黒猫 とのべい の冒険

身近な出来事や感じたことを登載してみました。

多生の縁

2014年01月20日 14時09分44秒 | ファンタジー
<はなのお姉ちゃんたち 「どん」(手前)と「ひめ」>
 リルケの無数の生という言葉が載っている「巴里の手紙」は、市販の文庫本などには見当たらない。目録にある全集や選集はことごとく絶版になっていて探しようがない。図書館の蔵書を検索してもピタッとヒットしない。探しに行ってみようにも暇がない。時間と視力と根気があれば、好奇心のおもむくまま、ずいぶんと楽しい生活ができそうだと想像して毎日を送っているが、当分そうはならないだろう。
 それはそれとして、彼の本は、いまどきの人々にとって、あまり読む気がそそられない類に入っているのだろうか。それとも電子書籍の登場で、紙の本は売れ筋から外れたとたん、裁断される憂き目に遭うのか。やはりこれからは営利を目的としない、儲からなくても続けられる個人出版社の役割がますます大きくなっていくだろう。出版したい方はユメミテ書房へどうぞ。ただし実費・実働負担です。
 ところで、私には、リルケが「無数の生がある」と言った意識の置きどころに関して、一片たりとも知見を持っていない。私の頭になんの脈絡もなく浮かんだのは、いわゆる「多生の縁」という仏教的イメージだ。それは、自身の命に刻まれた多くの生の痕跡へのこだわりといったもの。
「子どもの時代を持つということは、ひとつの生を生きる前に」という彼の前置きに気がついたのはその後だ。考えてみると、子どもたちには、大人の理解を超えた多くの可能性が備わっているという捉え方も、私にとってひじょうに示唆的なものだ。すぐ、納得いってなかった「憂鬱な子どもたち」の最終章の文言、それは塾教師の言い残した言葉なのだが、それを書き換えようと思った。「君たちには限りのない自由と多くの生が備わっているのだ」と。(2014.1.20)
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