ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

「山羊・・それって・・もしかして・・シルビア?」

2011-08-13 21:56:13 | 芝居
7月17日文学座アトリエで、オールビー作「山羊・・それって・・もしかして・・シルビア?」をみた(演出:鵜山仁)。

妻スティーヴィーが居間に花を飾っている。これからここでテレビ番組の撮影があるらしい。夫マーティンが入ってきて、
50歳になったばかりだが最近忘れっぽくなったと言う。二人は睦まじく語り合うが、夫は何やら落ち着かない。ついに彼は
彼女に告白する。自分は或るヤギに恋している、と。しかし妻は冗談だと思い、笑って出てゆく。

そこに40年来の友人ロスがやってきてテレビカメラとマイクをセットし、インタヴューを開始。今週マーティンの身に
起きた3つの大きな出来事、仕事上の成功と、それに関連して賞を贈られたこと、そして50回目の誕生日を迎えたこと
について聞こうとする。ところがマーティンはインタヴュアーであるロスの言葉をおうむ返しにするばかりで上の空。
ロスはインタヴューを打ち切り、どうしたのかと問い詰める。
マーティンは話し始める。夫婦で憧れの田舎暮らしをする準備のため、一人で田園地帯に行って土地探しをしていた時、
「彼女」に会ったと・・。「彼女」の写真を見せられたロスは驚いて言う、「これはヤギだ・・」。

ここで暗転。次のシーンでは夫妻と息子のビリー(18歳)がいて、妻はロスから来た手紙を読み上げる。ビリーはゲイだが
「僕の相手は少なくとも人間だ」とショックを隠さない。二人は彼を外に追いやり、妻は夫を問い詰める。夫はロスにした
話を繰り返し、また、そういう人が集まるセラピーの会合に出た時の話をする・・。
妻はショックを受けるたびに立って瀬戸物の置物などを床に投げつけるので、部屋の中は次第にメチャメチャになってゆく。
しまいに妻は「あなたは私を壊してしまった。あなたを道連れにしてやる」と言い残して出てゆく。
ここまでは予想通りの展開だったが・・。

息子が入ってきて、こんなお父さんを「それでも僕は愛している」と抱きつき、二人は熱く抱擁しキス・・。そこにロスが
やってきて、「何だ、伝染病か?」と驚き、「病気だ、信じられない」を繰り返す。
そこに妻が戻ってくるが、彼女が引きずっていたのは・・!?

三人ともどうしようもなく変だ。異常なほど夫を愛する妻、妙な息子、息子や赤ん坊まで性愛の対象になりうると言う
気持ちの悪い夫。この男、何度も「ああ神様!」と口走るが、自分でも何が何やら分からなくなっているようだ。

一言で言えば獣姦がテーマだが、それだけでもおぞましいのに父と息子も何やら怪しげになってくるし・・。
いわゆる異化効果ってやつ?
演出の鵜山仁の言葉を紹介すると、「ブルジョワ市民社会のお行儀の良い価値観と、本来恋愛の持つ原初的で無頼なエネルギー
との衝突を、客間喜劇のパロディという演劇的文脈に置き直すことで、抱腹絶倒の笑劇でありながら神話的不条理の深淵と
直面する際どい境界線に我々を誘ってくれる」んだそうだ。
フーン、難しいんですねえ。私の生まれた地方ではこんな時「せからし!」って言うんですよ。それに客席は抱腹絶倒
という雰囲気じゃなかったけど・・。

役者に関しては、文学座の団員の演技力は本物。みな声もよく通る。演技はまあまあだが発声がなってない他の劇団とは
格が違うし、逆に発声だけで演技ゼロの劇団四季とは全然比べものにもならない。
息子ビリー役の采澤靖起は初めて見たが、クリアな演技。今後が楽しみな人がまた一人増えた。





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