令和3年9月15日(水)
猿 酒
俳句歳時記に、「猿酒」が秋の季題として記載されていた。
全く知らない季語に思わず、目が釘付けとなる。
猿が木の実を採り、樹の空洞や岩の窪み等に貯えて、
それが雨や露を含み発酵する。数日後に酒のような甘美
な樹液となったものをいう。 猟師や樵夫(きこり)が
これを求めて呑んだという。 伝説的で神秘的な中国の
話から伝わる季題である。
自然発酵したものが酒となり霊薬との口碑がある。
事実はともかく、深山らしい風情が在って面白い。
野生の猿が食料を貯める習性はないといわれ、猿酒等は
存在しないと思われる。 自然界では酵母が多く存在し
ているので、果実等が自然に落下して発酵する事はよく
在る。
イギリスでは以前、醗酵した果実を啄んだ鳥が酔っ払って
物に衝突死する事故が相次いだとの記事がある。
アフリカのギニアでは野生のチンパンジーが集まり、果実
を採取した後の穴に樹液が残り自然発酵した樹液を呑んで
いるのを見たという報告があった。
亦、日本ではカブトムシやクワガタ等の昆虫が樹木の下に
置いた果実を求め集まるが、これが酵母により発酵したもの
を好んで吸う(飲む)こともあり得ると報告される。
いずれにしても、動物達が樹液の発酵したものを好んで飲む
ことは在り、「猿酒」はまんざら伝説話でもなさそうである。
猿酒という名の酒は現実に販売されているようで、驚く、、
今日の1句(俳人の名句)
猿酒をくすねて僧と見れば見ゆ 伊藤 通明
猿酒にさも似し酒を醸しけむ 水原 秋櫻子