ヒゲジイのアル中よもやま話

断酒を始めて早7年目。このブログは回復プロセスの記録と脳のリハビリを兼ねて綴っています。やはり、まだチョット変ですかネ?

感覚の回復が進めば “勘” が働く?

2019-02-08 06:25:13 | 自助会
 先日、AA のミーティングで断酒歴4年の、まだ若い R 氏がこんな話を語ってくれました。

「感覚の変化にビックリしています。酒を飲んでいた頃は朝メシなど摂ったことがなかったのに、今は毎日しっかり食べています。美味しいんですよ、これが!
 自分のところはアル中家族なんで、母親と諍いがしょっちゅうあるんですが、自分的には怒りを翌朝まで引き摺らなくなりました。イザコザがあったら、以前ならいつまでも怒りを引き摺っていました。それが今は “まっ、いいか!” でサラッと流せるようになっています。」

 普通の人には何の変哲もないごく当たり前の話としか聞こえなかったでしょう。が、私にはとても意味のある話でした。

 R 氏は、断酒を始めてから家族と離れ一人暮らしをしているそうです。一人暮らしの20代半ばの男性で、かつて酒飲みだったときたら朝メシ抜きが当たり前かもしれません。そんな彼だからこそ断酒後に味わった感覚の変化は驚きなのでしょう。感情のコントロールについても感覚の変化に伴うものと捉えていました。

 思えば私も、断酒を始めて最初に気づいたのは体調の回復でした。体調の回復は感覚ですから当然、感覚の方もそれなりに回復が進んでいたのでしょうが、そんなふうに意識したことはありませんでした。

 実際は、視力が改善したとか、嗅覚が戻ったとか、体調の回復という変化に並行して感覚にも色々変化がありました。

 感覚の劇的変化と言ったら断酒して10ヵ月目にあった “憑きモノ” が落ちた体験でした。この体験で脳からアルコールが抜け切ったと実感しましたし、その直後から道のポイ捨てゴミが目障りになってゴミ拾いを始めることにもなりました。それにもかかわらず迂闊にも、感覚の変化が認識の変化をも齎(もたら)すとは考えてもみませんでした。

 感覚の変化に意味がありそうだとはっきり意識に上ったのは断酒して4年経った頃でした。ひょんなことから “勘” がよく働くようになったのでは(?)と気づいたのです。これにはブログ記事の執筆で記憶機能を鼓舞していたこともプラスに働いていたと思います。

 当初、五感を統合した体感の変化かも(?)と考えていましたが、直感的に感じ取ったり、判断したりする心の働きということなので “勘” の方がより相応しいと考えました。
(なに、“勘” という言葉が思いつかなかっただけの話ですが。)

 ところで、AA の『アルコホーリク・アノニマス』第6章にこんな一節があります。

「心の落ち着きという言葉がわかるようになり、やがて平和を知る。・・・(中略)・・・かつては私たちを困らせた状況にも、直感的にどう対応したらいいのかがわかるようになる。」

 これは AA の説く、アルコール依存症(アル症)者の回復のイメージです。“心の落ち着き” も “(心の)平和” も言ってみれば感覚です。特に下線部分は、理屈で考えていては絶対にあり得ない話です。第六感とも言われる “勘” 以外に考えられません。

 どうやら、感覚と記憶機能の回復が進んでまともになれば “勘” が鋭くなるようなのです。“勘” は大自然からの賜物ですから、人為的な “認知のゆがみ” に左右されることはありません。物事が自然に、ありのままに見えるようになるのももっともなのです。

 これはほぼ1年前から私が考えてきた仮説です。R 氏の話を聞いて益々意を強くしました。この仮説を検証しながら生きて行くのだと思えば、好奇心も楽しみもいや増します。そうそう、私ばかりか R 氏の今後も楽しみでなりません。

         *   *   *   *   *
 ものはついで、アル症者の自己中傾向について一言。

 酒はコルチゾールなどのストレス・ホルモンの分泌を亢進させます。これらによって交感神経の緊張が続いたら、わけのわからない危機感から自分以外の周りが見えなくなるようです。

 視野狭窄という言葉がありますが、謂わば “思考狭窄” を起こして自己中になってしまうのがアル症なのでしょう。“認知のゆがみ” が顕在化するのもまた然り、だと思います。


こちらの記事もご参照ください。
回復も感覚が導く?』(2017.12.15投稿)



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