この書を取ったのは二つの理由、ひとつはどうしても消せないあの記憶。2年前、埼玉県議会で自民党と県民会議所属の県議により原発再稼働を求める意見書が採択された。震災原発事故による甚大な被害、今なお避難生活を強いられている福島の人たち。全国の原発立地の自治体においても再稼働反対や慎重な声、再稼働差し止めの判決も示されているなかでの愚行である。そして、もうひとつは最近の経団連会長の度重なる発言。脱原発の声を「感情的な反対」と言い切る。そうした動きに、あなた方は間違っている。「経済性を無視した精神論」ではない、ということを読み取りたかったのだ。経済学の視点から検証するというだけあり、各種のデータ・図表や国内外の文献の引用、海外の事例も多く解読に苦労した。ただ、それは<数字に基づいた建設的な議論を喚起するきっかけに>と、結論ありきではないからか。目を止めたのは<原発推進は温室効果ガス排出削減を実際もたらしたか?>の部分。これはノーであり、その最大理由は関係する官庁組織・企業が「原子力・化石燃料ムラ」の住人で互恵関係にあるという分かりやすい説明。そのほかにも<原発ゼロによる国富流失論の間違い><脱原発が電力需給と電力価格に与える影響><原発立地地域の経済と雇用>なども深読みに値する。よく言われている原発コストについても<万一の事故の被害を社会に転嫁することが可能な不公正な状況>など、頭に詰め込んだ。折を見て読み返し、脱原発の正当性を確信できる1冊としたい。統一地方選挙の時期が来た。あのことは忘れていない。