僅かに滲み出る樹液に、カブトムシが群がっていました。10頭以上はいたと思います。ふつう、このような場所には、カナブンをはじめスズメバチの仲間など「樹液酒場」の常連が集まっていますが、このときは純粋にカブトムシだけでした。
少し離れた場所では、交尾しているカブトムシもいました。♀は(知らぬ顔で?)樹液を舐めています。交尾、産卵、脱皮、羽化、捕食、被食、飛翔などダイナミックな瞬間を撮りたいと思いますが、辛抱が足りないのでなかなか撮れません。
恥ずかしい話ですが、古希に近い年齢になっても、カブトムシやクワガタムシを見つけると、子どものころと同じように無条件に興奮して嬉しくなってしまいます。もちろん、捕まえて持ち帰ったりはせず写真を撮るだけですが…。ある時まで、カブトムシやクワガタムシは、アセチレンガスの匂いの漂う夜店で、指をくわえて眺めるだけの存在でした。この世の中のどこに行けばあのような虫がウジャウジャいる夢のような世界があるのか、想像もできませんでした(両親ともに、虫には興味がなかったようです)。
ところが、小学6年生の夏、下町から山に近く畑のなかに家が点在する郊外(鷹ケ峰の光悦寺まで徒歩15分ほど)に引越し、まわりの子供たちがカブトムシやミヤマクワガタ、ノコギリクワガタなどを籠にいっぱい持っているのに驚き、「絶対に口外しない」と約束して門外不出の秘密の場所を教えてもらい、翌夏には一人で取りにいきました。自転車と山歩きで1時間ほどかかり、現地に到着したときにしらじら明けるように朝の4時ごろに出かけたと思います。母親に作ってもらった布の袋に獲物をたくさん入れ、意気揚々とペダルをこいで帰途につきましたが、耳元でする大きな羽音に、ほとんどのカブトムシが袋から抜け出して飛び去ってしまっているのに気付いたのも、懐かしい思い出です。
《僅かに滲み出る樹液に群がるカブトムシ 2016/07/16》
《交尾するカブトムシ 2016/07/16》