でBと転貸借契約を結んでいた。Y入居前からA所有の建物は信託銀行によって抵当権が設定されていた。Aの経済的破綻が心配でYはBに対して平成10年3月30日に6箇月後に退去するという契約解除を通告した。敷金の回収目的から一方的に6箇月分の家賃の支払を停止した。Aの借入金の返済がストップしたので信託銀行は、抵当権者の物上代位権を行使して平成10年6月YからBへの賃料債権を差押えた。Yは家賃600万円を未払いのまま9月30日に建物を退去した。信託銀行は差押え家賃を支払えとYを提訴した。Yは裁判で未払い賃料は、建物明渡時に敷金によって当然に充当され消滅するものであると主張した。

 最高裁は「目的物の返還時に残存する賃料債権等は敷金が存在する限度において敷金の充当により当然に消滅することになる。このような敷金の充当による未払い賃料等の消滅は、敷金契約から発生する効果であって相殺のように当事者の意思表示を必要とするものでない」として、Yの主張を容れて信託銀行を敗訴させた。
 この最高裁の判決は、一方的な家賃の不払によって実質的に敷金を回収する方策を認めたもので評価出来る。明渡しが完了すれば、未払いの賃料債権は相殺の意思表示を待たずに預託されている敷金の限度で充当され、当然に賃料債権が清算される。これは敷金契約から発生する効果である。従って、相談者は一方的に家賃の不払を実行しても何ら問題は無い。

 なお、最高裁判決は敷金の特殊性を考慮したものであって、単なる一般債権の場合には当て嵌まらない。



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