司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

権利能力のない社団が提起した建物の共有持分権確認請求訴訟において,共有持分権の構成員全員への総有的帰属の確認を求める趣旨か否かについての釈明権の行使(最高裁判決)

2022-04-12 18:35:57 | 不動産登記法その他
最高裁令和4年4月12日第1小法廷判決
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=91095

【判示事項】
権利能力のない社団であるXが提起した建物の共有持分権確認請求訴訟において控訴審がXの請求につき共有持分権の構成員全員への総有的帰属の確認を求める趣旨か否かについて釈明権を行使することなく棄却したことに違法があるとされた事例

「しかしながら、本件の第1審及び原審において、当事者双方は、専ら本件合意の存否に関して主張をし、これを立証の対象としてきたものであって、上告人が所有権等の主体となり得るか否かが問題とされることはなかった。権利能力のない社団がその名において取得した資産は、その構成員全員に総有的に帰属するものであるところ(最高裁昭和35年(オ)第1029号同39年10月15日第一小法廷判決・民集18巻8号1671頁参照)、当事者双方とも上記判例と異なる見解に立っていたものとはうかがわれない。
 そうすると、本件請求については、本件建物の共有持分権が上告人の構成員全員に総有的に帰属することの確認を求める趣旨に出るものであると解する余地が十分にあり、原審は、上記共有持分権が上告人自体に帰属することの確認を求めるものであるとしてこれを直ちに棄却するのではなく、上告人に対し、本件請求が上記趣旨に出るものであるか否かについて釈明権を行使する必要があったといわなければならない。」

事案の概要
https://www.courts.go.jp/saikosai/vc-files/saikosai/2022/jiangaiyou_03_919.pdf
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私立学校法の改正,実現するのか?

2022-04-12 14:15:10 | 法人制度
日経記事(有料会員限定)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD023FN0S2A400C2000000/

「文部科学省は私立学校法改正案の通常国会提出に向け準備を急ぐ・・・・・ここまでの議論は異例の経過をたどった・・・・・私学側は猛反発した・・・・・提言が実現しても理事会が法人運営の中心となる意思決定機関、評議員会が諮問機関という「基本構造は変わらない」・・・・・「本質的には何の前進もなかった」」(上掲記事)

 さて,現在パブコメ中であるのだが・・・どうなりますか?

cf. 令和4年4月5日付け「私立学校法改正法案骨子案」
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デジタル手続法と登記事項証明書の添付省略

2022-04-12 13:13:18 | 不動産登記法その他
 コメント欄にコメントがあったので,整理する。

cf. 平成28年4月1日付け「日本政策金融公庫を抵当権者とする抵当権設定登記の非課税証明」

 いわゆるデジタル手続法(令和元年法律第16号)の施行により,行政機関等は、添付書類の省略等を推進することとされている。

 例えば,国税関係手続においては,

cf. 国税関係手続における添付書類の省略に向けた取組について
https://www.nta.go.jp/information/other/shorui_shoryaku/index.htm

 コメント欄によると,登録免許税法施行規則の改正前第2条の2第2項が,「国税関係法令に係る行政手続等における情報通信の技術の利用に関する省令等の一部を改正する省令」(令和元年財務省令第36号)による登録免許税法の一部改正により削除(令和2年10月1日施行)されたことにより,日本政策金融公庫を抵当権者とする抵当権設定の登記申請において,債務者が法人である場合の非課税証明のための「登記事項証明書」の添付が復活したものとして,添付を求められたということである。

 しかし,これは,誤りである。

「情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律」(平成14年法律第151号)第11条によれば,

第三節 添付書面等の省略
第11条 申請等をする者に係る住民票の写し、登記事項証明書その他の政令で定める書面等であって当該申請等に関する他の法令の規定において当該申請等に際し添付することが規定されているものについては、当該法令の規定にかかわらず行政機関等が、当該申請等をする者が行う電子情報処理組織を使用した個人番号カードの利用その他の措置であって当該書面等の区分に応じ政令で定めるものにより、直接に、又は電子情報処理組織を使用して、当該書面等により確認すべき事項に係る情報を入手し、又は参照することができる場合には、添付することを要しない

とされているのであって,「法令の規定にかかわらず・・・添付することを要しない」のである。

 参考までに,先日パブコメに付された「供託規則の一部を改正する省令案」において,供託手続において添付又は提示する登記事項証明書について,同条の規定に基づき,その添付又は提示を省略することができるように改められることとなる予定であるが,改正案を見ても,登記事項証明書の添付又は提示が必須であるようにしか読めないであろう。

cf. 令和4年2月1日付け「供託規則の一部を改正する省令案」

 というわけで,デジタル手続法の下での登記事項証明書の添付省略については,個別の法令を見ても一見明らかではないが,大本は,「情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律」第11条の規定である。
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