司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

最初の取締役の任期

2007-05-23 18:13:29 | 会社法(改正商法等)
Q.会社法施行前に設立された株式会社の最初の取締役の任期に関して、定款の附則の定めを削除すれば、会社法第332条第1項本文の適用により、会社成立後「2年以内~」となるのか。

A.会社法施行時に現任する取締役の任期については、整備法第95条の適用がある。したがって、会社法施行後の定款変更がこの規定の適用を排除するものであるか否かがポイントである。

 取締役の任期に関する一般的な定めである「2年以内~」を「10年以内~」に変更することは、旧商法下ではできなかったことであるから、整備法第95条の適用を排除する意思表示である。立案担当者は、「凍結状態」を「解凍する」行為であると表現している(相澤哲編著「立案担当者による新・会社法の解説」(商事法務)349頁)。

 しかし、最初の取締役の任期についての附則の規定を削除しても、原則である旧商法第256条第2項の適用に戻るだけで、整備法第95条の適用を排除することにはならず、「1年」の縛りが残るものと解される。「凍結状態」は解凍されないわけである。

 したがって、会社成立後「1年以内~」での任期満了を避けて、「2年以内~」としたいのであれば、定款変更議案において、附則の定めを削除するのみならず、整備法第95条の適用を排除する意思を明示する必要がある。
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「憲法学から見た商事法」

2007-05-23 16:45:55 | 会社法(改正商法等)
 ビジネス法務2007年7月号の巻頭エッセー「地平線」に棟居快行大阪大学大学院高等司法研究科教授が「憲法学から見た商事法」を寄稿されている。言い得て妙の、鋭い視点である。

 「わが国の商法典は・・・官権的・規制的発想が強く見られ・・・ツギハギ状の議員立法は・・・国家による経済政策の手段であることを露骨に見せつけたゆえに、克服されるべきであった」

 正しく、そのとおり。

 「行政による事前規制から司法による事後規制へという行政改革のかけ声は・・・司法に『あるべき私的自治』の姿の決定権を、良くも悪くも与えることに帰着する。ところが司法による正義は、事の性質上、ドメスティックで弱者保護的である・・・ミクロの正義は達成されるかもしれないが、国際標準に準拠した公正で透明なルールとは言い難い・・・資本主義の競技場にあっては、『結果の平等』でなく『チャンスの平等』がひたすら志向されるべきであり、裁判所を含む国はそこだけを監視する行司役に徹すればよい」

 「あるべき私的自治」の在り方を立法、行政が決めるというのも背理であると思われるので、司法に委ねざるを得ない。しかし、「ミクロの正義は達成されるかもしれないが・・・」は、確かにそのとおり。会社法改正の柱が、「やりたい人がやりたいことをできるように」ということだったので、ある意味無制約に近い自由が付与されてしまったたわけである。しかし、

 「新会社法・・・には政令省令委任事項も多く、それが国際標準の取り込み口として機能するのか、それとも隠れた官権的規制の手段となるのか気がかりなところである・・・プレーヤーの意識改革が決め手であることは疑いない」

 本来的に言えば、「あるべき私的自治」の在り方を司法に委ねるのではなく、プレーヤーである会社及びサポーターである法律専門家等が自らあるべき秩序を構築しようという意識を持たねばならないと言えよう。
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「Q&A新貸金業法の解説」

2007-05-23 12:08:50 | 消費者問題
大森泰人編「Q&A新貸金業法の解説」(きんざい)
http://store.kinzai.jp/book/11034.html

 立案担当者による簡明な解説書である。
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