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第1次 山の開拓団の様子を報告しています。
(予定)
0 原爆と祖父
1 いざ未開の山へ
2 生き物たちが蠢く夜
3 挑戦者達の声
4 エピローグ
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「足が痛くておいねえから、揉んでくれよ」
昭和3年生まれの祖父が珍しく懇願してきました。
ベッドに横たわってもらい、脚をさすっていると
「広島に原爆が落ちた時、広島にいただよ」
えーーーっ、本当に!?
39年生きてきた私が初めて聴く話し。
というか祖父から戦争の話を聴いたことはなかった。
「大丈夫だったの?」
「大丈夫だったけど、あのあたりの子どもはみんな死んじゃった。死んだ人を火葬しただよ。あれは本当に大変だった」
「原爆が落ちた時は何していたの?」
「大野浦にいただよ。学校で勉強してただよ」
「何の勉強?」
「それは秘密だっぺよ。あの頃は秘密のことが多かった」
「どんな秘密?」
「それはでえじ(大事)なことだよ。潜水艦の秘密をもらしちゃいけねえから」
「ちなみにどこの軍なの?」
「大日本帝国の海軍」
「いつ千葉に戻ってきたの?」
「10月くらい。残って残務処理や人を助けてただよ、家では死んだと思っていただよ。」
今まで聞いたことのない過去をポツリ、ポツリ話してくれた祖父。
過去を思い出すことに疲れたのか、
秘密を話せてスッキリしたのか、
スーッ、スーッと寝息を立てていた。
波の音を聴きながら実感する。
無数の奇跡と、
数えきれないたくさんの想いが、
紡がれて生きている
今。
翌日から新たな風が未開の山に吹き始めます
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