90歳のアール・ストーン(クリント・イーストウッド)は、家族を二の次にして仕事一筋に生きてきたが、商売に
失敗した果てに自宅を差し押さえられそうになる。そのとき彼は、車で荷物を運ぶだけの仕事を持ち掛けられる。
それを引き受け、何の疑いも抱かずに積み荷を受け取っては運搬するアールだったが、荷物の中身は麻薬だった。
90歳近い退役軍人で園芸家のおじいちゃんが麻薬の運び屋だった・・・という実話に基づくストーリーだが
人生そのものを描く感動的な話だった。
多くの場面で、タタことアール爺さんは車を運転している。慣れない犯罪行為に素人ならビクビクしそうなものだが
麻薬を運んでいると知ってからも、カーラジオに合わせて鼻歌混じり、悠々とドライブを楽しんでいるようにさえ見える。
重荷を運ぶ道のりも淡々とマイペースにこなし、 爺さんはよく若者にアドバイスする。説教?程では無い。でも軽く投げ
かける言葉に、人生90年の重みがある。チンピラに「やりたいことを見つけろ。ここにいちゃいけない」と愛ある言葉・・
自身の反省から「家族を大事にしろ。俺みたいになるなよ」とも。老境の今「間違いだらけの人生だった」人は誰でも
いつか死ぬ。 父と娘の確執はイーストウッド作品でよく描かれるが、本作では本物の娘さんが演じているのも味わい
平気で差別用語を口にするガサツさは「グラン・トリノ」を思い出す。また、色気が全然枯れてないのが凄い。
若い娼婦と楽しい夜を過ごす(90才よ90才。凄すぎないか)。 イーストウッドは渋い硬派ばかりじゃなく、チャラい
色男も演じてきた人なので「グラン・トリノ」同様、本作もイーストウッドの俳優人生の総括のような映画だと思う。
年輪を重ねた男の一言一言には、 とても深みが
あり聞き逃せない。この映画を観れて、本当に良かった。 ☆☆☆☆☆