ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

ワイルダー作「わが町」

2011-02-03 21:32:00 | 芝居
1月13日新国立劇場中劇場で、ソーントン・ワイルダー作「わが町」を観た(演出:宮田慶子)。

20世紀初頭、アメリカの片田舎で暮らす人々の日常が淡々と描かれる。
みな善良で親切で、良き隣人たち。不幸な過去を背負っているため心を閉ざし、影のある人はいるが、悪人は一人もいない。
ジョージとエミリーは幼なじみで、そのまま成長し、恋に落ち、みんなに祝福されて結婚する。が、9年後、2人目のお産でエミリーは命を落とす。
死んだ彼女は彼岸に渡り、死者たちと再会する。そしてそこから死者の目で人々の生活を眺める。
彼女にはみんなが何も分かっていないように見える。みんなあんなに忙しそうに、慌しく動き回って・・・。

死者たちは死んでから時間がたつにつれ、現世のことに対する関心を少しずつ失ってゆく。
その描写が面白い。東洋風に言えば、死んで煩悩から解放される、ということか。愛もまた煩悩・・・そう考えると悲しい・・。

実は筆者は、大学入学早々英語の授業でこのテキストを読まされたので、大昔のことではあるが、だいたい筋は覚えていた。

舞台監督(小堺一機)の説明の合い間に芝居がこま切れに「見せられる」という感じなので、連続性がなく、感情移入が難しい。

父2人がまずい。特にジョージの父親は、必要以上に皮肉っぽく人生に疲れた男でなく、もっと魅力的な父親像を作れるはずだ。
エミリーの父役の人はセリフが不明瞭で時々聞き取れない。
エミリー役の人は若く元気一杯だが、終始声が高過ぎてわざとらしい。イントネーションも時々おかしい。
音楽とピアノ演奏(稲本響)はよかった。
現代風に、語りをなくして必要最小限のことだけを字幕で示してくれたら、3時間以上もかかるこの芝居もずっと短くなっただろうに。

アメリカではこの芝居は人気があり、よく上演されるらしいが、筆者には少々教訓ぽい感じがして居心地が悪かった。
もちろんラストには泣かされたが、また観たいとは思わないかも。
他の人はともかく、筆者のように死を常に身近に感じている者には特に観る必要もない。
死の想念が頭から離れず、現実生活にさえ支障をきたすこともあったくらいだから。
そういう意味では、むしろこういう作品を書いた作者の気持ちがよく分かる気がする。
葬式が好きだと書いたリルケを思い出した・・。

コメント (3)    この記事についてブログを書く
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3 コメント

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突然失礼いたします (マドモアゼル小平)
2011-02-08 13:48:51
突然の書込みお許しください。「斉藤優子の観劇日記」からこちらに入りましたが、筆者のお方は、先週土曜日(2月5日)に、京王新線初台のホームでばったりお会いした優子様でしょうか? 私は夕鶴を観終わって楽器をかついでおりました。 教えてください!
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そうです、私です! (yuko)
2011-02-08 17:11:12
マドモアゼル小平さま
お忙しいのに拙文をお読み下さってありがとうございます!この間はお会いできてうれしかったです。あの時のことも書くつもりですが、その前にまだ2つ書かないといけないものがたまってて・・。どうぞ今後ともよろしくお願いします。
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ありがとうございます! (マドモアゼル小平)
2011-02-09 23:57:18
そうだったのですね!文章が、想像とは違ってハードボイルド的なので、もしや男性でぜんぜん違う人だったらどうしようと思っていたところでした。じっくり読ませていただきます~。こちらこそどうぞよろしくお願いいたします。
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