毎日の生活の中で、笑ったり怒ったり転げたりした内容をこまめに書きとめていたなら、おもしろいブログ記事が書けると思うのだが、そのような几帳面さを持ち合わせないうえに、記憶力がきわめて薄弱な私は、心にしっかり残りそうなくらい印象的な出来事さえ、いつの間にかきれいさっぱり忘れてしまう。
なので、五月はじめの連休中に起きたこの一件を、二週間も経った今、突然思い出して書こうとしたら、どんな風になるか。なかなか蘇らない記憶の弱さにイライラするのは仕方がないが、細部まで覚えていないことを隠蔽するかのように、こんなにくどくどしい話に仕立て上げてしまう。こんなことに精力を使うから、本論がどこかにすり抜けていきそうになる。だが、もう少し記憶が薄れれば、そんな心配はなくなるだろう。楽になるのはそんなに先のことではない。
本論とはこういったことなのだ。
連休の真っただ中、遠くから遊びに来た旧知の初老の男性は、私を一目見るなり、「あっ!髪の毛…」とのたまわっておきながら、その後、ピタッと口をつぐんでしまった。口に出したのが失敗だったと言わんばかりの態度と受け取られて当然なのに、自らフォローしようという配慮がぜんぜんない。
間を持てあました私は、この数年間のストレスが全部髪の毛に襲いかかってきた結果だよ、などと仕方なく周囲の笑いを取るはめに追い込まれるのだ。血液型がB型の私は、気分転換が他人より何倍か早いので、周囲の人々の心の動きに無頓着な振りをして別の話題に移るような芸当をやってのけられないことはない。
しかし、決して髪の毛の恨みを忘れたわけではないのだ。たとえいったん忘れても、何度だって思い出すぞ。(2016.5.17)