東京多摩借地借家人組合

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承諾しない更新後の借主の滞納家賃を連帯保証人は支払義務があるのか

2010年03月03日 | 借地借家の法律知識
(問) 10年前にマンション入居の際、頼まれてAの連帯保証人になった。ところがAの家主から突然、3年分の滞納家賃と共益費の支払を求められた。請求に応じなければならないのか。

(答) 家主から契約更新後の保証人の継続に関する承諾の連絡などは一度もなかったという。保証契約が継続しているという自覚がない保証人に対し、家主からの滞納家賃の支払請求は寝耳に水の事である。

 判例は保証人の責任に対しては厳しいものである。最高裁は原則として契約更新後についても保証人の債務責任を認めている。即ち、「特段の事情のない限り、保証人が更新後の賃貸借から生ずる賃借人の債務についても保証の責を負う趣旨で合意されたものと解するのが相当であり、保証人は賃貸人において保証債務の履行を請求することが信義則に反すると認められる場合を除き、更新後の賃貸借から生ずる賃借人の債務についても保証の責めを免れない」(最高裁平成9年11月13日判決)と判示した。最高裁判決の原則から言えば、相談者は家主からの滞納家賃請求に応じなければならないことになる。

 しかし、最高裁は同判決で例外として「特段の事情」がある場合は保証債務を免れることが出来ると云っている。それは、どういう場合なのか。例えば、「賃貸契約に2ヶ月の賃料の支払を怠った場合に無催告解除が出来るという特約があって、更新までにそれを上回る高額の延滞賃料が発生したにも関わらず、漫然と契約を解除しないで法定更新をして、このことによって延滞額が更に高額になった場合について、このような場合についてまで連帯保証人に責任を負わせることはできない」(東京地裁平成10年12月28日判決)。このような場合が「特段の事情」として挙げられる。

 相談者の場合、家主はAの滞納家賃が高額になっているにも拘らず、保証人に滞納の事実を連絡せず、又は契約を解除するなどして保証人の損害を回避すべき義務があった。それにも拘らず、契約の更新を行い、その回避義務を怠って損害を拡大した責任は重い。これらは家主が保証債務の履行を請求することが信義則に反する「特段の事情」に該当する。よって、保証人は保証債務の支払義務は無いというのが結論である。



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