せっかく見つけた黒毛玉なのに、はながドリブルして遊んでいるうちにどこかに置き忘れてきた。私も、はなの後ろにくっついて、ネコ目線で家中はいずりまわったが出てこない。はなは、「ぜんぜん知りません」といった顔でしらばっくれている。次の日には「ほれ父しゃん」とくわえてくるはずと思い、探索するのをやめた。
ところが、予想に反し、数日経っても毛玉は依然行方知れず。はなは、もうその存在を忘れたかのように、一言も発しない。
数日後、居間の隅の暖房パネルの下を何気なく見ると、あるではないか黒玉が。ネコなら、必ず探し出せるような場所だった。はなに見せると、「えっ、あったの!」とほんとうに黒玉のありかを知らなかったという様子で飛びついてきた。はなは、とのに比べ、ほんとに忘れっぽい。
とのだったら、何日過ぎても物をなくした場所をのぞき込んでいたものだ、たとえ、それが生きている虫であっても。そこんとこだけ、とのは、父しゃん似じゃなかった。(2018.1.4)