「なぜうちのローに来るべきなのか」

2008-12-07 19:05:22 | 法科大学院関連
http://www.47news.jp/CN/200812/CN2008120501000920.html

文部科学省が国公私立の全74校から意見聴取したところ、19校が2010年度から入学定員を削減すると回答したことが5日、分かった。

削減を「検討中」としたのも49校で、法科大学院の約9割が定員を見直す意向であることが判明した。ただ各校とも具体的な減員数などは明らかにせず「横にらみ状態」(文科省幹部)といい、削減規模などの具体化が焦点となる。

法科大学院をめぐっては、中教審大学分科会の特別委員会が9月、自主的な定員削減や統廃合を推奨し、入学枠の縮小を目指すとした改革案を提言。これを受け10月から11月にかけて各大学院から意見聴取した。

定員削減を考えていないとした回答は6校あった。統廃合を検討しているとしたところは1校もなかった。

聴取内容では、定員規模が大きい大学院が率先して減らすべきだとする意見や、入学率や司法試験合格率が低迷している地方の大学院においても、地域の状況を踏まえて判断すべきだとする意見などが出た。



だそうですよ。なんだかなぁ、という感じがする。


一番引っかかるのが最後の部分。「定員規模が大きい大学院が率先して減らすべきだとする意見」や、「入学率や司法試験合格率が低迷している地方の大学院においても、地域の状況を踏まえて判断すべきだとする意見」。

「当初予定していた合格率より低いじゃないか」という「批判」に対して、まず「出口担当」の法務省サイドが「配慮」してくれた。合格率を、出願ベースではなく、実際に受験した数をベースにして高めになるようにしたり、批判を受けつつも何とか2000人前後の合格者を出したりしてきた。でもこの手法はもう限界に来ており、増員路線については開き直ってしまった。

となると今度は「入り口担当」の文部科学省が「豪腕」を振るう番である。それが「法科大学院の定員減らし」である。確かに入り口を絞れば、合格率の低下にも一定の歯止めがかかるし、そもそもの大失敗は、文部科学省が認可しすぎたことにあるわけで、ある意味正しい選択ではあろう。

でもその方法として「定員規模が大きい大学院が率先して減らすべき」というのは合理性が無くないかと。定員規模が大きかろうが、実績が出ている法科大学院なら減らす理由が無い。減らすべきは、「実績が伴わない法科大学院」であろう。そもそも競争原理が働いて、率が低い大学院は淘汰されていく、という前提で沢山のロースクールができたはずだ。そして3年間にわたり「競争」が行われ、その結果が今出てきているわけだ。この結果は各大学院の努力の結果であって正当に評価されるべきである。それを、「地方にもローは必要だ」という分かった様な分かんない様な理由を並べ立てて、「定員が多いローが悪い」というわけの分からないことを言い出すのは勘弁して欲しい。

おそらく、東大や慶應などの首都圏の大規模ローの定員を減らせば、「従来なら都心に残ったであろう優秀層が地方に流れてくる」=「そうすればうちのローの合格率も上がる」=「うまー」という思考を辿っているのが容易に想像ついて気分悪い。

首都圏の上位ローの定員を減らしても、あぶれた層が地方の名も無いローに流れるなんて「妄想」はしない方がいい。この点については1期生がすでに煮え湯を飲まされている。受験生が同じ轍を踏む分けない。合格率において、そして就職において圧倒的な「ロースクール間格差」が生じている状況で、ローのネームバリューを無視して進学先を決めるなんてありえない。それなら1年浪人して来年チャレンジ、それで駄目なら若いうちに就職しちゃう、というパターンが生まれるだけだ。結局、優秀層が益々法曹界から離れていくだけに終わる、というのが我が予想である。東大が凄いのは「東大」というブランド力があるからだ。それ以外でも何でもない。実際、過去3年間合格率では一橋に見事にストレート負けしているわけだが、それでも東大が永遠のナンバーワンなのだ。4大事務所はこぞって東大ロー卒を取り捲っている。これが実情であり、ブランド力である。

以上を前提にしつつ、優秀な受験生を呼び込むためには、そのローに行くだけの理由をロー側が提示しなければならない。これは学歴社会である日本では相当厳しいハードルだ。ロー入試の際に、「なぜ法曹を志望するのか」「なぜうちのローなのか」ということをステートメントなり、面接でロー側は受験生に問うたわけである。であるならば、今度はロー側が受験生に対し「なぜうちのローに来るべきなのか」を提示すべきである。それができないローは市場から退場すべきだろう(俺の意見というより、制度設計段階から元々そうだったはずだよね)

同時にローはもっと学部のキャリアセンターと連動して就職先の開拓に努力すべきだと思う。同時に受験生も「司法試験合格」=「裁判官・検察官・弁護士」というステレオタイプの発想はそろそろやめた方が良いかもしれない。アメリカのように、「法曹資格」をひとつの武器としてキャリアアップを狙うべきであろう。もっともこれは社会がそうならないと無理なんだけど(とある世界的超一流企業でさえ、「法務博士を採らない理由は、使いこなせないから」というのが現状である。使いこなせない理由はここでは触れない)。

土壌が違うのにアメリカ型理念の制度を「移植」しようとして不整合が出まくっているのが現状というのが良ーくわかる。一方で諸外国と比べても法曹の数が圧倒的に少ないという状況は変わっていない。法曹を増やす必要性自体も当初から変わっていない。当初の予定と決定的にズレが生じてしまったのは「(一部の)法科大学院に教育力がここまで無いとは」という点だ。きつい言い方になるが、これは厳然たる事実なんじゃなかろうか。「今いるローを中退して、もっと上位のローに再入学したいんですが」という悩みを持つ受験生が多いということを実績が低迷するローは真摯に受け止めるべきであろう。それが人の人生を預かった者の責任だと思う。「でかいローの定員減らせば」なんて言っている段階で終わっている。何とかすべきは「教育力」だと思う。自助努力が最初にくるべきだ。


それからいつまでも「ローで前期修習に相当する教育はなされている」ということをのたまうのはやめたほうがいいと思う。実際そうじゃないことは、ローの教員も、合格者も、修習所の教官も、弁護士会も知っているわけですよ。なのに、「前期修習相当の力はあるはずだ、だから前期修習はやら無い、そうしたら凄い馬鹿が実務に出はじめておじさんびっくる!あら大変!」、とかいう茶番劇をオールスターキャストで演じている。なら前期修習復活させりゃいいじゃねーかと。なんか問題あんのかと。ローと前期修習が非両立ってのは、「第一志望は譲れない」的に譲れない線なんですかと。


あ、そうか。財務省がお金出してくれないんだっけ!

そりゃ無理だー。
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