
久方ぶりに東京へ。「エルミタージュ展」、「雪村(せっそん)展」と神田神保町書店・書肆街の3ヶ所の周辺を2泊3日にわたり歩き続けた。東京行きの数日前までは体調が今ひとつ。前々日には、突然の長距離1泊出張が入り、東京までたどり着けるか不安があったのだが、口にすると行くなと言われるので誰にも言えなかった。しかし、摂氏30度もの熱風の中に降り立ったとたん、実に快適な気分。浮き世の憂さなんてすっかり吹き飛び、胸苦しさはどこへやら。
エルミタージュから来た17cから18cに製作された重厚な絵画、なかでもふくよかな女性に目を奪われた。翌日、最終日を迎えた雪村展の会場前には長い列ができていた。16cの霞がかかったような暗い会場内に入ると、何だか厳かな雰囲気に気おされて、背筋がピンと伸びる感じ。決して年齢のいった観客の背や腰の状態を気にしたのではない。
雪村は奇想の画家と評されるだけあって、動植物や自画像などに普通でない表現力を感じた。竜虎図の竜の頭は、その体から解放されて宙を飛んでいた。顔にいたっては、そうとう年季が入った老爺のように干からびていて怖くない。
神保町には2日間も通って、手作り本の材料や道具を仕入れたほか、学生みたいに時間を忘れて店内を探索した。どの店も古紙やシミの同じ臭いが漂う。昔暮らした本屋にも入ってみた。店の作りはほぼそのころのまま。当時の父親にそっくりな顔がぬっと店から出てきた。驚いたことに、店員さんの顔は、いっしょに働いていた同年配の人にそっくりだった。彼の実家は確か地方の書店のはずで、神保町で修行して実家を継いだとばかり思っていた。翌日も2度3度、店の前を行きつ戻りつしたが、ついに声をかけられなかった。しかし、夜になれば友人たちとグチや本音を語り合い(一方的?)、調子に乗って二晩とも痛飲。
体にいいわけはなかった。帰宅してから二晩続けて、生々しい出来事が夢の中で起きた。1晩目は、歯医者に無理やりドリルで歯をほじくられた。2晩目、憲法を書き換えたいとダダこねる、どこかの国の大臣の後ろに背後霊が出た。あー気持ち悪い。3日目の朝になり、例の胸苦しさが再来。日常に戻ってみると、テレビの中の要人たちの顔がやけに生気なく歪んで見える。まさか雪村の絵を見た後遺症ではないと思うが。(2017.5.25)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます