民法判例まとめ27

2016-05-07 17:35:23 | 司法試験関連

194条に該当する善意占有者の使用収益権

①  盗品又は遺失物(以下「盗品等」という)の被害者又は遺失主(以下「被害者等」という)が盗品等の占有者に対してその物の回復を求めたのに対し、占有者が194条に基づき支払った代価の弁償があるまで盗品等の引渡しを拒むことができる場合には、占有者は、右弁償の提供があるまで盗品等の使用収益を行う権限を有すると解するのが相当である。

②  けだし、194条は、盗品等を競売若しくは公の市場において又はその物と同種の物を販売する商人から買い受けた占有者が192条所定の要件を備えるときは、被害者等は占有者が支払った代価を弁償しなければその物を回復することができないとすることによって、占有者と被害者等との保護の均衡を図った規定である。

③  被害者等の回復請求に対し占有者が194条に基づき盗品等の引渡しを拒む場合には、被害者等は、代価を弁償して盗品等を回復するか、盗品等の回復をあきらめるかを選択することができるのに対し、占有者は、被害者等が盗品等の回復をあきらめた場合には盗品等の所有者として占有取得後の使用利益を享受し得ると解されるのに、被害者等が代価の弁償を選択した場合には代価弁償以前の使用利益を喪失するというのでは、占有者の地位が不安定になること甚だしく、両者の保護の均衡を図った同条の趣旨に反する結果となるからである。また、弁償される代価には利息は含まれないと解されるところ、それとの均衡上占有者の使用収益を認めることが両者の公平に適うというべきである。

最判平成12年6月27日 百選67事件

・①占有者が占有中に受けた動産の使用利益は誰に、また、どの期間分が帰属すべきか(回復の訴え提起後は、占有者は被害者等に使用利益相当額を支払うべきか、という問題でもある)、②被害者等から代価弁償を受けることなく占有者が動産を返還した後であっても、占有者はなお代価弁償を請求できるか、またその履行遅滞となる時点はいつか、が争点となった。

・193条・194条に基づき善意・無過失の占有者から盗品等の回復をするまでの間、その動産の所有権は原所有者に残っているのか占有者に移転しているのかという問題がある。

原所有者帰属説

本権者が無権利者からの転得者(占有者)に対して、動産の占有を回復する関係として処理される。

 → 使用利益の返還については、703条・704条または189条以下の適用の問題となるが、契約の巻き戻しの関係ではないので、189条以下の処理によるというのが一般。

 

 → 善意占有者は使用利益を取得できるが、回復の訴え提起後は悪意占有者として返還が義務付けられる(189条2項・190条1項)

占有者帰属説

占有者は返還するまでは、所有者として使用利益を取得する。

・本判決は、占有者の使用収益権を認めており、占有者帰属説から説明しやすい。しかし、所有権の所在につき全く触れていない。占有者の使用収益権の根拠を、所有権の所在ではなく、194条の立法趣旨に求めている(被害者等と占有者の保護の均衡を、動産の回復は認めるが、代価弁償をさせることで図ろうとしている)。

・占有者の使用収益権の根拠を194条に求めるのであれば、193条においては、動産の回収の訴えの提起後は占有者は使用利益の返還を義務付けられよう。

・代価弁償の法的性質

  → 請求権として考える(先に占有者側から、動産を返還するから代価を支払え、という請求ができるわけではない)

  → 代価弁償債務はいつから履行遅滞になるのか。本判決は、期限の定めのない債務とし、占有者側から履行の請求を受けたときから遅滞の責めを負うべき(412条3項)とした。本件においては、反訴提起時に遅滞になるのではなく、当初から本訴における抗弁として代価支払請求をしていたとして、履行遅滞の時期を原審の認定時よりも前倒しにした。

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民法判例まとめ26

2016-05-07 12:47:14 | 司法試験関連

前主の無過失と10年の取得時効

①  10年の取得時効の要件としての占有者の善意・無過失の存否については占有開始の時点においてこれを判定すべきものとする162条2項の規定は、時効期間を通じて占有主体に変更がなく同一人により継続された占有が主張される場合について適用されるだけではなく、占有主体に変更があって承継された2個以上の占有が併せて主張される場合についてもまた適用されるものであり、後の場合にはその主張にかかる最初の占有者につきその占有開始の時点においてこれを判定すれば足りるものと解するのが相当である。

最判昭和53年3月6日 百選65事件

・承継人には、特定承継人はもちろん、包括承継人も含まれる。また承継人に先立つ全ての占有者が含まれる。

・判例によると、所有者の占有をも併せて主張できるが、問題はないか。

  → Zが売買により取得した甲土地を19年間占有し、これをYに売却。ところが3ヶ月後にYの詐欺を理由に、売買契約を取り消し、即時にXに甲土地を売却し登記も移転したとする。そして1年後にXがYに対して甲土地の明渡しを求めた場合、どうなるか、という問題である。この場合、所有権に基づいて占有していたZの占有も併せてYは主張できるとすると、XはYとの関係では、時効完成前の第三者として扱われるので、1年しか占有していないYが登記なくしてXに土地所有権を対抗できてしまうのである。

占有改定・指図による占有移転と即時取得

①  無権利者から動産の譲渡を受けた場合において、譲受人が192条によりその所有権を取得しうるためには、一般外観上従来の占有状態に変更を生ずるがごとき占有を取得することを要し、かかる状態に一般外観上変更を来たさないいわゆる占有改定の方法による取得をもつては足らない。

最判昭和35年2月11日 百選66事件

・即時取得における「占有」の承継取得は、現実の引渡しに限るのかどうかという問題である。

  → 肯定説、否定説(判例)、折衷説(否定説に近い)が対立する。即時取得の善意無過失の判断時期が、否定説では現実の引渡しがなされたとき、折衷説では占有改定時という違いがある。

・指図による占有移転

 肯定説が有力。所持こそ動かないが、原所有者の信頼は形の上でも裏切られていること、受託者が現に所持しておらず第三者たる所持人に対する命令を必要とするこおt、などがその理由である。しかし、原所有者の信頼が形の上で裏切られていない場合もあるし、上記の命令は原所有者にとって認識可能性は小さい。

 → ①原所有者Xからの占有受託者Aが、Bに占有を委託してYに指図による占有移転で譲渡した場合と、②原所有者Xからの占有受託者AがBに占有改定による譲渡をし、Bが更にYに譲渡し、Aに指図することによってYに占有移転する場合、とがある。

 → ①ではAは占有を失い、Aを媒介とするXの占有も完全に切断されるから即時取得を認め、②ではBとYが後退するだけだから占有改定による場合と同様に扱うこととされる。判例も②のケースにおいては即時取得を否定している。

 

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2016本試験応援ツアー

2016-05-07 00:29:48 | 司法試験関連

本試験本番間近ということは。今年も応援ツアーの季節ですね。ということで。

11日 東京 12日 大阪会場 14日 東京 15日 東京

という感じで、昨年に続き、今年も大阪会場にも顔を出しに行きます。

9日は日帰り関西、11日12日関西。何この効率の悪さwww

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