「規制改革推進に関する答申」に記載があったとおり,株式会社が発起人である場合の定款認証の際の実質的支配者の認定根拠資料の取扱いについて,日公連において改定がされた。
cf.
令和4年5月27日付け「スタートアップに関する規制・制度見直し(法人設立手続の迅速化・負担軽減)」
問 発起人が法人である場合などの実質的支配者の認定根拠資料としては、どのようなものが考えられるか。
答
1 嘱託人に対し、実質的支配者の認定根拠資料の提出を求める際には、発起人である法人の株主の中に、 犯罪収益移転防止法施行規則第11条の要件(発起人法人の2分の1を超える議決権の保有)をみたす者がいるかどうかを的確に把握する必要があるが、他方で、嘱託人に不必要な負担を課したり、不必要に個人情報を取得したりすることは避けるべきである。
2 従前は株主名簿の提出を求めることもあったが、株主が多数いる場合に嘱託人に不必要な負担を課すものであるという批判を招いた。また、会社法上、株主名簿の閲覧、謄写請求権があるのは、株主及び債権者とされており(会社法125条)、一般に公開されているものではなく、個人情報保護の観点からも問題がある。このような株主名簿の性質を考慮すると、発起人が法人である場合の実質的支配者の認定根拠資料として、株主名簿にこだわるべきではなく、むしろその提出を求めることが不適切となる場合がある。
3 実質的支配者の認定根拠資料となる書類は、当該会社のしかるべき立場の者が作成名義人となっており、所要の事項(実質的支配者である株主の名前・住所、保有株式数、議決権割合など)が記載されているもので足りる。
その書類の名称も、「証明書」のみならず、「上申書」、「報告書」、「陳述書」等であってもよい。この場合には、当該しかるべき立場にある作成者が当該会社の株主名簿に記載された内容に相違ない旨を付記し、署名又は記名捺印することになるが、 嘱託人とのやりとりや関係資料から成立の真正について心証がとれるときは、記名のみで差し支えない。
4 そのほか、実質的支配者の認定根拠資料として、株主リストを利用することも考えられる。 株主リストとは、 ①登記すべき事項につき株主総会の決議を要する場合に、議決権数上位10名の株主又は議決権割合が3分の2に達するまでの株主のいずれか少ない方の株主の氏名又は名称、住所、それぞれの保有株式数・議決権数・議決権数割合を代表者が証明したもの(商業登記規則61条3項)、②登記すべき事項につき株主全員の同意を要する場合には、株主全員について、その氏名又は名称、住所、株式数、議決権数を代表者が証明したもの(商業登記規則61条2項)が作成され、登記の添付書類となるものである。ただし、これには、実質的支配者でない者が掲載されることもあり得るから、そのような場合には、実質的支配者となるべき者の記載部分のみを提出させるなどの配慮も求められる。
5 なお、嘱託人から申告受理及び認証証明書作成・交付の申請があれば、実質的支配者申告書添付資料の写しも同証明書に添付して交付することとなるが、その添付資料として、実質的支配者となるべき者以外の氏名等が記載された株主リスト等がある場合、それをそのまま証明書に添付すると、それが株主及び債権者以外の者に閲覧謄写される可能性があるから、実質的支配者となるべき者の記載部分のみの抄本を作成して交付するのが相当である。
既述のとおり,「株主リスト」の場合,相互保有株式が除かれるが,犯収法における「実質的支配者」を検討する場合には,含むものとされているので,このような運用が妥当でない場合があり得ることに留意すべきである。
上記Q&Aによると,詰まるところ,3の「証明書」等により,実質的支配者に該当する者のみが記載された書面で足りることになり,申告書の内容とほぼ同じであり,余り意味をなさないような・・・。
また,作成名義人となる「しかるべき立場の者」とは,発起人である株式会社の代表者であることが通常であろうが,そうでない場合を認める趣旨なのであろうか?
個人情報保護の観点を気にするのであれば,「実質的支配者の認定根拠資料」を「申告受理及び認証証明書」に合綴することをしなければよいと思われる。