1月29日東京芸術劇場シアターイーストで、蓬莱竜太作「だからビリーは東京で」を見た(モダンスイマーズ公演、演出:蓬莱竜太)。
長野から上京して大学の経済学部に通っている凛太朗(名村辰)は、ミュージカル「ビリー・エリオット」を見て感動したことから、小劇団のオーディションを
受ける。彼は、その劇団の公演を見たこともないし、戯曲という言葉も知らない。だが団費月一万円を払うと答えると、即合格。実は、オーディションを受けに来たのは
彼一人で、団費を払ってくれるだけで劇団は助かるのだった。
座付き劇作家能見(津村知与支)はスランプ気味。「書けない」とつぶやき、苦悩。だがこれはいつものことで、みんなには見慣れた光景。
彼の書く芝居は、お客にわけがわからないと言われるので、もっとわかりやすいものをやろう、とみんなで決めたはずだが、今回の台本もまた、さっぱりわからない上に、
何より全然面白くないのだった。だがなぜか凛太朗は、稽古しながら芝居の面白さを感じ、のめり込んでゆく。
団員はその他女3人男1人。真美子(伊東沙保)と乃莉美(成田亜佑美)は小さい頃からの友人で、二人でこの劇団を立ち上げた。だが二人の関係は複雑だった。
乃莉美が長井(古山憲太郎)のことを好きだと知っていながら、真美子は彼と同棲を始める。
加恵(生越千晴)は、この劇団の将来が見えず、別の劇団の面接を受けたりして模索中。韓国人の恋人がいて、スマホで彼と話す時も頑張って韓国語を使うが、
言葉だけでなく文化の違いもあって、なかなか難しそうだ。
凛太朗は定期的に、父親(西條義将)が一人で暮らす実家に帰る。父は居酒屋をやっており、アル中で、母とは別居中。親子の関係もあまりうまくいっていない。
このように、みんな、何かしら問題を抱えている。そこに、新型コロナがやって来る・・・。
それぞれの状況が変わってゆく。長井はオンラインでの家庭教師の仕事が成功し、収入大幅アップ。
凛太朗は卒業してウーバーか何かのバイトをしている。みんなには内緒だが、加恵と深い仲になっている・・。
オンラインでのミーティング、ウーバー等々、いつもながら現在の社会状況をすぐさま取り入れている。
そういうのを観客は求めているのか。そして面白がるのか。むろんそれだけにとどまらず、人と人との関係をしっかり描いているから見応えがあるわけだが。
この会場で全席自由は非常に珍しい。しかも満席!東京都の新規感染者数は連日1万人を超えているというのに。みんな芝居に飢えているのか。
評論家の山本健一氏が、作者はこの作品を「私戯曲のように」描いている、と書いていた。私小説ならぬ私戯曲というわけだ。
確かにスランプに陥る劇作家など、真に迫っている(笑)。
加恵が電話で韓国語を話す時、字幕に和訳が出るのも当然の配慮だが面白い。
音楽は「オンブラマイフ」ばかりで少々うんざり。劇作家がパンフレットに書いているように、今回「なんか優しいものを造りたいなぁ」と思ったので、
この選曲になったのだろう。でもそれにしたって、ほかにもいろいろあるでしょう。
個人的には、少々退屈だった。どの人物像にも、もう少し深みがほしい。
蓬莱竜太の作品としては、ちょっと期待はずれ。彼もまた、現在スランプ気味なのだろうか・・・。
初めて彼の「まほろば」を見た時の衝撃を思い出す。
田舎の母は旧家の後継ぎとなる孫を切望している。帰郷した娘(秋山菜津子)が手帳を見ていると、そばから小学生の女の子がのぞき込んで、
何気なく気づいたことを口にする。それを聞いて彼女は、自分が妊娠しているかも知れないことに初めて気づくのだった。
その後、秋山さんが畳に座る時の座り方が微妙に変わったのも、おかしくて忘れられない。
長野から上京して大学の経済学部に通っている凛太朗(名村辰)は、ミュージカル「ビリー・エリオット」を見て感動したことから、小劇団のオーディションを
受ける。彼は、その劇団の公演を見たこともないし、戯曲という言葉も知らない。だが団費月一万円を払うと答えると、即合格。実は、オーディションを受けに来たのは
彼一人で、団費を払ってくれるだけで劇団は助かるのだった。
座付き劇作家能見(津村知与支)はスランプ気味。「書けない」とつぶやき、苦悩。だがこれはいつものことで、みんなには見慣れた光景。
彼の書く芝居は、お客にわけがわからないと言われるので、もっとわかりやすいものをやろう、とみんなで決めたはずだが、今回の台本もまた、さっぱりわからない上に、
何より全然面白くないのだった。だがなぜか凛太朗は、稽古しながら芝居の面白さを感じ、のめり込んでゆく。
団員はその他女3人男1人。真美子(伊東沙保)と乃莉美(成田亜佑美)は小さい頃からの友人で、二人でこの劇団を立ち上げた。だが二人の関係は複雑だった。
乃莉美が長井(古山憲太郎)のことを好きだと知っていながら、真美子は彼と同棲を始める。
加恵(生越千晴)は、この劇団の将来が見えず、別の劇団の面接を受けたりして模索中。韓国人の恋人がいて、スマホで彼と話す時も頑張って韓国語を使うが、
言葉だけでなく文化の違いもあって、なかなか難しそうだ。
凛太朗は定期的に、父親(西條義将)が一人で暮らす実家に帰る。父は居酒屋をやっており、アル中で、母とは別居中。親子の関係もあまりうまくいっていない。
このように、みんな、何かしら問題を抱えている。そこに、新型コロナがやって来る・・・。
それぞれの状況が変わってゆく。長井はオンラインでの家庭教師の仕事が成功し、収入大幅アップ。
凛太朗は卒業してウーバーか何かのバイトをしている。みんなには内緒だが、加恵と深い仲になっている・・。
オンラインでのミーティング、ウーバー等々、いつもながら現在の社会状況をすぐさま取り入れている。
そういうのを観客は求めているのか。そして面白がるのか。むろんそれだけにとどまらず、人と人との関係をしっかり描いているから見応えがあるわけだが。
この会場で全席自由は非常に珍しい。しかも満席!東京都の新規感染者数は連日1万人を超えているというのに。みんな芝居に飢えているのか。
評論家の山本健一氏が、作者はこの作品を「私戯曲のように」描いている、と書いていた。私小説ならぬ私戯曲というわけだ。
確かにスランプに陥る劇作家など、真に迫っている(笑)。
加恵が電話で韓国語を話す時、字幕に和訳が出るのも当然の配慮だが面白い。
音楽は「オンブラマイフ」ばかりで少々うんざり。劇作家がパンフレットに書いているように、今回「なんか優しいものを造りたいなぁ」と思ったので、
この選曲になったのだろう。でもそれにしたって、ほかにもいろいろあるでしょう。
個人的には、少々退屈だった。どの人物像にも、もう少し深みがほしい。
蓬莱竜太の作品としては、ちょっと期待はずれ。彼もまた、現在スランプ気味なのだろうか・・・。
初めて彼の「まほろば」を見た時の衝撃を思い出す。
田舎の母は旧家の後継ぎとなる孫を切望している。帰郷した娘(秋山菜津子)が手帳を見ていると、そばから小学生の女の子がのぞき込んで、
何気なく気づいたことを口にする。それを聞いて彼女は、自分が妊娠しているかも知れないことに初めて気づくのだった。
その後、秋山さんが畳に座る時の座り方が微妙に変わったのも、おかしくて忘れられない。
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