新・徒然煙草の咄嗟日記

つれづれなるまゝに日くらしPCにむかひて心に移りゆくよしなし事をそこはかとなく紫煙に託せばあやしうこそものぐるほしけれ

ギッター先生、凄い! (後編)

2011-01-27 07:27:23 | 美術館・博物館・アート

1月22日の記事「ギッター先生、凄い! (前編)」の後編です。

110127_1_1 23日まで千葉市美術館で開催されていた「開館15周年記念 帰ってきた江戸絵画 ニューオーリンズ ギッター・コレクション展」は、いつもの「もらって帰れるものなら、どれにしようか」の妄想を始めたら、あれもこれもとキリのない、なんともため息しか出ないような楽しい展覧会でした。
そんなお気に入り満載の作品の中から、順不同で特に気に入った作品について書き残しておきたいと思います。

ちなみに入場券は伊藤若冲の「白象図」の図柄です。   

まず最初にご紹介するのは、「順不同で」と書きながら、一番気に入った酒井抱一の「朝陽に四季草花図」(1821-28年)です。

110127_1_2

実家に持って帰っても、この3幅が実家の床の間に収まるのか怪しいところがあるわけですが、所詮、私の妄想ですから、どうでもいいことです。
この作品は、本拠地であるギッター・イエレン芸術研究センター(HPでは日本語も使われています)では、こんな風に展示されているそうです。

110127_1_3

いいですなぁ~

抱一の門人の鈴木其一(すずき・きいつ)の作品もなかなかでした。

   

次にご紹介するのは神坂雪佳の「秋草花図」(大正後期)。

110127_1_4 雪佳といえば、このブログでは2009年2月14日の記事「便利堂のこと 他」と今年1月10日の記事「千葉市美術館でつながる、つながる…」でも登場しました。

その「つながる」元になった「輪舞図」も生で拝見することができましたぁ~(約77cm×230cmと意外に小さかった
説明プレートによりますと、

類例として『元禄舞図』と紹介される中屏風一双(株式会社千總蔵)がよく知られており、本図はその右双が反転された構図である。

だそうです。
道理で…って感じですな。

話を「秋草花図」に戻しますと、あまりに気に入ってしまったもので、額絵を買ってきました。
秋草花図」の額絵をどうしようか、今、思案中です。

   

この「開館15周年記念 帰ってきた江戸絵画 ニューオーリンズ ギッター・コレクション展」、会場に入ると真正面に入場券にも使われている「白象図」が展示されていて、そこから若冲作品の連発(すべて水墨画)
そんな中で気になったのは、廬秀衍鐘(ろしゅう・えんしょう)の賛の入った「寒山拾得図」でした。

110127_1_5

とりわけ注目してしまったのは、右幅の右下110127_1_6 なんとなく楽譜に見えませんか?
だからどうした?」と問われても、回答を持ち合わせているわけではありませんが…
まぁ、こんな楽しみ方もあるのではないかということで、お納めいただければと存じます

   

次は江戸中期の巨匠・円山応挙の「達磨図」(18世紀後半)。

110127_1_7 この展覧会では、この他にも、若冲の「達磨図」(フライヤーに使われていた)と白陰慧鶴の「達磨図」が展示されていました。
この2点と比べると、応挙の作品はさすがに「写生派の祖」といわれる応挙だけあって、ひときわ実在感が光ります
ちょいと人相が悪すぎる気がしないでもありませんけれど…ネ

   

最後の作品は、ぐっと時代を下って大正時代のこちら

110127_1_8

中原南天棒(なかはら・なんてんぼう)の「托鉢僧行列図」です。
托鉢にいってきまぁ~す」(右幅)と「ただいまぁ~」(左幅)の図で、なんともかわらしい

   

これらのコレクションは、アメリカ空軍の軍医として九州に赴任した際に日本美術にハマってしまった眼科医・ギッターさん「1点1点をよく吟味して、自分のお眼鏡に適うものだけに身銭を切って手元に引き寄せ、自宅で愛玩してきた」(千葉市美術館のニューズレターでの小林忠館長の記述より)ものだそうです。

ギッターさん夫妻がこれらのコレクションと一緒に暮らすニューオーリンズは、2005年8月末に超大型ハリケーンのカトリーナに襲われました。

もう一度小林館長の文を引用します。

深刻な状況になることを予報で知らされたギッター一家は、ニューヨークの別宅に避難して無事でしたが、愛する美術品を遠方に地に移動させるだけの余裕はありませんでした。別棟に設けられた美術品収納場所の、できるだけ高い位置に置き換えるなど最低限の手当をするのが精一杯だったそうです。お陰で浸水の水位もあと僅かのところで引いてくれたとのことですが、ハリケーンが去った後も長い間停電が続き、空調も止まったままであったために、高温と多湿に脆弱な日本絵画作品は一時深刻な状態に陥ったのでした。その被害を回復するため、懇意の修復家をニューヨークのメトロポリタン美術館から派遣してもらい、ようやく難を避けることができたのでした。

だそうです。ちなみに奥様がコレクションされていたアフリカ系アメリカ人作家によるナイーブアートは、その大半が失われてしまったのだとか…

そんな危機をくぐり抜けて、日本に里帰りした作品たちに出会えた素晴らしいいっときでした。

千葉市美術館での開催は終わってしまいましたが、以下の巡回展が予定されています。

静岡県立美術館 2月5日~3月27日
福島県立美術館 6月11日~7月24日
京都文化博物館 9月3日~10月16日

お近くにお住まいの方、旅行を計画されている方はぜひお出かけくださいませ お薦めデス

コメント
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